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介護職の残業代と固定残業の確認ポイント

作成日
2026年7月7日
最終更新日
2026年7月8日

介護職の残業代の計算ルールと固定残業代(みなし残業)が適法とされる3つの要件を、厚生労働省の一次情報にもとづき解説します。求人票の給与欄で実際に確認すべきポイントも具体的にまとめました。

1残業代はどう計算される?割増賃金の基本ルール

介護の仕事は、夜勤明けの引き継ぎが長引いたり、急な入所者対応が発生したりと、想定より勤務時間が延びる場面が少なくありません。法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えて働かせた場合、事業者は労働基準法第37条にもとづき、通常の賃金に一定の割増率を上乗せした「割増賃金」を支払う義務があります。

厚生労働省の資料によると、時間外労働の割増率は原則25%以上です。さらに、1か月の時間外労働が60時間を超えた部分については、割増率が50%以上に引き上げられます。この60時間超の割増率50%は、以前は大企業のみの適用でしたが、働き方改革関連法の改正により2023年4月1日から中小企業にも適用されています(厚生労働省「月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が引き上げられます」)。なお、深夜(22時〜翌5時)の勤務が重なる場合は深夜割増(25%以上)が加算され、月60時間超の時間外労働が深夜帯にかかると割増率は合計75%以上になります。法定休日(週1日)の労働については割増率35%以上が適用され、時間外労働の60時間カウントには法定休日労働分は含まれません(それ以外の休日労働は含まれます)。

介護施設は夜勤・シフト制が前提のため、こうした割増賃金の計算がやや複雑になりがちです。求人票を見るときは、まず「基本給がいくらで、そこに残業代がどう乗るのか」という土台の考え方を押さえておくことが、後述する固定残業代の仕組みを正しく理解する前提になります。

また、割増賃金は「1時間あたりの賃金」を基礎として計算されます。基礎賃金には基本給のほか、多くの手当が含まれますが、家族手当・通勤手当・住宅手当など一定の手当は原則として基礎賃金から除外されることになっています(労働基準法施行規則で定める範囲に限られます)。求人票の月給に手当がまとめて記載されている場合、その内訳によって実際の残業代の単価が変わってくる点も、あわせて知っておきたい基礎知識です。

2固定残業代(みなし残業)とは何か

求人票の給与欄でよく見かける「固定残業代」「みなし残業代」とは、名称にかかわらず、一定時間分の時間外労働・休日労働・深夜労働に対してあらかじめ定額で支払われる割増賃金のことを指します。厚生労働省の説明でも「固定残業代とは、その名称にかかわらず、一定時間分の時間外労働、休日労働および深夜労働に対して定額で支払われる割増賃金のこと」と定義されています。

固定残業代の制度自体は違法ではありません。ただし、あらかじめ定められた時間分を超えて働いた場合は、その超過分について別途、追加の割増賃金を支払う必要があります。つまり「固定残業代を払っているから、それ以上残業しても追加払いは一切不要」という運用は誤りです。この点を理解しないまま「固定残業代込みの月給」だけを見て応募すると、実際の残業時間と手当のバランスに納得できず、入職後にギャップを感じるケースがあります。

介護現場では、夜勤手当や早出・遅出に伴う時間外労働が発生しやすく、固定残業代を採用している事業者も少なくありません。求人票の給与欄に「基本給+固定残業代(〇時間分)」のような表記がある場合は、その内訳と、超過分の扱いがどう明記されているかを確認することが、次章以降で説明する求人票チェックの出発点になります。

固定残業代は「基本給組み込み型」と「手当型」の大きく2パターンに分かれます。基本給組み込み型は基本給の中に残業代相当分が含まれる形で、手当型は「固定残業手当」「みなし残業手当」など基本給とは別の手当として支給される形です。どちらの形式であっても、前述の3要件(基本給の額・時間数と計算方法・超過分の追加払い)が満たされているかどうかという確認の視点は変わりません。

