必ず上がるとは限りません。労働基準法上、昇給の実施自体は事業者に義務づけられたものではなく、制度を設けた場合にその内容を就業規則等に明文化する、という位置づけにとどまります。「昇給あり」という表記は制度の存在を示すにすぎないことが多く、実際にどのくらいの頻度・条件・金額で反映されるのかは、求人票の記載や面接での質問を通じて個別に確認する必要があります。気になる場合は運営元に直接問い合わせることをおすすめします。
介護職の昇給条件の確認ポイント
- 作成日
- 2026年7月7日
- 最終更新日
- 2026年7月8日
介護職の求人で見かける「昇給あり」は、頻度・条件・金額次第で中身が大きく変わります。処遇改善加算の制度上の根拠と、求人票・面接の場で確認すべき具体的なチェック項目をあわせて整理しました。
1「昇給あり」だけでは中身がわからない理由
介護職の求人票には「昇給あり」という記載がよく見られます。しかし、この一言だけでは「毎年必ず上がるのか」「上がるとしたらいくらか」「何を満たせば上がるのか」がまったくわかりません。
「昇給あり」という表記は、勤続年数に応じて自動的に数百円上がる仕組みを指す場合もあれば、人事評価の結果次第で上がったり据え置きになったりする仕組みを指す場合もあります。さらに「昇給あり(実績による)」のように、実施が保証されていない書き方をしている求人もあります。同じ「昇給あり」でも、事業所によって制度の中身はかなり異なるのが実情です。
この背景には、そもそも労働基準法において昇給の実施そのものが事業者の義務ではないという事情があります。就業規則の記載事項を定めた労働基準法第89条では、賃金の決定・計算・支払方法や昇給に関する事項を「定めをした場合には記載しなければならない事項」として扱っています(出典:厚生労働省「確かめよう労働条件」就業規則Q&A/2026年7月時点で内容確認)。つまり、昇給の仕組みを設けるかどうか自体は事業者の裁量であり、「定めた場合はルールを明文化する」という位置づけです。求人票の一文だけで判断せず、その裏にある制度を確認する視点が欠かせません。
次の章からは、介護職の昇給に関わる代表的な制度的背景(処遇改善加算のキャリアパス要件)と、実際の求人票・面接での確認ポイントを順に見ていきます。なお本サービスは求人の掲載・検索の場を提供するものであり、特定の求人へのあっせん・ご紹介を行うものではありません。気になる条件に一致する求人を探す際の参考としてご活用ください。
2介護職員等処遇改善加算と「昇給の仕組み」の関係
介護職の昇給を考えるうえで無視できないのが、介護報酬の「介護職員等処遇改善加算」です。この加算を事業所が取得するための要件の一つに、いわゆる「キャリアパス要件」があり、そのなかに「経験・技能のある介護職員について昇給する仕組みを設けること」という趣旨の要件が含まれています(出典:厚生労働省「介護職員の処遇改善」制度概要ページ/2026年7月時点)。
具体的には、次のいずれかの方法で昇給の仕組みを整備することが求められます。
- 経験に応じた昇給:勤続年数や経験年数に応じて昇給する仕組み
- 資格等に応じた昇給:介護福祉士などの資格取得や研修修了の状況に応じて昇給する仕組み
- 試験・評価に基づく昇給:実技試験や人事評価の結果に基づき、客観的な基準で昇給を判定する仕組み
これらの内容を就業規則等の書面に明文化し、職員に周知することが加算の要件とされています(出典:厚生労働省「介護職員等処遇改善加算に関するQ&A」/2026年7月時点で内容確認)。つまり、処遇改善加算を取得している事業所では、「昇給の仕組みを制度化していること」自体が加算取得の前提になっているわけです。
ここで注意したいのは、加算を取得している=必ず昇給する、という意味ではないという点です。加算要件が求めているのは「昇給の仕組みが存在すること」であり、仕組みの中身(昇給額・昇給の頻度・判定基準の厳しさ)は事業所ごとに差があります。「処遇改善加算対象事業所」という記載だけで安心せず、その仕組みがどう運用されているかを確認する視点が必要です。次章では、求人票に載りやすい情報から、どこまで読み取れるかを見ていきます。
