「取る・配る・伝える」までやって初めて役立ちます。上位区分を取得して原資を確保し、月額賃金改善要件に沿って基本給など毎月の賃金へ確実に配分し、昇給の仕組みや年収440万円のモデル、職場環境改善の取組を求人票・面接で具体的に伝えるのが基本です。取得しているだけで発信していなければ採用の力にはなりません(厚生労働省 老発0313第6号、令和8年3月13日)。
処遇改善加算を採用に活かす方法
- 作成日
- 2026年6月27日
- 最終更新日
- 2026年6月27日
【事業者向け・採用/定着の背景知識】処遇改善加算を採用・定着に役立てる方法。令和8年6月の拡充(介護従事者へ対象拡大・新区分Ⅰイ/Ⅰロ等・国の措置として要件を満たした介護職員で最大月1.9万円の賃上げ見込み)を、厚労省通知・Q&Aの一次情報で解説します。本記事は制度解説であり、介護おしごとさーちが特定事業者を推薦・あっせんするものではありません。
1結論:処遇改善加算は「賃上げの原資を介護報酬から得て、採用・定着に役立てる」仕組み。令和8年6月から拡充された
先に結論からお伝えします。処遇改善加算は、職員の賃金を直接上げる原資を介護報酬から得られる仕組みであり、事業者にとっては「取得できる上位区分を取りに行くこと」と「取った加算を求人票・面接で見える化して伝えること」の2つができて初めて、採用と定着に役立ちます。加算を取得していても、それが求職者や在籍職員に伝わっていなければ、採用の力にはなりません。
そしていま(2026年6月時点)押さえるべき最大のポイントは、令和8年6月から処遇改善加算が拡充されたことです。令和9年度の改定を待たず、人材流出を防ぐ緊急対応として期中改定が行われました(厚生労働省 老健局長通知「介護職員等処遇改善加算に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について(令和8年度分)」老発0313第6号、令和8年3月13日。https://www.mhlw.go.jp/shogu-kaizen/download/6_tsuuchi_kihontekikangaekata_jimushoritejun.pdf )。背景には『「強い経済」を実現する総合経済対策』(令和7年11月21日閣議決定)があります。
拡充の中身は大きく3つです。①対象がこれまでの「介護職員のみ」から「介護従事者」へ拡大、②訪問看護・訪問リハビリ・居宅介護支援などこれまで対象外だったサービスが新たに対象に、③加算率の引き上げと新区分(Ⅰイ/Ⅰロ/Ⅱイ/Ⅱロ/Ⅲ/Ⅳ)の新設です(同通知 2〜3ページ)。本記事は、この令和8年6月以降の最新版を主軸に、令和6年6月の一本化は「沿革」として整理します。
本記事は事業者(採用・労務のご担当)向けの制度解説です。なお、求職者の方が「この加算で自分の給料がいくら増えるのか」を知りたい場合は、求職者向けの処遇改善加算で給料はいくら増えるで扱っていますので、そちらをご覧ください。
そして大前提として、本サイト「介護おしごとさーち」は求人の掲載・検索の場であり、特定の方への個別あっせんや人材紹介は行っていません。本記事はあくまで制度の解説であって、当サイトが特定の事業者の採用を推薦・あっせんするものでもありません。事業者の方は、加算で改善した処遇を求人票や問い合わせで誠実に発信していただく――その材料として本記事をお使いください(求人データは現在準備中です)。
2令和8年6月の拡充:対象が「介護従事者」へ広がり、国の措置として要件を満たした介護職員で最大月1.9万円(6.3%)が見込まれる
令和8年6月の拡充で、賃上げの規模は国の措置全体の見込み額として次のように示されています。介護従事者を対象に幅広く月1.0万円(3.3%)の賃上げを実現する措置を実施し、生産性向上や協働化に取り組む事業者の介護職員にはさらに月0.7万円(2.4%)の上乗せ。定期昇給分0.2万円を含め、介護職員については合計で最大月1.9万円(6.3%)の賃上げが実現する措置とされています(前掲 老発0313第6号 2ページ「1 基本的考え方」、令和8年3月13日時点)。