3固定残業代が適法とされるための3つの要件

固定残業代の仕組みが労働条件として有効に成立するためには、厚生労働省が示す指針にもとづき、募集要項や求人票に次の3点をすべて明示する必要があるとされています。

1点目は「固定残業代を除いた基本給の額」です。基本給と固定残業代が渾然一体となっていると、労働者が自分の本来の基本給がいくらなのか把握できません。2点目は「固定残業代に関する労働時間数と金額等の計算方法」です。たとえば「固定残業手当として時間外労働20時間分・4万円を支給」のように、何時間分に相当する金額なのかが明確である必要があります。3点目は「固定残業時間を超える時間外労働、休日労働および深夜労働に対して割増賃金を追加で支払う旨」です。設定時間を超えて働いた分は、別途、割増賃金を支払う義務があることを明示しなければなりません。

過去の裁判例(最高裁第一小法廷 平成24年3月8日判決、通称テックジャパン事件など)では、基本給の中に通常の賃金部分と時間外割増賃金部分が判別できないケースについて、固定残業代の支払いとして有効に扱えないと判断されています。つまり「基本給に残業代が含まれている」とだけ説明され、内訳や時間数が不明確な場合、法的に有効な固定残業代とは認められないおそれがあります。求人票やその後の労働条件通知書で、この3要件がそれぞれ具体的な数字とともに書かれているかどうかが、固定残業代が適切に運用されているかを見極める最初のポイントです。

また、採用が決まった段階では、事業者は労働基準法にもとづき、賃金の決定・計算・支払方法などを記載した労働条件通知書を交付する義務があります。求人票の段階での記載が簡潔でも、労働条件通知書ではより詳細な内訳が示されるのが通常です。求人票と労働条件通知書の記載内容に食い違いがないかを照らし合わせることも、入職前の重要な確認作業です。

4求人票で確認したい固定残業代の記載パターン

実際に求人票を見るときは、給与欄の書き方にいくつかのパターンがあることを知っておくと確認がスムーズです。厚生労働省が示す記載例では「基本給(××円)(手当を除く額)」「〇〇手当(時間外労働の有無にかかわらず、○時間分の時間外手当として△△円を支給)」「○時間を超える時間外労働分についての割増賃金は追加で支給」のように、基本給・固定残業代・超過分の扱いが3行に分けて明記される形が想定されています。

求人票を確認する際にチェックしたいポイントは次のとおりです。まず、月給の総額だけでなく「そのうち基本給はいくらか」が分けて書かれているか。次に、固定残業代が「何時間分」に相当するのかという時間数が明記されているか(時間数が書かれず金額だけの記載は要確認です)。さらに、その時間を超えた場合に追加で割増賃金が支払われる旨が明記されているか。これらが曖昧な場合、面接や条件確認の場で「固定残業代は何時間分に相当しますか」「超過した場合の取り扱いはどうなりますか」と質問してみることも一つの方法です。

なお、介護職の夜勤がある職場では、固定残業代とは別に「夜勤手当」が設定されていることが一般的です。固定残業代と夜勤手当は性質が異なる手当であるため、求人票の中でそれぞれが何を指しているのかを混同しないよう、項目ごとに切り分けて読むことをおすすめします。

さらに、月給の総額に対して固定残業代の占める割合が極端に大きい場合も、確認しておきたいポイントです。たとえば月給の大部分が固定残業代で構成され、基本給が最低賃金付近に近い水準になっているようなケースでは、基本給をベースに計算される賞与や退職金、将来の昇給の伸びしろにも影響する可能性があります。総額の月給だけでなく、内訳のバランスにも目を向けることが、長く働くうえでの納得感につながります。

536協定と残業時間の上限規制

そもそも事業者が労働者に法定労働時間を超える残業をさせるには、労使間で「時間外労働・休日労働に関する協定」(通称36協定)を締結し、労働基準監督署に届け出る必要があります。36協定を結んでいない、あるいは締結範囲を超える残業は、原則として認められません。

36協定を締結していても、時間外労働には上限があります。厚生労働省の解説によると、原則として月45時間・年360時間が限度とされています。臨時的な特別の事情があり労使が合意した場合(特別条項付き36協定)でも、年720時間以内、休日労働を含んで単月100時間未満、複数月平均で80時間以内という上限を超えることはできません。これらの上限は罰則付きで法律に定められており、超過は労働基準法違反となります。

介護施設では、人手不足や急な欠員によって残業が常態化しやすいという構造的な課題があります。求人票だけでは36協定の内容や実際の残業時間の実態まで読み取ることは難しいため、「残業時間 月平均〇時間」といった記載や、面接時に平均残業時間・繁忙期の残業実態を尋ねることも、入職後のミスマッチを避けるうえで有効な確認方法です。特定の事業者への応募を検討する際は、求人票の給与条件と合わせて、こうした労働時間の実態も併せて確認する視点を持つとよいでしょう。

