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介護おしごとさーち
給料を知る

介護職の地域別給与差の見方

作成日
2026年7月7日
最終更新日
2026年7月8日

介護職の給料になぜ地域差が出るのか。介護報酬の地域区分(1級地〜その他)の仕組みと、公務員の地域手当との違いを厚労省の一次情報で整理し、求人票の給与欄で実際に確認すべきポイントまで解説します。

1介護職の給料に「地域差」があるのは本当か

介護報酬の地域区分・人材需給バランス・物価や家賃水準という、介護職の給与に地域差が生まれる3つの要因を整理した図

介護職の求人を探していると、「同じ仕事内容なのに都市部のほうが月給の掲示額が高い」と感じる場面があります。これは印象だけの話ではなく、統計上も裏付けがあります。厚生労働省『令和6年度 介護従事者処遇状況等調査結果』によれば、介護職員(月給・常勤)の全国平均給与額は約33.8万円/月(338,200円、令和6年9月・処遇改善加算取得事業所)です。ただしこれは全国の平均値であり、実際の求人票の金額は事業所が所在する地域や施設の運営状況によって幅があります。

地域差が生まれる理由は一つではありません。大きく分けると、(1)介護報酬そのものに組み込まれた「地域区分」という制度上の仕組み、(2)都市部と地方の人材需給バランス(有効求人倍率の差)、(3)物価・家賃水準の違いに応じた事業所側の実務的な給与設定、の3つが絡み合っています。この記事では特に見落とされがちな(1)の「地域区分」の仕組みを一次情報で正確に整理したうえで、実際に求人票のどこを見れば地域差の実態を確認できるかを解説します。

介護職の転職・就職を考えるとき、「地方だから給料が安いはず」「都会に出れば給料が上がるはず」と単純化して考えてしまいがちですが、実際には制度の仕組みを理解したうえで求人票を丁寧に読むほうが、納得感のある比較につながります。特に転居を伴う転職を検討している場合、勤務地が変わることで給与のどの部分がどう変わるのかを事前に把握しておくことは、入職後のミスマッチを防ぐうえでも重要です。

先にお断りしておくと、介護職に限定した都道府県別の給与実額を毎年公表する一次統計は限られています。断定的な「〇〇県はいくら」という数字を出すのではなく、「なぜ差が出る構造になっているか」「求人票でどこを確認すべきか」という読み方の軸を持つことを、本記事のゴールにしています。

2介護報酬の「地域区分」とは何か(1級地〜その他)

介護職の給与の地域差を理解するうえで欠かせないのが、介護報酬の「地域区分」という制度です。介護保険法第41条第4項等に基づき、介護報酬はサービス提供に要する平均的な費用の額を勘案して設定することとされており、地域による人件費差を反映するため、サービスごと・地域ごとに「1単位あたりの単価」が変えられています。

厚生労働省 社会保障審議会 介護給付費分科会(第243回、令和6年12月23日)資料「地域区分」によると、全国の市区町村は1級地から7級地、および「その他」まで計8段階に区分され、それぞれに上乗せ割合が設定されています。上乗せ割合は1級地20%・2級地16%・3級地15%・4級地12%・5級地10%・6級地6%・7級地3%・その他0%です。この結果、1単位の単価はサービスの人件費割合(45%・55%・70%)に応じて10.00円〜11.40円の範囲で変動します。つまり、同じ「1単位」のサービスを提供しても、1級地(東京23区など)と「その他」地域とでは、事業所が受け取る介護報酬そのものに差があるということです。

介護報酬の計算式は「サービスごとに算定した単位数 × 1単位の単価(サービス別・地域別に設定)= 事業者に支払われるサービス費」という構造です。訪問系サービスは人件費割合が高く設定されており(70%)、地域差の影響を最も受けやすいサービス類型です。

この地域区分は、公平性・客観性を担保する観点から、原則として公務員(国家・地方)の地域手当の区分に準拠しつつ、隣接地域の状況によって一部特例が設けられています。級地は数年おきに見直され、令和6年度改定では見直しに伴い級地が変わった自治体もあります(引き上げ・引き下げの両方が発生)。求人票の給与水準を地域間で比較する際は、この地域区分が事業所の収入(介護報酬)の土台に影響していることを念頭に置くと、「なぜこの地域は給与水準が高めなのか」の理解につながります。

