「夜勤専従なら稼げる」という話を聞いて、日勤だけの今の職場から切り替えるべきか迷っている方は多いと思います。実際、夜勤専従の求人は月給の額面が高めに見えることが多く、収入面での魅力を感じやすい働き方です。ただ、「日勤と比べて具体的にいくら差が出るのか」を自分の数字で試算してから比較している方は、意外と少ないのではないでしょうか。
先に、要点をまとめます。
- 夜勤専従の月収は、深夜割増賃金(法定・25%以上)と施設独自の夜勤手当が積み上がってできており、日勤のみの働き方より額面が上振れしやすい
- ただし夜勤専従の回数には実務上の目安(1回16時間換算で月8〜10回程度)があり、「回数を無限に増やして稼ぐ」ことはできない
- 日勤との差は、賞与・退職金の扱いや生活リズムの負担まで含めて比較すると、単純な月給の差以上に複雑になる
ただし、この試算には一つ見落としやすい注意点があります。夜勤専従の額面が高く見える理由の多くは「深夜割増賃金」という法律で決まった部分であり、施設が独自に上乗せする夜勤手当そのものの相場は、実は公的な統計としては存在しません。この記事の後半で、この「法定部分」と「施設独自の部分」を分けて試算する方法を具体的に確認していきます。
夜勤専従の月収はどう計算する?法定割増と施設独自手当の2階建てで考える
夜勤専従の月収は、①深夜割増賃金(法律で定められた最低25%増)と②施設が任意で設定する夜勤手当、の2つが積み上がってできています。
介護報酬制度における「夜勤時間帯」は、午後10時から翌日午前5時までを含む連続16時間と定義されています(厚生労働省「夜勤職員配置加算等における夜勤時間帯の取扱い等について」)。この時間帯に働いた分については、労働基準法第37条第4項により、通常の賃金の25%以上の割増賃金を支払うことが事業者に義務づけられています(e-Gov法令検索 労働基準法第37条第4項)。これが夜勤専従の月収を底上げする「法定部分」です。
これに加えて、多くの施設では「夜勤1回につき◯円」という形の夜勤手当を独自に設定しています。この金額は事業所ごとに自由に決められるため、公的な相場データは存在しません。夜勤専従の月収を試算するときは、この2つを分けて考えることが、実際の求人票を正しく比較するコツになります。
日勤のみの働き方における給与の考え方は介護職の給料を職種・施設で比較一覧で、夜勤手当そのものの相場の考え方は介護の夜勤手当はいくら?回数別の額で詳しく扱っています。この記事では、夜勤専従という働き方に絞って、月収を試算する枠組みと日勤との比較の視点を整理します。
夜勤専従は月何回入れる?回数の実務上の目安を確認する
法律に「夜勤専従は月何回まで」という直接の回数制限はありませんが、1回16時間換算の勤務では、実務上、月8〜10回程度が目安とされています。
これは、1か月単位の変形労働時間制のもとで、1週間あたりの労働時間が法定労働時間(週40時間)の平均を超えないように調整する必要があるためです。1回の夜勤が16時間(2日分の労働時間に相当する換算)である場合、月の労働日数の枠から逆算すると、実務上は月10回程度が上限に近い水準になります。これに加えて、施設ごとに「夜勤協定」を締結し、独自の上限回数を定めているケースもあります。
参考として、介護職全体(夜勤専従に限らない)の深夜勤務回数の実態を見ると、深夜勤務が「ある」介護職の1か月当たりの回数は平均5.2回で、最も多いのは「5〜6回」(37.0%)です(介護労働安定センター『令和6年度 介護労働実態調査』)。ただしこれは通常勤務者と夜勤専従者を合わせた全体の数字で、夜勤専従者だけを取り出した回数の分布は、この調査からは読み取れません。夜勤専従は「夜勤にまとまって入る」働き方である分、平均5.2回よりも多い回数になるのが一般的です。
つまり、夜勤専従の月収を試算するときの「回数」の変数は、上限の目安として月8〜10回程度を置いたうえで、実際には求人票に書かれている想定回数(例:「月8回程度」「月9〜10回」といった記載)を確認するのが確実です。
夜勤専従の月収を試算してみる:日勤のみとの比較
日勤のみで働く場合と夜勤専従で働く場合の月収差は、深夜割増賃金と施設独自の夜勤手当の合計が、そのまま上乗せ分になると考えるとイメージしやすくなります。
ここからは、あくまで計算の枠組みを示すための試算例です。金額は求人票によって変わるため、「相場」ではなく「自分の数字を当てはめるための計算式」として読んでください。