36協定には、時間外労働の上限のほかに「一部の業務」に対する適用除外や特例が定められている場合もあります。ただし介護職の通常業務がこうした特例の対象になるケースは限定的です。求人票に「残業なし」「残業ほぼなし」と記載されていても、実態としては36協定の範囲内で一定の残業が発生する可能性があるため、断定的な表現をそのまま鵜呑みにせず、実際の勤務実態を確認する姿勢が大切です。

6夜勤・シフト制ならではの残業代の注意点

介護施設の夜勤は、日勤者からの引き継ぎの遅れや、急変対応、記録作成の遅延などにより、所定の勤務時間を超えてしまうことが起こりやすい勤務形態です。夜勤帯(22時〜翌5時)にかかる残業は、時間外割増(25%以上)に加えて深夜割増(25%以上)が重なって適用されるため、通常の日勤帯の残業よりも割増率が高くなります。

また、変形労働時間制(1か月単位や1年単位で労働時間を平均する制度)を採用している介護施設もあります。変形労働時間制のもとでは、「1日8時間を超えたら即座に残業代」という単純な計算にならない場合があり、あらかじめ定められたシフト表上の所定労働時間を基準に時間外労働が判定されます。求人票や労働条件通知書に変形労働時間制の記載がある場合は、どの期間で労働時間を平均しているか、シフトの基準時間がどう設定されているかを確認しておくと、実際の給与や残業代のイメージがつかみやすくなります。

さらに、夜勤専従や早出・遅出を組み合わせるシフトでは、休憩時間の取り方や、記録業務・申し送りにかかる時間が「労働時間」としてカウントされているかどうかも重要な確認点です。休憩時間中に呼び出し対応が発生する、始業前の情報収集が実質的に業務になっている、といった状態が常態化している場合は、その時間も労働時間として扱われるべきものである可能性があります。求人票の記載だけで判断が難しい部分は、面接や条件確認の場で具体的に尋ねる価値があります。

加えて、夜勤専従者や交代制勤務者については、勤務と勤務の間の休息時間(勤務間インターバル)が十分に確保されているかどうかも、実質的な働きやすさに直結する要素です。求人票には残業代の金額だけでなく、夜勤明けの取り扱いや休憩の取り方に関する記載がある場合もあるため、給与条件と合わせて勤務体制全体を確認する視点を持つとよいでしょう。

7固定残業代のよくある誤解と注意したい表記

固定残業代をめぐってよくある誤解の一つが、「固定残業代が含まれているのだから、何時間残業しても給料は変わらない」という理解です。前述のとおり、固定残業代はあくまで「あらかじめ設定した時間数分」の対価であり、それを超えた時間外労働・休日労働・深夜労働については、別途割増賃金を追加で支払う義務があります。この追加払いの取り決めが求人票や労働条件通知書に明記されていない場合、実際の運用と法律上の義務にズレが生じている可能性があるため、要確認と考えたほうがよいでしょう。

また、固定残業代に含まれる時間数が長すぎる設定(たとえば月45時間分やそれ以上)にも注意が必要です。時間数自体の上限を直接定める規定はありませんが、前述の36協定の上限(原則月45時間)に近い、あるいはそれを超えるような時間数が固定残業代として組み込まれている場合、常態的に長時間の時間外労働を前提とした働き方になっている可能性を示唆します。求人票の固定残業時間数は、その職場の残業実態を推し量る一つの手がかりとしても読むことができます。

厚生労働省の資料でも、ハローワークに寄せられる求人条件と実際の労働条件の相違に関する苦情のうち、「賃金に関すること(固定残業代を含む)」が最も多いとされています。この事実からも、固定残業代の内訳は入職前に丁寧に確認しておくべき項目だといえます。なお、本サービスは求人情報の掲載・検索(募集情報等提供)を行うものであり、特定の求職者に特定の求人をあっせん・ご紹介するものではありません。気になる求人が見つかった場合は、記載内容を求人票でご自身で確認し、必要に応じて応募先に直接お問い合わせいただくことをおすすめします。

