年の途中で介護の職場を移った場合、その年の所得税は、12月末に勤めている新しい職場の年末調整で、前の職場の給与も合わせて精算します。そのために必要なのが、前の職場から受け取る「源泉徴収票」です。年内に再就職しなかった方は年末調整を受けられないため、翌年に自分で還付申告(確定申告)をすると、納めすぎた所得税が戻ることがあります。
この記事の要点は次の3つです。
- 年内に次の職場へ入る人:前の職場の源泉徴収票を新しい職場に出せば、新しい職場の年末調整で1年分がまとめて精算されます。出せないときは、自分で確定申告をして精算します
- 年内に再就職しない人:原則として年末調整の対象外です。還付申告は翌年1月1日から5年間提出できます
- 2026年(令和8年分)の注意点:基礎控除などの引き上げは12月の年末調整で反映されます。年の途中で退職して年末調整を受けていない方は、確定申告をすることで引き上げ後の控除が適用されます
介護の仕事は、夏や冬の賞与の後、年度の区切りなど、年の途中で職場を移る方が少なくありません。秋から冬にかけて入職すると、新しい職場の年末調整の書類と、前の職場の書類を短い期間でそろえることになります。何を・いつまでに・どこへ出すかを先に知っておくと、12月の給与明細で所得税の精算額が普段と違っていても理由が分かります。
年の途中で転職したら、年末調整は新旧どちらの職場で受ける?
12月末に勤めている新しい職場で受けます。前の職場で受け取った給与と、そこで天引きされた所得税も合わせて、1年分を精算する仕組みです。
国税庁のタックスアンサー(No.2665)では、12月に行う年末調整の対象として「1年を通じて勤務している人」に加えて、「年の中途で就職し年末まで勤務している人」が挙げられています。対象になるのは、その職場に「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を出している人です。入職の手続きで書くこの申告書は、主な勤め先1か所にしか出せません(所得税法第194条)。
さらにタックスアンサー(No.2674)では、年の途中で就職した人について、就職前に「扶養控除等申告書」を出して受け取った前の職場の給与があれば、それも含めて年末調整を行う必要があるとされています。前の職場の給与額と、そこで天引きされた所得税・社会保険料は、前の職場が発行する「給与所得の源泉徴収票」で確認されます。
前の職場での給与には、基本給だけでなく夜勤手当・処遇改善手当・資格手当、在職中に受け取った賞与や処遇改善の一時金も含まれます。月々の天引きの見方は介護職の給与明細で見るポイントで整理しています。
前の職場の源泉徴収票は、いつ・どうやって受け取る?
退職した職場は、退職の日から1か月以内に源泉徴収票を交付することが法律で決まっています。届かないときは、まず前の職場に請求します。
所得税法第226条第1項では、給与の支払者は源泉徴収票を作成し、年の途中で退職した人には「その退職の日以後一月以内」に交付しなければならないと定めています。郵送で届くことが多いため、退職の手続きのときに送付先の住所と、届く時期の目安を確認しておくと受け取り漏れを防げます。
入職先の手続きでも、前職の源泉徴収票の提出を求められることがよくあります。入職初日に求められやすい書類は介護職の入職初日に準備することにまとめています。退職後1か月を過ぎても届かず、前の職場に頼んでも交付されない場合は、税務署に「源泉徴収票不交付の届出書」を出す手続きがあります(国税庁「源泉徴収票不交付の届出手続」)。届出には、前の職場に交付を求めたことが分かる書類などを添えます。
受け取ったら、次の3点を確認しておきます。
- 「支払金額」に、退職した月までの給与と賞与が入っているか
- 「源泉徴収税額」の欄に金額が入っているか(0円なら、所得税は天引きされていない)
- 氏名・住所に誤りがないか
源泉徴収票を新しい職場に出せなかったら、どうなる?