3求人票の「昇給あり」を読み解く:見るべき4つの記載
求人票で昇給の実態に近づくために、次の4つの記載の有無をチェックすると判断材料が増えます。
1. 昇給の頻度 「年1回」「随時」など、昇給を検討するタイミングが明記されているかです。頻度の記載がない場合、実施の有無自体が不透明なことがあります。
2. 昇給の金額目安 「月額1,000円〜3,000円」のように金額レンジが書かれている求人もあります。金額の記載がある求人は、制度が実際に運用されている可能性の裏付けになりやすい情報です。ただし目安であり、確約された金額ではない点には注意が必要です。
3. 昇給の条件 「勤続年数」「資格取得」「人事評価」のうち、何が基準になっているかです。資格取得が条件なら、実務者研修・介護福祉士などの取得計画と合わせて確認する価値があります。人事評価が条件なら、評価基準が明文化されているか(評価シートの有無など)も判断材料になります。
4. 直近の昇給実績 「昨年度実績:平均○円」のように実績を開示している求人票もあります。実績の開示は、制度が「あるだけ」ではなく実際に動いていることの参考情報になります。
これらの記載が乏しい求人がすべて悪いわけではありません。書ききれていないだけの場合もあります。大切なのは、記載が薄い場合には次章で紹介する面接時の質問で補うことです。給与そのものの内訳や手当については、親記事『介護職の給料を職種・施設で比較一覧』や『処遇改善加算で給料はいくら増える』も参考にしてください。
4面接で確認すべき質問リスト
求人票だけで判断がつかない場合、面接や説明会の場は昇給の実態を確認する重要な機会です。以下のような質問は、選考への影響を気にせず聞いても不自然ではない、待遇確認の範囲の質問です。
Q. 昇給はどのくらいの頻度で、何を基準に判断されますか? 年1回の定期昇給なのか、評価次第で毎年変動するのか、資格取得時に都度反映されるのかを確認します。「経験」「資格」「評価」のどれが軸になっているかで、自分のキャリアプランとの相性がわかります。
Q. 昇給の仕組みは就業規則に明記されていますか? 処遇改善加算のキャリアパス要件を満たす事業所では、昇給の仕組みを書面で整備していることが前提になります。就業規則や賃金規程を確認できるか、閲覧方法を尋ねてみましょう。
Q. ここ数年の昇給実績はどうでしたか? 制度の有無だけでなく、実際に運用されてきたかどうかを確認する質問です。「制度はあるが数年据え置き」というケースもあり得るため、実績を尋ねることに意味があります。
Q. 昇給と別に、処遇改善加算による手当・賞与への配分はありますか? 昇給(基本給の引き上げ)と、手当・一時金への配分は別物として運用している事業所もあります。基本給に反映されるのか、手当や賞与に反映されるのかで、将来の年収の積み上がり方が変わります。
これらの質問は、待遇を正しく理解したうえで入職判断をするための情報収集であり、選考で不利になるような性質のものではありません。回答が曖昧な場合は、そのこと自体も一つの判断材料になります。
5実際どのくらいの事業所が昇給を実施しているか(公的統計)
「実際どのくらいの介護事業所が昇給を実施しているのか」という全体感は、厚生労働省「令和6年度介護従事者処遇状況等調査結果」から確認できます(調査時期:令和6年10月、集計対象事業所数8,180)。
この調査によれば、令和6年2月1日〜9月30日の期間に「給与等を引き上げた」と回答した事業所は全体の78.0%にのぼります。さらに「令和6年1月末時点の給与水準を維持しているが、今後1年以内に引き上げる予定」と回答した事業所が6.3%あり、合計すると8割以上の事業所が引き上げの実施・予定を示しています(出典:厚生労働省「令和6年度介護従事者処遇状況等調査結果」第1表/令和6年10月調査)。
また、給与等の引き上げの実施方法(複数回答)を見ると、「定期昇給を実施(予定)」と回答した事業所が56.3%、「各種手当の引き上げまたは新設」が60.4%、「給与表を改定して賃金水準を引き上げた」が27.9%、「賞与等の支給額の引き上げまたは新設」が13.5%という内訳でした(同調査 第4表)。定期昇給・手当・給与表改定・賞与のいずれかを組み合わせて賃金改善を行っている事業所が多いことがうかがえます。