ここで採用文脈に翻訳するうえで、最初に強く注意していただきたい点があります。この「最大月1.9万円(6.3%)」は、あくまで国の措置全体としての「最大」「見込み」の額であり、個々の事業所がすべての職員に実現を約束できる額ではありません。実際にいくら配分されるかは、各事業所が取得する区分と配分方法によって変わります。したがって、求人票に提示する金額は、国の見込み額をそのまま転記するのではなく、自社の実際の配分額に基づいて誠実に提示するのが原則です。「月1.9万円アップ」と断定的に書くと、景品表示法上の有利誤認(誇大表示)につながりかねません。国の見込みに触れる場合も「要件を満たした介護職員で最大月1.9万円(6.3%)が見込まれる国の措置」と、出典・条件つきで書くのが安全です。
対象の広がりも採用・定着の追い風です。これまで処遇改善加算の対象外だった訪問看護・介護予防訪問看護、訪問リハビリテーション・介護予防訪問リハビリテーション、居宅介護支援・介護予防支援が新たに対象になりました(同通知 2〜3ページ)。これらのサービスを持つ事業者は、看護師やケアマネジャーを含めた処遇改善を打ち出せるようになります。多職種の処遇を一体で底上げできる点は、特定職種だけが潤う不公平感を避け、職場全体の定着に効きます。
3加算率(原資)を一次値で確認し採用計画に織り込む:訪問介護は最上位がⅠイ27.0%へ(改正前24.5%)
加算で得られる原資の大きさは、サービス種別ごとに定められた「加算率」で決まります。令和8年6月以降、加算ⅠとⅡには「イ(従来要件)」と「ロ(生産性向上・協働化要件を満たす上乗せ)」の区分が新設され、ロはイに上乗せした率になります。
訪問介護の加算率(令和8年6月以降)は、社会保障審議会・介護給付費分科会の見直し案で次のとおり示されています(厚生労働省「令和8年度介護報酬改定 介護報酬の見直し案 別紙1:指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準【令和8年6月施行】」社保審-介護給付費分科会 第253回、令和8年1月16日。https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001633494.pdf )。
| 区分 | 加算率(訪問介護・令和8年6月以降の見直し案) |
|---|---|
| 加算Ⅰイ | 27.0%(1000分の270) |
| 加算Ⅰロ | 28.7% |
| 加算Ⅱイ | 24.9% |
| 加算Ⅱロ | 26.6% |
| 加算Ⅲ | 20.7% |
| 加算Ⅳ | 17.0% |
改正前(令和8年5月まで=令和6年6月一本化版)の訪問介護は、Ⅰ=24.5%、Ⅱ=22.4%、Ⅲ=18.2%、Ⅳ=14.5%でした(同 別紙1 改正前欄)。見直し案ベースでは、訪問介護の最上位区分は24.5%→27.0%(イ)へ引き上げられるとされています。
なお、ここで示した率は社保審分科会の「見直し案」段階の数値です。原資の試算に用いる際は、最終的な厚生労働省告示(指定居宅サービス等の算定基準の改正告示)で確定値を必ず再確認してください。
もう一点重要なのは、加算率はサービス種別で異なることです。上の表はあくまで訪問介護の値です。自施設のサービス(施設サービス、居宅介護支援、介護予防など)の率は、別紙1〜7のうち該当する別紙で必ずご確認ください。採用計画で原資を試算するときは、まず自施設の現行区分と率を正しく押さえることが出発点になります。
43つの算定要件は、そのまま「求人票に書ける魅力」と「定着施策」になる
新加算の算定要件は3種類です。①月額賃金改善要件、②キャリアパス要件(Ⅰ任用・賃金体系/Ⅱ研修/Ⅲ昇給の仕組み/Ⅳ改善後の年額賃金440万円/Ⅴ介護福祉士等の配置)、③職場環境等要件(前掲 老発0313第6号「3 介護職員等処遇改善加算の要件」、令和8年3月13日時点)。加算ⅡはⅠの要件から一部免除、Ⅲはさらに免除、Ⅳは最も要件が少ない構造です。
採用・定着の観点で見ると、これらの要件は単なる事務手続きではなく、そのまま求人で誠実に伝えられる材料になります。
