特養やグループホームなど、利用者が暮らしている施設では、年末年始も夜勤を含めてシフトが組まれます。気になるのは「お正月に働いたら、給料は上乗せされるのか」ではないでしょうか。結論からいうと、年末年始や元日であること自体を理由に割増賃金を払う義務は、法律にはありません。上乗せがあるかどうかは、その日が就業規則でどの扱いの日か(法定休日・それ以外の休日・出勤日)と、職場が独自に年末年始手当を設けているかで決まります。
この記事の要点は次の3つです。
- 年末年始手当は法律で決まった手当ではありません:出るかどうか、いくらかは、職場の就業規則・賃金規程で決まります
- 法定休日に働いた分は、35%以上の割増が法律上の義務です:祝日や年末年始という理由ではなく、「法定休日に当たるか」で決まります
- 応募前に確かめるのは3点:年末年始の勤務の決め方、年末年始手当の有無と金額、休日労働の割増の扱いです
年末年始の勤務は、職場を移ったばかりの方や、初めて入所施設で働く方ほど様子が分かりにくい部分です。12月のシフトが出る前に仕組みを知っておくと、給与明細の金額を自分で確かめられます。
介護職は年末年始も出勤するのが普通?
入所施設では、年末年始も毎日の人員配置を満たす必要があるため、交代で出勤するのが一般的です。休みになるかどうかは、事業所の種類と就業規則によって違います。
特養やグループホームには、夜間に配置しなければならない介護職員の人数が国の基準で決まっています。この基準は曜日や祝日に関係なく毎日かかるため、年末年始も誰かが出勤する前提でシフトが組まれます。夜勤の配置基準の中身は介護施設の夜勤は何人体制かで整理しています。
一方、通所介護(デイサービス)や訪問介護では、年末年始に営業するかどうか、どの利用者のサービスを続けるかを事業所ごとに決めています。同じ「介護職」でも、年末年始に休みやすいかは、働く事業所の種類で大きく変わります。
労働基準法も、祝日や年末年始を休日にすることまでは求めていません。厚生労働省のモデル就業規則(令和7年12月版)の解説では、労働基準法は「何曜日を休日とするかあるいは国民の祝日を休日とするか」について規定しておらず、勤務の実態に合わせて労働者ごとに異なる日に交替で休日を与えることもできる、とされています。求められているのは、毎週少なくとも1回、または4週間を通じて4日以上の休日を与えることです(労働基準法第35条)。
年末年始手当は必ずもらえる?
年末年始手当は、法律で支払いが義務づけられた手当ではありません。出るかどうか、金額や対象日は、職場の就業規則・賃金規程で決まります。
労働基準法が定める割増賃金は、時間外労働・法定休日の労働・深夜労働の3つです。「12月31日」「1月1日」のような特定の日付に上乗せを払うルールはありません。年末年始手当は、出勤する職員の負担を考えて職場が独自に設けるものです。
そのため、職場によって形がかなり違います。対象日が12月31日から1月3日までの職場もあれば、元日だけの職場もあります。1日あたりの定額で払う職場、1回の勤務ごとに払う職場、手当がない職場もあります。公的な統計で「介護職の年末年始手当の相場」をまとめたものは見当たらないため、金額は職場ごとに確かめるしかありません。
ただし、手当を設けている職場は、その計算方法を就業規則に書いておく必要があります。常時10人以上の労働者がいる職場は、賃金の決定・計算・支払の方法を就業規則に記載し、労働基準監督署に届け出ることになっています(労働基準法第89条)。入職後に手当の条件を確かめたいときは、就業規則や賃金規程を見せてもらえるかを担当者に尋ねてみてください。
元日に働いたら、休日割増の35%は付く?
付くのは、元日がその人の「法定休日」に当たる場合です。元日がシフト上の出勤日なら、元日だからという理由で35%の割増は付きません。
休日の割増率は、政令で3割5分(35%)以上と決められています(労働基準法第37条、割増賃金令)。対象は「法定休日」、つまり労働基準法第35条で与えなければならない週1回(または4週4日)の休日に働いた場合です。
介護施設のようなシフト制の職場では、休日が人によって違う日に割り振られます。その人にとって元日が出勤日として組まれていれば、通常の勤務と同じ扱いです。元日が休日の予定だったのに出勤を頼まれた場合は、その日が法定休日か、それ以外の休日(所定休日)かで扱いが分かれます。
整理すると、次のとおりです。
| 出勤した日の扱い | 法律上の割増 | 年末年始手当 |
|---|---|---|
| シフト上の出勤日 | なし(深夜・時間外があればその分の割増) | 職場の規程しだい |
| 法定休日(週1回・4週4日の休日) | 35%以上の休日割増 | 職場の規程しだい |
| 法定休日以外の休日(所定休日) | 休日割増の義務はない。法定労働時間を超えた分は25%以上の時間外割増 | 職場の規程しだい |
モデル就業規則の解説でも、法定休日に労働させた場合は3割5分以上、法定外の休日の労働のうち時間外労働に当たる時間は時間外労働として扱うことが示されています。法定労働時間は原則1日8時間・週40時間ですが、シフト制の職場で使われる1か月単位の変形労働時間制では、シフトで決めた時間を基準に時間外を数えます(労働基準法第32条の2)。どの休日を法定休日とするかも就業規則で決めることが多いため、気になる方は自分の職場の規定を確認してください。
大みそかの夜勤は、どう計算される?