3地域区分と「地域手当」は別物と理解する

ここで整理しておきたいのが、介護報酬の「地域区分」と、公務員の給与制度における「地域手当」の違いです。両者は密接に関連しますが、同じものではありません。

公務員の地域手当は、民間賃金の地域差を踏まえて国家公務員・地方公務員の給与に地域ごとの支給割合を上乗せする仕組みで、人事院規則等に基づき設定されています。一方、介護報酬の地域区分は、前節のとおり公務員の地域手当の区分に原則として準拠していますが、あくまで「介護事業所が受け取る介護報酬の単価」を決める制度であり、介護職員個人の給与に自動的に上乗せされる手当ではありません。

この違いを混同すると、「自分の地域は地域手当が〇%だから、給料も自動的にその分上がる」という誤解が生まれやすくなります。実際には、地域区分によって事業所の受け取る介護報酬(収入)に差がついた後、その原資をどう配分するか(基本給に反映するか、地域手当という名目の手当を新設するか、賞与に回すか等)は、各事業所の給与制度・経営判断に委ねられています。したがって、同じ地域区分の地域であっても、事業所によって実際の給与額には差が出ます。

さらに、地域区分の級地は市区町村単位で設定されており、同じ都道府県内でも自治体によって級地が異なる場合があります。たとえば同じ都道府県でも、県庁所在地は級地が高く、周辺の市町村は「その他」に区分されているといったケースが実際にあります。「同じ県内だから給与水準も同程度だろう」と考えず、事業所が所在する市区町村単位で地域区分を確認する意識が必要です。求人票に「地域手当」という項目がある場合は、それが介護報酬の地域区分と連動した制度なのか、その事業所独自の手当なのかを、面接や問い合わせの際に確認しておくと誤解を防げます。

4処遇改善加算の地域区分は介護報酬の地域区分と同じ枠組み

介護職の給与を語るうえでもう一つ欠かせないのが「介護職員等処遇改善加算」です。この加算は、事業所が算定要件を満たして届出をすることで、介護報酬に上乗せされ、賃金改善の原資となる仕組みです。令和6年6月からは従来の3つの加算(処遇改善加算・特定処遇改善加算・ベースアップ等支援加算)が「介護職員等処遇改善加算」に一本化され、加算率が引き上げられています(厚生労働省リーフレットより)。

この処遇改善加算も、介護報酬の一部として算定される以上、前述の地域区分(1級地〜その他)の上乗せ割合の影響を受けます。つまり、都市部の事業所ほど1単位あたりの単価が高く、同じ加算率・同じ利用者数でも加算による収入額が大きくなりやすい構造です。これは「処遇改善加算そのものに地域ごとの加算率の違いがある」という意味ではなく、「加算の土台となる介護報酬の単価に地域差がある」という点に注意してください。加算率の区分(新加算Ⅰ〜Ⅳ等)は全国共通の算定要件で決まり、地域によって加算の種類が変わるわけではありません。

加算の賃金要件も全国共通のルールで定められています。たとえば新加算Ⅰ・Ⅱに共通するキャリアパス要件では、経験・技能のある介護職員を1人以上、賃金改善後の年収440万円以上とすることなどが求められます。こうした要件自体は地域によって変わるものではなく、あくまで加算の土台となる介護報酬の単価(=地域区分)に地域差がある、という二層構造になっている点を押さえておくと理解が進みます。

求人票や事業所の説明で「処遇改善加算対応」「加算Ⅰ取得済み」といった記載を見た場合、加算を取得していること自体は前向きな材料ですが、実際にいくら賃金改善に回っているかは事業所ごとに異なります。地域区分による収入差と、加算による賃金改善額は別の軸として、それぞれ確認する意識を持つとよいでしょう。

5都市部と地方で給与差が生まれるもう一つの理由:人材需給

地域区分という制度面の要因に加えて、都市部と地方では介護人材の需給バランスにも差があります。有効求人倍率(ハローワークの求人数を求職者数で割った指標)は、介護関係職種で都道府県ごとに大きな開きがあることが知られており、東京都など大都市圏で高く、地方では相対的に落ち着いている傾向が見られます。求人倍率が高い=求職者に対して求人が多い地域では、事業所側が人材確保のために給与水準を引き上げる動きが出やすくなります。