- キャリアパス要件Ⅲ(昇給の仕組み):昇給ルートが制度として整っていることの証明。求人票に「昇給制度あり(経験・資格に応じた昇給)」と具体的に書けます。求職者の最大の不安の一つが「ここで働き続けて給料が上がるのか」です。
- キャリアパス要件Ⅳ(年額440万円):経験・技能のある介護職員のうち1人以上は賃金改善後の見込額が年額440万円以上であること(改善前から440万円以上の者を除く。小規模事業所等で合理的説明があれば例外あり)(同通知「⑤キャリアパス要件Ⅳ」)。「介護福祉士でキャリアを積めば年収440万円のモデルがある」と、キャリアの天井がないことを示せます。
- 職場環境等要件:腰痛対策、ハラスメント対策、ICT活用、研修体制など複数の取り組みから選んで実施する要件。実施した内容は、定着施策そのものであると同時に「働きやすさ」を伝える材料になります。
まず月額賃金改善要件から見ていきます。
5月額賃金改善要件:加算Ⅳ相当額の2分の1以上を「基本給など毎月の賃金」へ(労務手続きに注意)
月額賃金改善要件は、処遇改善加算Ⅳの加算額の2分の1以上を、基本給または決まって毎月支払われる手当(基本給等)の改善に充てることを求めます。Ⅳ以外の区分を算定する場合も、仮にⅣを算定したと見込まれる加算額の2分の1以上を基本給等の改善に充てます(前掲 老発0313第6号「①月額賃金改善要件」、令和8年3月13日時点)。
ここが採用・定着の観点で効くポイントです。一時金(賞与)だけでなく、毎月の固定的な賃金が底上げされることが制度上担保されます。求職者にとって「月給がいくらか」は最も比較しやすい指標であり、毎月の基本給が上がる仕組みは、賞与頼みの処遇よりも安心材料になります。
なお「決まって毎月支払われる手当」とは、労働と直接的関係が認められ、労働者の個人的事情と関係なく支給される手当を指します。職能手当・資格手当・役職手当・地域手当などの名称でも該当します。一方、通勤手当・扶養手当(個人的事情で支給)や、月ごとに支給の有無が変わる手当は対象外です。時給・日給の引き上げは基本給の引上げとして扱って差し支えありません(厚生労働省「介護職員等処遇改善加算に関するQ&A(第1版)」事務連絡、問1-3・問1-4、令和8年3月13日。https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001675711.pdf )。
実務上の負担についても誠実にお伝えします。新規に算定を始める場合を除き、この要件を満たすために賃金総額を新たに増やす必要はなく、既存の手当・一時金の一部を基本給に付け替えることで満たして差し支えないとされています(同通知「①月額賃金改善要件」)。ただし、手当・一時金の基本給への付け替えや賃金体系の変更は、就業規則の変更手続きや労働者への説明・同意など労働関連法上の手続きを要する場合があります。安易に運用すると不利益変更を巡る労務トラブルになりかねないため、必要に応じて社会保険労務士等の専門家に確認のうえ進めてください。
また、付け替えだけで終わらせると、求職者から見た処遇改善の実感は生まれにくくなります。賃金改善はベースアップ(賃金表の改訂による基本給等の一律引き上げ)により行うことを基本とし、基本給による改善が望ましいとされている点も踏まえ、できる範囲で原資を上乗せに回す姿勢が、採用力の差になります(同通知「2(2)賃金改善の実施に係る基本的な考え方」)。
6Ⅰロ・Ⅱロ(上乗せ区分)を取るには、令和8年度特例要件⑧(生産性向上・協働化)が必要
加算率の表で見たとおり、より高い原資を得られるのは「ロ」区分です。Ⅰロ・Ⅱロを取得するには、従来要件に加えて令和8年度特例要件⑧(生産性向上・協働化に係る取組)を満たす必要があります。具体的には、次のいずれかを行っていることです(前掲 老発0313第6号「⑧令和8年度特例要件」、令和8年3月13日時点)。
- ケアプランデータ連携システムの利用
- 生産性向上推進体制加算Ⅰ又はⅡの算定
- 所属法人が社会福祉連携推進法人に所属