この数値はあくまで令和6年度・全国集計の傾向であり、個々の事業所の実施状況を保証するものではありません。数値自体は「業界全体としては昇給・賃金改善に取り組む事業所が多数派である」という背景情報として理解し、応募を検討する個別の事業所については、前章までの求人票の記載・面接での確認を優先してください。
6「昇給あり」と紛らわしい表現・注意したい書き方
求人票を比較していると、昇給に関して紛らわしい表現に出会うことがあります。以下のような書き方は、実態を確認したほうがよい代表例です。
「昇給あり(会社規定による)」 規定の中身が開示されていない場合、実際の運用は不明です。前述の質問リストを使って、規定の具体的な内容を確認しましょう。
「昇給あり(業績による)」 事業所や法人の業績次第で変動する制度です。実施を保証するものではないため、直近の実施実績を確認する価値があります。
「昇給年1回(4月)」のみの記載 タイミングは明記されていても、金額や条件が書かれていないケースです。面接で「判定基準」を確認すると理解が深まります。
賞与・手当の増額を「昇給」と表現しているケース 基本給の引き上げではなく、賞与や特定の手当の増額を指して「昇給」と表現している求人票も見られます。基本給が変わらない場合、将来の退職金や社会保険の算定基礎に影響する可能性があるため、「昇給」が具体的に何を指すのかを確認する意味があります。
こうした表現そのものが不適切と決めつける必要はありませんが、書き方が抽象的なほど、面接での確認の重要性が増します。本サービスでは、こうした条件を手がかりに求人を検索・比較できる場を提供しています。特定の求人をおすすめしたり、個別にあっせんしたりするものではなく、あくまで条件に一致する求人を探すための情報提供です。気になる記載を見つけたら、応募前に運営元へ直接確認することをおすすめします。
7資格取得・キャリアアップと昇給の結びつけ方
前述のとおり、処遇改善加算のキャリアパス要件では「資格取得に応じた昇給」が仕組みの一つとして認められています。実務上も、無資格・未経験から介護職員初任者研修、実務者研修、介護福祉士とステップアップしていく過程で、資格手当や昇給に反映する事業所は少なくありません。
求人票を確認する際は、次の点を押さえておくと資格取得とセットでの昇給が見込めるかどうかの判断材料になります。
- 資格取得支援制度の有無:研修受講料の補助、資格試験の受験料補助などがあるか
- 資格取得後の反映方法:資格手当として毎月一定額が加算されるのか、基本給の昇給として反映されるのかは事業所によって異なります
- 反映のタイミング:資格取得と同時に反映されるのか、次の昇給査定時期まで待つのか
また、介護福祉士や実務者研修修了者などの「経験・技能のある介護職員」への処遇改善を重点的に図る考え方は、処遇改善加算の趣旨の一つでもあります。資格取得を昇給・キャリアアップの手段として考えている場合は、事業所がその資格をどう評価する制度になっているかを、求人票と面接の両方で確認するとよいでしょう。資格取得のルートそのものについては、親記事『介護福祉士の資格取得ルート』などもあわせて参考にしてください。
いずれにしても、資格取得が「昇給を約束するもの」ではなく、「昇給の判断材料の一つになり得るもの」という位置づけである点は押さえておく必要があります。事業所によって資格の評価の重みは異なるため、断定的な期待をせず、確認を重ねる姿勢が重要です。
8まとめ:昇給条件の確認は「制度」と「実績」の両輪で
介護職の昇給条件を確認するときは、次の2つの視点を意識すると精度が上がります。
1つ目は「制度が整備されているか」です。処遇改善加算のキャリアパス要件により、対象事業所では昇給の仕組みを就業規則等に明文化することが前提になっています。求人票や面接で、昇給の頻度・条件・金額目安が具体的に説明できるかどうかは、制度がどれだけ整っているかの一つの手がかりになります。