夜勤の午後10時から午前5時までは、どの日でも25%以上の深夜割増が付きます。法定休日の労働が深夜に及んだ場合は、合わせて60%以上です。
深夜(午後10時から午前5時)の労働には25%以上の割増が必要で、これは年末年始に限らずいつでも同じです。モデル就業規則の解説では、休日労働が深夜に及んだ場合は6割以上、時間外労働が深夜に及んだ場合は5割以上の割増率になると説明されています。
大みそかの夕方に入って元日の朝に終わる夜勤では、元日の午前0時以降が「元日の勤務」になります。休日は原則として午前0時から午後12時までの暦日で与えるものとされているためです(モデル就業規則の解説)。ただし、規則的な交替制の職場では、要件を満たせば継続24時間を休日とする扱いも認められています(昭和63年3月14日付け基発150号)。夜勤明けの日が「休み」に数えられるのかは職場の運用で違うため、シフト表の休日の数え方を確認しておくと安心です。夜勤手当そのものの考え方は介護の夜勤手当はいくら?で解説しています。
年末年始に休みたいときは、どうすればいい?
年末年始は希望が集中するため、職場ごとの希望休のルールと、有給休暇を使うときの扱いを早めに確認しておくのが現実的です。
年次有給休暇は、労働者が請求した時季に与えるのが原則です。ただし、請求された時季に与えると「事業の正常な運営を妨げる場合」には、使用者は他の時季に変更できます(労働基準法第39条第5項)。人員配置の基準がある介護施設では、年末年始に休みの希望が重なると、全員の希望どおりにはいかないことがあります。
職場によっては、年末年始の出勤を交代制にしている、出勤した人に翌月以降の休みを優先的に割り当てる、といった運用をしています。希望休の出し方の確かめ方は介護職のシフト希望の確認ポイント、有給休暇の基本は介護職の有給休暇の確認ポイントで整理しています。
休日の振り替えと代休の違いも、年末年始に関係します。前もって休日と出勤日を入れ替える「振替休日」なら、元の休日に働いても休日労働にはなりません。休日に出勤した後で別の日に休む「代休」では、休日労働をした事実は消えないため、法定休日に働いた分の割増賃金は支払う必要があります(モデル就業規則の解説)。
求人票と面接では、どこを確かめればいい?
求人票の休日欄と手当欄を見て、書かれていないことは面接で聞きます。年末年始の扱いは求人票に細かく書かれないことが多いためです。
募集をする事業者は、賃金や労働時間などの労働条件を明示しなければなりません(職業安定法第5条の3)。ただ、年末年始の勤務の決め方まで書いてある求人票は多くありません。次の順に確かめると、入職後の「思っていたのと違う」を減らせます。
求人票で見ること:
- 休日欄に「年末年始休暇」と書かれているか、シフト制の中で交代で休む形か
- 年間休日数に年末年始の休みが含まれているか
- 手当欄に「年末年始手当」「特別勤務手当」などの記載があるか
面接・見学で聞くこと:
- 年末年始のシフトは、どのように割り振っていますか
- 年末年始に出勤した場合の手当はありますか。対象日と金額を教えてください
- 法定休日は何曜日(またはどのように)決まっていますか
- 年末年始に出勤した人の休みは、後でどう取れますか
年間休日の数え方は土日休みの介護職求人の探し方、割増賃金や固定残業代の確認は介護職の残業代と固定残業の確認ポイントで詳しく扱っています。手当の全体像は介護職の手当と福利厚生の一覧にまとめています。
よくある疑問
Q. パートやアルバイトでも、法定休日に働けば35%の割増は付きますか? 付きます。割増賃金のルールは雇用形態に関係なく適用されます。年末年始手当がパートにも出るかは、職場の規程によります。
Q. 年末年始手当は、残業代の計算の基礎に入りますか? 割増賃金の計算の基礎から除いてよい賃金は、家族手当や通勤手当などに限られています(労働基準法第37条第5項)。年末年始手当をどう扱っているかは、職場の賃金規程で確認してください。
Q. 年末年始に休みたい場合、面接で伝えてもいいですか? 伝えてかまいません。入職後のシフトに関わるため、毎年なのか今年だけなのかも含めて具体的に伝えると、職場も対応を判断しやすくなります。
まとめ:上乗せの有無は「その日の扱い」と「職場の規程」で決まる
年末年始の給料を確かめるときのポイントは、次の3つです。
- 年末年始であること自体に、法律上の割増はない。年末年始手当は職場の規程で決まる
- 法定休日に働けば35%以上、深夜に及べば合わせて60%以上の割増が必要
- 求人票の休日欄と手当欄を見て、年末年始のシフトの決め方と手当は面接で聞く
12月のシフトが出たら、出勤する日が法定休日に当たるかを一度確かめてみてください。年末年始の扱いも含めて条件を比べたいときは、介護おしごとさーちの検索ページで勤務地や働き方から求人を絞り込めます。当サイトは求人情報の掲載と検索の場で、特定の求人をおすすめする個別のあっせんは行っていません。手当や割増の扱いが就業規則と違うと感じたときは、職場の担当者に確認したうえで、お近くの労働基準監督署や総合労働相談コーナーに相談できます。
参考にした一次情報
- 労働基準法第32条の2(1か月単位の変形労働時間制)・第35条(休日)・第37条第1項・第4項・第5項(時間外・休日・深夜の割増賃金と、計算の基礎から除く賃金)・第39条第5項(年次有給休暇の時季変更)・第89条(就業規則の作成及び届出):e-Gov法令検索
- 労働基準法第三十七条第一項の時間外及び休日の割増賃金に係る率の最低限度を定める政令(平成6年政令第5号):時間外2割5分、休日3割5分
- 厚生労働省労働基準局監督課「モデル就業規則」(令和7年12月版):第20条(休日)の解説(祝日を休日とするかの規定がないこと、暦日の休日、交替制の例外、振替休日と代休の違い)、第40条(割増賃金)の解説
- 職業安定法第5条の3(労働条件等の明示):e-Gov法令検索