新しい職場では前職分を含めた年末調整ができないため、翌年に自分で確定申告をして1年分を精算します。
タックスアンサー(No.2674)は、前の職場の給与額などを源泉徴収票で確認できないときは年末調整を行うことができず、本人が確定申告で精算することになると説明しています。この場合、新しい職場の年末調整は行われないか、行われても前職分が入らない形になるため、手元に届いた両方の源泉徴収票を使って確定申告をします。
源泉徴収票が12月の年末調整の書類の締め切りに間に合いそうにないときは、新しい職場の担当者に早めに伝え、どう扱うかを相談しておくと安心です。後から届いた場合にどうするかは職場の事務の進め方によって違うため、自分で申告することになるのかを確認しておきます。
年内に再就職しなかった場合は、どうすればいい?
年の途中で退職して年内は働かなかった方は、原則として年末調整を受けません。翌年1月1日から5年間、還付申告を出すことができます。
タックスアンサー(No.2665)によると、年の途中の退職で年末調整の対象になるのは、次の5つのいずれかに当てはまる人に限られます。
- 海外の支店などへの転勤で非居住者になった人
- 死亡によって退職した人
- 著しい心身の障害のために退職した人(退職後に再就職して給与を受け取る見込みのある人は除く)
- 12月に支給される給与を受け取った後に退職した人
- パートなどで退職し、その年の給与の総額が136万円以下の人(退職後、その年に他の勤め先から給与を受け取る見込みのある人は除く)
これ以外の方は、毎月の給与から天引きされた所得税が、1年分として計算した税額より多くなっていることがあります。タックスアンサー(No.2030)では、年の途中で退職して年末調整を受けず、源泉徴収税額が納めすぎになっている場合を還付申告の具体例に挙げ、還付申告書は翌年1月1日から5年間提出できるとしています。2026年に退職した方なら、2027年1月1日から手続きができます。ただし、源泉徴収票の「源泉徴収税額」欄が0円の方は、申告しても戻る所得税はありません。
退職後に受け取った雇用保険の失業給付(基本手当)は、雇用保険法第12条で税金をかけてはいけないものと定められているため、所得税の申告で収入に含める必要はありません。退職後の基本手当がいつから出るかは介護職を辞めたら失業保険はいつから?で整理しています。
2026年は年末調整で何が変わる?途中で辞めた人への影響は
令和8年分は基礎控除と給与所得控除の最低保障額が引き上げられ、12月の年末調整でまとめて反映されます。年末調整を受けずに退職した方は、確定申告をすることで引き上げ後の控除を受けられます。
国税庁の「令和8年度税制改正(所得税の基礎控除の引上げ等関係)Q&A」(令和8年5月)によると、令和8年11月までの給与から天引きされる所得税は従来の税額表のまま計算され、12月に行う年末調整で、引き上げ後の基礎控除などを使って1年分の税額を計算し直し、精算します。引き上げの金額と、パートで働く方の年収のラインへの影響は介護パートの「年収の壁」は2026年にどう変わる?で詳しく取り上げています。
同じQ&Aは、年の途中で退職して年末調整を受けていない方について、改正後の控除の適用を受けるには確定申告が必要としています。休業や休職で年末までに復職していない方のうち、11月30日以前に最後の給与を受け取り、そのときに年末調整を受けた方も、確定申告をすることで改正後の控除が適用されます。
このため、2026年の途中で介護の職場を辞め、年内は働かない予定の方は、退職時に受け取った源泉徴収票を保管しておき、2027年になってから還付申告ができるかを確認しておくと手続きが進めやすくなります。年内に新しい職場へ入った方は、新しい職場の12月の年末調整で反映されるため、自分で申告する必要はありません(前職の源泉徴収票を提出している場合)。
退職金や掛け持ちの給与がある場合は?
退職金は給与とは別の「退職所得」として扱われ、申告書を出していれば原則として確定申告は不要です。掛け持ちで2か所以上から給与を受けている方は、確定申告が必要になる場合があります。
タックスアンサー(No.1420)によると、退職金を受け取るときに「退職所得の受給に関する申告書」を出している方は、退職金から所得税が源泉徴収され、原則として確定申告は必要ありません。この申告書を出していない場合は、支払額の20.42%が源泉徴収され、本人が確定申告で精算します。退職時に申告書の記入を求められたら、出しておくと手続きが少なくなります。
夜勤のアルバイトや派遣などで、年内に2か所以上から給与を受け取っている方は、扶養控除等申告書を出していない勤め先の給与が、主な職場の年末調整には入りません。この場合の流れは介護職の掛け持ち・複業の条件と注意点で整理しています。
転職の前後で確認しておきたいことは?