2つ目は「実際に運用されてきたか」です。制度があっても実施実績が乏しいケースもあり得るため、直近の昇給実績を尋ねる、就業規則の閲覧可否を確認するといった行動で裏付けを取ることが大切です。厚生労働省の調査でも、賃金改善に取り組む事業所は多数派である一方、実施方法・金額は事業所ごとに幅があることが読み取れます。
この2つを両輪で確認することで、「昇給あり」という一言の裏にある実態に近づくことができます。焦って1件だけで判断せず、複数の求人を比較しながら、気になった点は面接で確認する。この積み重ねが、入職後の「思っていたのと違う」を減らす一番の近道です。
本サービスは、こうした条件をもとに求人を検索・比較できる場を提供するものであり、特定の求職者に特定の求人をあっせん・ご紹介するものではありません。昇給条件だけでなく、手当・賞与・キャリアパスなど処遇に関わる情報を総合的に見比べながら、ご自身の状況に合った求人を探すための一つの材料として活用してください。
FAQ
このガイドのよくある質問
保証されるものではありません。介護職員等処遇改善加算のキャリアパス要件は「経験・資格等に応じて昇給する仕組みを整備すること」を求めるものであり、仕組みの中身(昇給額・頻度・判定基準の厳しさ)までは一律に定めていません。そのため加算を取得している事業所であっても、実際の昇給額や実施頻度には差があります。加算取得は制度整備の裏付けにはなりますが、実際の運用状況は求人票や面接で別途確認することが大切です。
厚生労働省「令和6年度介護従事者処遇状況等調査結果」(令和6年10月調査、集計対象8,180事業所)によれば、令和6年2月〜9月の期間に給与等を引き上げたと回答した事業所は全体の78.0%でした。実施方法(複数回答)としては定期昇給の実施・予定が56.3%、各種手当の引き上げ・新設が60.4%という内訳です。ただしこれは全国集計の傾向を示す数値であり、個別事業所での実施を保証するものではない点に留意してください。
必ずではありません。資格取得に応じた昇給は、処遇改善加算のキャリアパス要件で認められている昇給方法の一つですが、資格手当として毎月一定額を加算するのか、基本給そのものの昇給として反映するのかは事業所ごとに運用が異なります。資格取得が昇給に直結するとは限らず、あくまで判断材料の一つとして扱われる場合もあります。資格取得支援制度の有無や、取得後の反映方法・タイミングを、求人票や面接であらかじめ確認しておくことをおすすめします。
記載が薄いだけで実態は特に問題ない事業所もあるため、その一点だけを理由に一律に避ける必要はありません。ただし判断材料が少ない場合は、面接で昇給の頻度・条件・直近の実施実績を具体的に質問し、就業規則や賃金規程の閲覧可否なども確認したうえで、他の求人と比較検討することをおすすめします。記載の充実度だけでなく、質問への回答の具体性も判断材料になります。
Sources
参照・確認する一次情報
制度や費用は変更されることがあるため、公式情報と施設の資料を確認しながら更新します。
- 厚生労働省「介護職員の処遇改善:TOP・制度概要」
介護職員等処遇改善加算の制度概要ページ。キャリアパス要件(資格・勤続年数等に応じた昇給の仕組みの整備)に関する記載を2026年7月時点でWebFetchにより確認済み。
- 厚生労働省「介護職員等処遇改善加算に関するQ&A(第2版)」(令和7年3月17日)
キャリアパス要件III(経験・資格等に応じた昇給の仕組み)の具体的な考え方に関するQ&A。URLの実在をダウンロード(PDF取得)により2026年7月時点で確認済み。詳細な文面は検索結果の要約により把握。
- 厚生労働省「令和6年度介護従事者処遇状況等調査結果」
調査時期:令和6年10月、集計対象事業所数8,180。第1表「給与等の状況」(引き上げ実施78.0%)、第4表「給与等の引き上げの実施方法」(定期昇給56.3%等)を2026年7月時点でPDF本文を直接確認のうえ引用。
- 厚生労働省「確かめよう労働条件」就業規則Q&A(記載事項)
労働基準法第89条における賃金・昇給に関する事項の位置づけ(昇給の定めをした場合の記載義務)を2026年7月時点でWebFetchにより確認済み。
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