また「固定残業代を含めた月給〇〇万円」という総額の大きさだけで求人を比較すると、固定残業代の時間数の違いによって実質的な基本給の水準が大きく異なる場合があります。同じ月給30万円でも、固定残業代が10時間分の求人と45時間分の求人とでは、基本給部分の水準はまったく異なります。給与条件を比較する際は、総額表示だけでなく、基本給・固定残業代の時間数・超過分の扱いという内訳まで見比べることが、実態に近い比較につながります。

8求人票の記載に疑問があるときの相談先

求人票の給与欄を読んでも固定残業代の内訳がわからない、あるいは入職後の実態が求人票の記載と大きく異なると感じた場合は、一人で抱え込まず、公的な相談窓口を利用する方法があります。

労働条件や割増賃金の考え方について法令に関する相談をしたい場合は、各地の労働基準監督署に設置されている「労働時間相談・支援コーナー」で、窓口や電話での相談に対応しています。希望があれば個別訪問での相談・支援も行われています。また、労務管理や賃金制度の見直しに関する相談は「働き方改革推進支援センター」で社会保険労務士等の専門家が対応しており、事業者側・労働者側どちらの立場からの相談にも役立つ窓口です。ハローワークでも、求人内容と実際の労働条件が異なるといった相違に関する申出を受け付けています。

入職前の段階では、まず求人票の記載を注意深く読み、基本給・固定残業代の時間数と金額・超過分の追加支払いの有無という3点を確認すること。そのうえで疑問が残る場合は、応募先に直接確認するか、必要に応じて上記の公的窓口に相談することが、納得のいく転職・就職判断につながります。給与条件は入職後の働き方に直結する重要な情報だからこそ、求人票の文字を一つひとつ丁寧に確認する姿勢が大切です。

本サービスは、条件に一致する求人情報を掲載・検索できる場を提供するものであり、個々の利用者に特定の求人をあっせん・紹介するものではありません。給与や残業代の記載内容そのものの適法性・正確性は、最終的には各求人の応募先事業者が責任を負う事項です。気になる点があれば、応募前の質問や、必要に応じた公的窓口への相談を通じて、納得したうえで応募先を選ぶようにしてください。

FAQ

このガイドのよくある質問

A.

固定残業代の制度自体は違法ではなく、多くの事業者で採用されています。重要なのは、基本給と固定残業代が分けて明示され、設定時間を超えた分に追加の割増賃金が支払われる旨が記載されているかどうかです。この3点が求人票で明確になっていれば、制度として適切に運用されている可能性が高いといえます。記載が曖昧な場合は、応募前に内容を確認することをおすすめします。

A.

厚生労働省の指針では、固定残業時間を超える時間外労働・休日労働・深夜労働について、事業者は割増賃金を追加で支払う旨を求人票に明示することとされています。実際に追加払いがなされているかは職場の運用によりますが、法律上は追加払いの義務があります。給与明細や勤怠記録で実際の残業時間と支給額を照らし合わせ、疑問があれば労働基準監督署等の窓口に相談する方法があります。

A.

夜勤帯(22時〜翌5時)にかかる時間外労働は、時間外割増(25%以上)と深夜割増(25%以上)が重なって適用されます。さらに月60時間を超える時間外労働の部分は割増率が50%以上となるため、深夜帯にこの時間がかかると合計75%以上の割増率になります(2026年7月時点、厚生労働省の資料にもとづく)。実際の金額は基礎賃金や職場の規定により異なるため、給与規程や求人票の記載を確認してください。

A.

求人票に残業時間や固定残業代の内訳の記載がない、または曖昧な場合は、その求人が残業代の扱いについて明確な情報を示していない可能性があります。応募を検討する際は、面接や問い合わせの機会に、平均残業時間や固定残業代の有無・内訳について直接確認することをおすすめします。本サービスは求人情報の掲載・検索の場を提供するものであり、個別の求人内容の適法性を保証するものではありません。

A.

法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えて労働者に残業をさせるには、事業者があらかじめ36協定を締結し労働基準監督署に届け出ることが必要です。36協定なしに法定労働時間を超える残業をさせることは、原則として労働基準法違反にあたります。求人票だけで36協定の有無は判断できないため、疑問がある場合は労働基準監督署の相談窓口を利用する方法があります。

Sources

参照・確認する一次情報

制度や費用は変更されることがあるため、公式情報と施設の資料を確認しながら更新します。

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