これは経済学的にもシンプルな需給の原理で、人材の奪い合いが起きやすい地域ほど、基本給や各種手当を引き上げてでも人を確保しようとする事業所側の動きが強まります。逆に、求職者数に対して求人数が少ない地域では、相対的に給与を引き上げる圧力は弱まりやすい傾向があります。ただし、これはあくまで市場全体としての傾向であり、個別の事業所・法人の経営判断や人材確保戦略によって、地域の平均的な傾向と異なる給与設定をしているケースも珍しくありません。

一方で、都市部は家賃・物価も高いため、掲示上の月給額が高くても、可処分所得や生活コストで見ると地方との差が縮まるケースもあります。求人票の金額だけを都道府県間で単純比較するのではなく、「その地域で生活するうえでの実質的な収支」まで含めて考える視点も大切です。特に転居を伴う転職の場合は、住宅費・通勤費・生活費の違いも含めてトータルで検討することをおすすめします。

また、都道府県別の有効求人倍率や求人の探し方については、姉妹記事で詳しく解説しています。本記事では給与の「地域による差の構造」に絞って解説していますので、地域ごとの求人の探し方・比較の仕方をあわせて知りたい方はそちらも参考にしてください。

6求人票で実際に何を確認すべきか(給与欄の読み方)

地域差の構造を理解したうえで、実際に求人票を見るときに確認したいポイントを整理します。

第一に、「月給に何が含まれているか」です。基本給のみの表示なのか、固定の手当(資格手当・処遇改善手当等)を含む表示なのかで、同じ「月給25万円」でも実態は大きく異なります。前述のとおり、厚労省の統計でも「賞与込みか」「毎月支給分のみか」で数字が変わるため、求人票の月給額がどちらの前提かを確認しましょう。求人票によっては「月給〇〇円〜」と幅を持たせた表記になっている場合もあり、その幅が経験年数によるものか、保有資格によるものかも確認しておくと入職後のギャップを防げます。

第二に、「地域手当・都市手当等の名目の手当があるか」です。ある場合は、それが固定額か、勤務地域によって変動するのか、支給条件(世帯主であること等)がないかを確認します。

第三に、「処遇改善加算の取得状況と、賃金改善への反映方法」です。加算を取得している事業所は、面接時に「加算分がどのように給与・手当・賞与に反映されているか」を尋ねても失礼にはあたりません。むしろ、処遇改善に関する情報は事業所側にも公表・説明の努力が求められている項目です。

第四に、「同一都道府県内・同一法人内での勤務地による差」です。同じ法人でも、都市部の事業所と郊外の事業所とで基本給テーブルが分かれている場合があります。転居を伴わない範囲での勤務地変更でも、給与条件が変わる可能性がある点は、契約前に確認しておくと安心です。

第五に、「通勤手当の上限額」です。地方では自家用車通勤が前提となる求人も多く、ガソリン代相当の通勤手当に上限が設けられている場合があります。都市部では公共交通機関の実費支給が一般的ですが、上限の有無や支給方法は事業所ごとに異なるため、あわせて確認しておくとよいでしょう。

7地方だから給料が低いとは限らない理由

「都市部のほうが給料が高い」という傾向は制度・需給の両面である程度説明できますが、これは平均的な傾向であり、個別の求人ではあてはまらないケースも多くあります。地方であっても、人材確保が難しい地域では事業所が独自に基本給を引き上げていたり、住宅手当・赴任手当・寮の無償提供等を手厚くしていたりする例があります。特別養護老人ホーム(特養)など夜勤を含む施設系サービスは、施設形態自体の給与水準がデイサービス等の通所系より高い傾向があることが厚労省統計でも示されており、これは地域よりも施設形態・夜勤の有無による差のほうが大きい場合もあります。

また、法人の規模や運営方針(社会福祉法人・医療法人・株式会社等)によっても、賞与や退職金制度、昇給の仕組みは大きく異なります。同じ地域区分の中でも、複数の事業所を展開する法人のほうが賞与の原資や研修制度に安定感がある場合もあれば、逆に地域密着の小規模法人が柔軟な勤務条件を用意している場合もあり、一概に法人規模の大小だけで判断できるものでもありません。地域という軸だけで給与を判断せず、施設形態・雇用形態・法人の制度もあわせて比較することをおすすめします。

本サービスは、条件に一致する求人を都道府県・施設形態・雇用形態などで絞り込んで探すための情報提供(募集情報等提供)を行っています。特定の方に特定の求人をあっせん・ご紹介するものではありませんが、地域や施設形態で求人を絞り込み、給与欄・待遇欄を横断的に比較検討する際の材料としてご活用いただけます。地域ごとの傾向を把握したうえで、個々の求人票を丁寧に読み比べる姿勢が、結果的に納得感のある転職・就職につながります。