退職時には源泉徴収票の届く時期を、入職時には年末調整の書類の締め切りを確認しておくと、書類の出し遅れを防げます。
退職するときに確認すること:
- 源泉徴収票の送付先の住所と、届く時期の目安
- 退職金がある場合は、「退職所得の受給に関する申告書」の提出の有無
- 最後の給与と賞与が支払われる月
入職するときに確認すること:
- 前職の源泉徴収票を提出する期限
- 年末調整の書類(扶養控除等申告書・基礎控除申告書など)を配る時期と締め切り
- 前職の源泉徴収票が間に合わない場合の扱い
年内に再就職しないとき:
- 源泉徴収票を、翌年の還付申告まで保管する
- 「源泉徴収税額」欄に金額があれば、翌年1月1日以降に還付申告ができるかを確かめる
入職を承諾する前の確認事項は介護職の内定後に確認することでも整理しています。
よくある疑問
Q. 12月中旬に新しい職場へ入りました。前の職場の分も年末調整してもらえますか? 年末まで勤め、扶養控除等申告書を出していれば、新しい職場の年末調整の対象になります。前の職場の源泉徴収票を年末調整までに提出できれば、前職分も含めて精算されます。間に合わない場合は、確定申告で精算することになるため、早めに新しい職場の担当者へ相談してください。
Q. 前の職場から源泉徴収票が届きません。どうすればいいですか? 退職後1か月が交付の期限です。まず前の職場に交付を求めます。それでも交付されない場合は、税務署に「源泉徴収票不交付の届出書」を出す手続きがあります。
Q. 失業給付を受け取った年は、その金額も申告する必要がありますか? 雇用保険の失業給付には税金がかからないため、所得税の申告で収入に含める必要はありません。
Q. 還付申告は、翌年の2月16日から3月15日の間にしかできませんか? 還付申告は確定申告期間とは関係なく、翌年1月1日から5年間提出できます。
まとめ:12月末にどこで働いているかで、手続きの場所が決まる
手続きの場所を分けるポイントは、次の3つです。
- 年内に次の職場へ入り年末まで勤めるなら、前の職場の源泉徴収票を新しい職場に出し、年末調整で1年分をまとめて精算する
- 年内に再就職しないなら原則として年末調整は受けず、翌年1月1日から5年間、還付申告ができる
- 令和8年分の控除の引き上げは12月の年末調整で反映され、年末調整を受けずに退職した人は確定申告で適用を受ける
転職を考え始めたら、今の職場の給与明細で、毎月どれだけ所得税が引かれているかを一度見てみてください。条件に合う求人は介護おしごとさーちの検索ページで勤務地や雇用形態から絞り込んで比べられます。当サイトは求人情報の掲載と検索の場で、特定の求人をおすすめする個別のあっせんは行っていません。個別の税額や申告の要否は、お住まいの地域を管轄する税務署や、国税庁の電話相談センターで確認してください。
参考にした一次情報
- 国税庁 タックスアンサー No.2665「年末調整の対象となる人」(令和8年4月1日現在法令等):12月の年末調整の対象、年の途中の退職で年末調整の対象となる5つの場合
- 国税庁 タックスアンサー No.2674「中途就職者の年末調整」:前の職場の給与を含めた年末調整、源泉徴収票で確認できない場合の確定申告
- 国税庁 タックスアンサー No.2030「還付申告」:年の途中で退職し年末調整を受けていない場合、翌年1月1日から5年間の提出期限
- 国税庁 タックスアンサー No.1420「退職金を受け取ったとき(退職所得)」:退職所得の受給に関する申告書の有無と確定申告
- 国税庁「源泉徴収票不交付の届出手続」:届出の時期、添付書類、提出先
- 国税庁「令和8年度税制改正(所得税の基礎控除の引上げ等関係)Q&A」(令和8年5月):Q1-3、Q7-1(12月の年末調整での精算、年の途中で退職した人の確定申告)
- 所得税法第194条(給与所得者の扶養控除等申告書)・第226条第1項(源泉徴収票の交付期限)、雇用保険法第12条(公課の禁止):e-Gov法令検索