ここで事業者にうれしい経過措置があります。申請時点で未実施でも、誓約により令和9年3月末までに実施することを前提に、要件を満たすものとして取り扱うことができます(同通知「⑧令和8年度特例要件」)。つまり「今はまだ生産性向上の取組が途中」という事業所でも、令和8年6月から上乗せ区分(ロ)を取りに行ける設計です。
採用・定着の観点では、ロ区分の取得は二重の意味を持ちます。第一に、より大きな原資が得られるので賃上げ幅を確保しやすい。第二に、ケアプランデータ連携やICT活用といった生産性向上の取組そのものが「業務負担を減らす職場」を示す材料になり、人手不足のなかで応募者が重視する「働きやすさ」に直結します。原資の確保と職場改善が同じ取組でつながっている点が、ロ区分のねらいどころです。
7多職種一体の処遇改善が定着・採用に効く:介護職員以外の全職種・派遣・技能実習生まで対象にできる
令和8年度の加算は、配分の自由度が高いのが特徴です。賃金改善は、介護職員(特に介護福祉士であって勤続10年以上等の経験・技能のある介護職員)の処遇改善が重要であることに留意しつつ、事業所内で柔軟に配分できるとされています。配分の対象には、介護職員以外の全職種――看護師・PT・OT・ST・ケアマネジャー・生活相談員・管理栄養士・調理員・事務職など――が含まれます(厚生労働省「介護職員等処遇改善加算に関するQ&A(第1版)」事務連絡、問2-1・問2-1-2、令和8年3月13日)。
さらに、派遣労働者・在籍型出向者・業務委託職員・EPA介護福祉士候補者・技能実習生(介護職種)・介護分野の1号特定技能外国人も対象とすることが可能です。派遣の場合は、派遣料等の上乗せが派遣職員の給与に反映されるよう、派遣元との協議が必要です(同Q&A 問2-3・問2-4・問2-5-1)。
この自由度は、定着・採用の観点で大きなメリットです。特定の職種だけが潤う仕組みだと、対象外の職員に不満が生まれ、かえって定着を損ないかねません。多職種を一体で処遇改善できれば、「ここはチーム全員の待遇を底上げしている職場だ」と伝えられます。
ただし、配分には歯止めもあります。一部の職員に加算を原資とする賃金改善を集中させることや、同一法人内の一部事業所のみに集中させることなど、職務の内容や勤務の実態に見合わない著しく偏った配分は行わないこととされています(前掲 老発0313第6号「2(2)賃金改善の実施に係る基本的な考え方」、令和8年3月13日時点)。「現場の介護職員を中心に据えつつ、多職種にも公正に行き渡らせる」という設計が、制度の趣旨にも定着・採用の実利にもかなっています。多職種のキャリア設計と合わせて考えたい場合は、介護職のキャリアパスと役職の上り方も参考になります。
8加算を採用・定着に役立てる前に押さえる実務リスク:返還・偏った配分・対象外手当
加算を採用・定着に役立てる前に、誠実に押さえておきたいリスクと注意点があります。ここを飛ばすと、せっかくの賃上げが返還や信頼低下につながりかねません。
- 賃金改善額が加算額を下回ると返還の対象:実績報告書で、賃金改善額が処遇改善加算の加算額を下回った場合は、算定要件を満たさないものとして加算返還の対象になります。ただし、不足部分の賃金改善を賞与等の一時金として職員に追加配分すれば、返還を求めない取扱いも可能とされています(厚生労働省「介護職員等処遇改善加算に関するQ&A(第1版)」事務連絡 問1-9、令和8年3月13日)。受け取った加算は確実に職員へ還元する、が大原則です。
- 賃金水準の引き下げは特別事情届出書が必要:経営の悪化等により賃金水準を引き下げる場合は、別途、特別事情に係る届出書の提出が求められるとされています(前掲 老発0313第6号「2(2)賃金改善の実施に係る基本的な考え方」、令和8年3月13日時点。具体の様式・手続は厚労省の最新の通知・様式でご確認ください)。加算を取りながら基本給を下げる、といった運用はできません。
- 著しく偏った配分は不可:前章のとおり、一部職員・一部事業所への著しく偏った配分は認められません(同通知 2(2))。
- 対象外の手当に注意:通勤手当・扶養手当など個人的事情で支給される手当や、月ごとに支給有無が変動する手当は、月額賃金改善要件の対象になりません(同Q&A 問1-3・問1-4)。