8地域差を踏まえた比較のまとめ方

ここまでの内容を整理すると、介護職の給料の地域差は、(1)介護報酬の地域区分(1級地20%〜その他0%の上乗せ割合、公務員の地域手当区分に原則準拠)という制度的な土台、(2)処遇改善加算もこの地域区分の影響を受けること、(3)都道府県ごとの人材需給(有効求人倍率)、(4)物価・生活コストとのバランス、という複数の要因の組み合わせで生まれています。

地域を軸に求人を比較するときは、単純に「掲示された月給額の高低」だけで判断するのではなく、月給に含まれる内訳(基本給・手当・賞与見込み)、処遇改善加算の反映状況、施設形態や夜勤の有無、そして生活コストまで含めて総合的に見ることが、後悔のない求人選びにつながります。特に転居を伴う転職の場合は、給与額の差だけでなく、住宅費や通勤環境、周囲のサポート体制まで含めて中長期的に検討することをおすすめします。地域区分・処遇改善加算・人材需給という3つの制度的・市場的な背景を理解しておくと、求人票の給与欄に書かれた数字の「意味」が読み取りやすくなり、単なる金額の比較にとどまらない判断ができるようになります。

数字の一次情報は年度ごとに更新されるため、最新の地域区分や統計値は、厚生労働省の公式ページやe-Statで随時ご確認ください。求人票の給与欄に疑問があれば、応募前の問い合わせ段階で内訳を確認しておくことが、入職後の認識のズレを防ぐ一番の近道です。地域による給与差は「良い・悪い」の単純な優劣ではなく、制度と市場の両方が絡んだ結果であるという理解を持つことが、腰を据えた比較・検討の出発点になります。

FAQ

このガイドのよくある質問

A.

同じではありません。地域区分は介護事業所が受け取る介護報酬の単価(1単位10.00円〜11.40円)を地域ごとに定める制度で、原則として公務員の地域手当の区分に準拠しつつ設定されます(厚労省 介護給付費分科会 令和6年12月資料)。ただし介護職員個人の給与に自動的に手当として上乗せされるわけではなく、原資の配分は各事業所の給与制度・経営判断によります。求人票に「地域手当」の記載がある場合は、その中身を個別に確認することをおすすめします。

A.

そうとは限りません。地域区分は事業所が受け取る介護報酬の単価に影響しますが、その原資を基本給・手当・賞与のどれに配分するかは事業所ごとの給与制度によります。地域区分はあくまで給与差が生まれる制度的な背景の一つであり、同じ地域区分の中でも施設形態・夜勤の有無・法人の運営方針によって個別の求人の給与額には差が出ます。地域だけを理由に給与額を断定的に見込むのではなく、求人票の内訳まで確認することが大切です。

A.

厚生労働省『賃金構造基本統計調査』では都道府県別の賃金データが公表されており、e-Statでも詳細な統計表を確認できます。厚労省『介護従事者処遇状況等調査』は全国平均(令和6年9月・約33.8万円/月)を中心にまとめられており、介護職に限定した都道府県別の実額を毎年安定して公表する一次統計は限られます。断定的な都道府県間比較は避け、最新の数値は厚労省公式サイトまたはe-Statでご自身でも確認することをおすすめします。

A.

一概にはいえません。都市部は地域区分の上乗せ割合が高く掲示上の給与額も高い傾向がある一方、家賃・物価も高いため実質的な生活コストは異なります。また地方でも人材確保が難しい地域では、事業所が独自に基本給や住宅手当を手厚くしている例もあります。地域だけで判断せず、施設形態・夜勤の有無・手当の内訳、そして生活コストまで含めて総合的に比較することをおすすめします。

A.

加算を取得していること自体は前向きな材料ですが、加算による賃金改善の反映方法(基本給・手当・賞与のどこに回すか)は事業所ごとに異なります。また加算の算定要件(キャリアパス要件等)は全国共通でも、加算の土台となる介護報酬の単価には地域区分による差があるため、同じ加算区分・同じ加算率でも地域によって加算額そのものが変わる点にも留意が必要です。求人票では加算の有無だけでなく反映方法も確認しましょう。

Sources

参照・確認する一次情報

制度や費用は変更されることがあるため、公式情報と施設の資料を確認しながら更新します。

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