これらは「加算を採用・定着に役立てる」前提の土台です。求人票に処遇改善をうたうなら、その裏側で配分・報告・保存の実務を正しく回していることが信頼の源になります。なお令和8年は期中改定のため、令和8年4〜5月分は旧加算率、6月以降は新加算率で算定する二段構えになる点もあわせて確認してください(前掲 老発0313第6号「2(1)処遇改善加算の単位数」)。
9提出期限と手続き:計画書は「算定開始月の前々月末日」まで
加算を取り、採用・定着に役立てるには、期限内の届出が前提です。主な事務処理手順は次のとおりです(前掲 老発0313第6号「4 事務処理手順」、令和8年3月13日時点)。
- 処遇改善計画書:当該事業年度において初めて処遇改善加算を算定する月の前々月の末日までに、都道府県知事等へ提出します。根拠資料と併せて2年間保存が必要です。
- 体制等状況一覧表等の届出(体制届出):居宅系サービスは算定開始月の前月15日まで、施設系サービスは算定開始月の1日まで。令和8年4月の新規算定・区分変更の場合は4月1日まで(知事判断で4月15日まで可)。
つまり、上位区分(特にⅠロ)への引き上げを採用計画に織り込みたい場合は、施行月から逆算して計画書の提出期限を押さえる必要があります。区分の引き上げは原資の増加に直結し、賃上げ幅・求人票で伝えられる内容に効いてくるため、人事・労務の年間スケジュールに組み込んでおくと取りこぼしを防げます。
なお、令和8年6月の拡充に先立ち、報酬改定までの緊急対応として、令和7年度補正予算に「介護分野の職員の賃上げ・職場環境改善支援事業」が盛り込まれ、令和7年12月分から令和8年5月分までの賃上げ相当分が支援されました。令和8年6月の処遇改善加算拡充は、この支援事業から切れ目なく接続する設計です(厚生労働省「令和8年度介護報酬改定に関する審議報告」社会保障審議会介護給付費分科会、令和7年12月23日。https://www.mhlw.go.jp/content/12306000/001618506.pdf )。支援事業から加算へ移行する事業所は、賃上げが途切れないよう手続きの連続性に注意してください。
10まとめ:加算は「取って・配って・伝える」までやって初めて採用・定着に役立つ
処遇改善加算を採用・定着に役立てる流れを、最後に整理します。
- 取る:自施設のサービス種別の加算率を別紙(最終的には確定告示)で確認し、まずは取得できる最上位区分を狙う。Ⅰロ・Ⅱロは令和8年度特例要件⑧(生産性向上・協働化)で上乗せ可。誓約により令和9年3月末までの対応でも申請時点から要件を満たせる経過措置を活用する。
- 配る:受け取った加算は確実に職員へ還元する。月額賃金改善要件(加算Ⅳ相当額の2分の1以上を基本給等へ)を満たしつつ、介護職員を中心に多職種へ公正に配分する。返還リスク・偏り禁止・対象外手当に注意し、付け替えを行う場合は労務手続き(就業規則変更・労働者への説明と同意)を踏む。
- 伝える:昇給の仕組み、年収440万円のモデル、職場環境改善の取組を、求人票・面接・問い合わせ対応で具体的に伝える。金額は自社の実際の配分額に基づいて誠実に提示し、誇大・断定は避ける。国の見込みに触れる場合も「要件を満たした介護職員で最大月1.9万円(6.3%)が見込まれる国の措置」のように出典・条件つきで発信する。
多職種のキャリア設計の参考として介護職のキャリアパスと役職の上り方を、求職者が「この加算で給料がいくら増えるか」を知りたい場合は処遇改善加算で給料はいくら増えるをご覧ください。
制度や加算率は今後も更新されます。最新の正確な内容は、厚生労働省「介護職員の処遇改善」公式ページや各告示・Q&Aの一次情報で必ずご確認ください。本記事は制度解説であり、介護おしごとさーちが特定の事業者の採用を推薦・あっせんするものではありません。当サイトは求人の掲載・検索の場として、誠実に処遇を改善した事業者の発信を後押ししていきます(求人データは現在準備中です)。
FAQ
このガイドのよくある質問
令和8年6月から拡充されました。変更点は3つで、①対象が介護職員のみから「介護従事者」へ拡大、②訪問看護・訪問リハビリ・居宅介護支援などが新たに対象に、③加算率の引き上げと新区分(Ⅰイ/Ⅰロ/Ⅱイ/Ⅱロ/Ⅲ/Ⅳ)の新設です。なお国の措置全体としては、要件を満たした介護職員で定期昇給を含め最大月1.9万円(6.3%)の賃上げが見込まれるとされています(あくまで国の措置の最大・見込み額。厚生労働省 老発0313第6号、令和8年3月13日)。
従来要件に加え、令和8年度特例要件⑧(生産性向上・協働化)を満たす必要があります。具体的には、ケアプランデータ連携システムの利用、生産性向上推進体制加算Ⅰ又はⅡの算定、社会福祉連携推進法人への所属のいずれかです。申請時点で未実施でも、令和9年3月末までに実施する誓約により申請時点から要件を満たす扱いにできる経過措置があります(厚生労働省 老発0313第6号「⑧令和8年度特例要件」、令和8年3月13日)。
できます。看護師・PT・OT・ST・ケアマネジャー・生活相談員・管理栄養士・調理員・事務職など全職種が配分対象で、派遣・在籍型出向・業務委託・EPA介護福祉士候補者・技能実習生・1号特定技能外国人も対象にできます(厚生労働省 介護職員等処遇改善加算に関するQ&A 問2-1ほか、令和8年3月13日)。ただし介護職員(特に経験・技能のある介護職員)の処遇改善を重視しつつ、一部職員や一部事業所に著しく偏った配分は認められません(厚生労働省 老発0313第6号 2(2)、令和8年3月13日)。
その事業年度に初めて加算を算定する月の前々月の末日までです。提出先は都道府県知事等で、根拠資料とあわせて2年間の保存が必要です。なお体制届出は別の期限で、居宅系サービスは算定開始月の前月15日、施設系サービスは当月1日まで(令和8年4月新規は4月1日、知事判断で4月15日も可)です(厚生労働省 老発0313第6号「4 事務処理手順」、令和8年3月13日)。
加算返還の対象になります。実績報告書で賃金改善額が加算額を下回ると、算定要件を満たさないものとして扱われるためです。ただし不足分を賞与等の一時金として職員に追加配分すれば、返還を求めない取扱いも可能とされています。受け取った加算は確実に職員へ還元するのが原則です(厚生労働省 介護職員等処遇改善加算に関するQ&A 問1-9、令和8年3月13日)。
Sources
参照・確認する一次情報
制度や費用は変更されることがあるため、公式情報と施設の資料を確認しながら更新します。
- 厚生労働省 老健局長通知「介護職員等処遇改善加算に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について(令和8年度分)」老発0313第6号(令和8年3月13日)
本記事の最重要の一次情報。令和8年6月施行の拡充、対象の介護従事者への拡大、賃上げ措置(国の措置として月1.0万円・上乗せ0.7万円・最大月1.9万円=6.3%の見込み)、加算区分(Ⅰイ/Ⅰロ/Ⅱイ/Ⅱロ/Ⅲ/Ⅳ)、3要件(月額賃金改善=加算Ⅳ相当額の2分の1以上を基本給等へ・キャリアパスⅠ〜Ⅴ・職場環境等)、令和8年度特例要件⑧、提出期限の根拠。『著しく偏った配分は行わないこと』『賃金水準引下げ時の特別事情届出』は2(2)賃金改善の実施に係る基本的な考え方が根拠。
- 厚生労働省「介護職員等処遇改善加算に関するQ&A(第1版)」事務連絡(令和8年3月13日)
配分の自由度と対象範囲(介護職員以外の全職種・派遣・出向・委託・EPA・技能実習生・特定技能、問2-1・問2-1-2・問2-3〜2-5-1)、決まって毎月支払われる手当の定義(問1-3・問1-4)、賃金改善額が加算額を下回った場合の返還と一時金追加での回避(問1-9)など、実務とFAQの根拠。なお『偏った配分の禁止』の文言自体は本Q&Aではなく老発0313第6号 2(2)に記載。
- 厚生労働省「令和8年度介護報酬改定 介護報酬の見直し案 別紙1:指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準【令和8年6月施行】」(社保審-介護給付費分科会 第253回、令和8年1月16日)
加算率(%)の一次値(見直し案段階)。訪問介護の令和8年6月以降(Ⅰイ27.0%/Ⅰロ28.7%/Ⅱイ24.9%/Ⅱロ26.6%/Ⅲ20.7%/Ⅳ17.0%)と改正前(Ⅰ24.5%/Ⅱ22.4%/Ⅲ18.2%/Ⅳ14.5%)。本資料は分科会の見直し案であり、確定値は最終の改正告示で再確認が必要。自施設のサービス種別の率は別紙1〜7の該当別紙で確認する。
- 厚生労働省「令和8年度介護報酬改定に関する審議報告」(社会保障審議会介護給付費分科会、令和7年12月23日)
拡充の政策的根拠。令和8年6月施行とした理由、対象を介護従事者へ拡大する趣旨、新規対象サービスへの要件、賃上げ・職場環境改善支援事業(令和7年12月分〜令和8年5月分)との切れ目ない接続の根拠。
- 厚生労働省「介護職員の処遇改善」公式トップ・制度概要ページ
処遇改善加算の制度概要・リーフレット・計画書/実績報告書の様式・解説のハブページ。事業者に最新の正確な情報と様式(特別事情届出書を含む)の入手先として案内するのに適する。
Related
あわせて読みたいガイド
採用・事業者向け
介護職員を採用できない理由と対策
介護職員を採用できない一次的なボトルネックは「離職が多いから」ではなく、有効求人倍率3.97倍(全職業1.16倍・厚労省 令和7年3月)という売り手市場で母集団形成が難しいことです。離職率はむしろ低下傾向(2職種計12.4%・令和6年度)。一次データで通説を是正し、賃金・休暇・人間関係など事業者が実際に効果を実感した対策と採用チャネルの実効性を出典付きで比較する、採用・事業者向けの親記事です。数値は出典名・URL・時点を明示し、時点の異なる複数調査を組み合わせている点も注記しています。
採用・事業者向け
介護職員の離職を防ぐ職場づくり
介護職員の離職防止・定着を一次情報の数字で整理。介護(2職種計)の離職率は12.4%(令和6年度)と全産業15.4%を下回る一方、採用率は14.3%へ低下し人手確保は難化。離職理由の筆頭は人間関係24.7%、定着に効果のあった策は休暇の取りやすさ34.4%。事業者・採用担当向けに、出典名・年度を併記して解説します。
採用・事業者向け
応募が集まる介護求人票の書き方
介護の求人票の書き方を、2024年4月施行の改正職業安定法で追加された3項目を含む法令必須記載と、応募が集まる賃金・休暇・人間関係の書き方の両輪で解説。固定残業代の明示3要件(時間外・休日・深夜労働を含む)や厚労省の一次データ(介護関係職種の有効求人倍率3.97倍ほか)も出典付きで整理します。
採用・事業者向け
介護の採用媒体とコストの比較
介護の採用媒体をコスト(費用の出方)で比較し、一次情報で整理します。無料(ハローワーク・福祉人材センター・社内紹介)、掲載課金型の求人サイト、成功報酬型の人材紹介を、急ぐ度・狙う人材・費用の出方で使い分ける視点を提示。実施率・効果実感の比較表、人材紹介の手数料規制(上限制=賃金の10.8%等)、複数併用の実態まで出典付きで解説します。
手当・福利厚生
処遇改善加算で給料はいくら増える
処遇改善加算で給料は実際いくら増えたかを一次情報で解説。加算取得事業所の介護職員(月給・常勤)の平均給与額は令和5年9月→令和6年9月で月13,960円増(厚労省・統計表第70表)。令和8年6月の拡充は要件を満たした介護職員で最大月1.9万円の措置額です。加算率は事業所への上乗せで個人の増額そのものではない点も整理します。
資格取得・キャリア
介護職のキャリアパスと役職の上り方
介護のキャリアパスと役職の上り方を地図のように解説。無資格スタートからリーダー・サ責・ケアマネ・管理者・認定介護福祉士まで、どの順で・何を満たせば上がれるかを厚労省など一次情報の数字とともに整理。役職と賃金の関係も処遇改善加算で説明します。本記事は一般的な制度の解説で、個別のキャリア相談・職業紹介・あっせんは行いません。
FACILITY SEARCH
ガイドの内容をもとに、条件を選んで介護のおしごと・求人を探せます
都道府県・職種・雇用形態・給与・こだわり条件から、介護のおしごと・求人を探せます。 条件を整理してから運営に相談したい方は、問い合わせフォームもご利用ください。