まず基準となる数字を確認します。介護職員(月給・常勤)の平均給与額は338,200円(令和6年9月時点、厚生労働省『介護従事者処遇状況等調査』。基本給・手当・一時金〔賞与等の1/6〕を含む)です。この平均給与額には、日勤のみの職員と夜勤ありの職員が混在しているため、夜勤専従に限った平均額は、この統計からは直接分かりません。
そのうえで、試算の考え方を示します。仮に基本給を22万円、1回あたりの夜勤手当を求人票の記載額(ここでは計算例として6,000円と仮定)とした場合の月収イメージは、次のようになります。
| 働き方 | 基本給 | 夜勤に関する手当(計算例) | 月収の目安(計算例) |
|---|---|---|---|
| 日勤のみ | 220,000円 | 0円 | 約22万円 |
| 夜勤あり(通常勤務・月5回) | 220,000円 | 6,000円×5回=30,000円+深夜割増分 | 約25〜26万円 |
| 夜勤専従(月9回) | 220,000円〜(夜勤専従は基本給が高めに設定される求人もある) | 6,000円×9回=54,000円+深夜割増分 | 約28〜30万円 |
表中の「6,000円」はあくまで計算手順を示すための仮の数字で、相場を示すものではありません。実際の夜勤手当の額、深夜割増賃金の計算に使う基礎時給、夜勤専従求人特有の基本給の設定(専従者向けに基本給自体が高めに設定されている求人もあれば、通常勤務と同水準の求人もあります)は、求人票ごとに異なります。試算するときは、必ず応募を検討している求人票に書かれている実際の数字を当てはめてください。
年収ベースで見ると、この月収差に加えて賞与(一時金)の扱いも影響します。賞与は基本給に連動して算定されることが多いため、夜勤専従の求人で基本給が通常勤務と同水準に設定されている場合、月収は高くても賞与額は変わらない、というケースもあり得ます。年収全体で比較したい場合は、月収差だけでなく、求人票の賞与欄(「基本給の◯ヶ月分」等の記載)もあわせて確認することをおすすめします。
夜勤専従で本当に「稼げる」のか?見落としやすい3つの注意点
夜勤専従は月収の額面が上がりやすい一方で、①回数の上限、②基本給の設定、③体調管理の負担、という3つの見落としやすい注意点があります。
① 回数を無限に増やして稼ぐことはできない
前述のとおり、夜勤専従の回数には1か月単位の変形労働時間制による実務上の上限(月8〜10回程度)があります。「夜勤を増やせば増やすほど収入が増える」という単純な図式ではなく、上限に近づくほど収入の伸びは頭打ちになります。
② 求人によって基本給の設定が異なる
夜勤専従求人の中には、通常勤務と同じ基本給に夜勤手当を上乗せするタイプと、夜勤専従者向けに基本給自体を高めに設定するタイプがあります。同じ「月収30万円」という表記でも、内訳(基本給と夜勤手当の割合)によって、賞与・退職金・将来の昇給の基礎になる金額が変わってきます。求人票の「基本給」欄と「夜勤手当」欄を分けて確認することが、長期的な待遇を見誤らないポイントです。
③ 深夜勤務中心の生活リズムへの適応
夜勤専従は、深夜勤務がある働き方の中でも特に深夜帯に集中して働く形になります。仮眠の取り方や生活リズムの整え方は、収入とは別に検討しておきたいポイントです。夜勤明けの体調管理については夜勤明けの生活リズムはどう整える?介護職が知っておきたい仮眠と睡眠の考え方で詳しく扱っているので、収入面だけでなく生活面もあわせて検討することをおすすめします。
ここで、冒頭でお伝えした注意点に戻ります。夜勤専従の額面が高く見える理由の多くは、深夜割増賃金という法律で定められた部分によるものです。この法定部分は求人によって大きく変わるものではなく、変わるのは主に「施設独自の夜勤手当の額」と「基本給の設定」の2点です。求人票を比較するときは、この2点に注目すると、額面の高さの理由が見えやすくなります。
夜勤専従と通常の夜勤ありの働き方、どちらが向いている?
「まとまった収入を短期間で得たい」「夜型の生活リズムが合っている」という方には夜勤専従、「収入と日勤の安定した生活リズムのバランスを取りたい」という方には通常の夜勤あり勤務が向いている傾向があります。
夜勤専従は、1回の勤務が長時間(16時間前後)になる分、勤務日数自体は少なくなります。まとまった休みを確保しやすい一方で、深夜帯中心の生活リズムが体質的に合うかどうかは、実際に試してみないと分からない面もあります。
通常の夜勤あり勤務(日勤と夜勤を組み合わせるシフト)は、深夜勤務が「ある」介護職全体で見ると、施設系(入所型)で64.5%、居住系で67.9%が該当します(介護労働安定センター『令和6年度 介護労働実態調査』)。日勤と夜勤を組み合わせることで、生活リズムの波を分散させながら夜勤手当も確保する、という選び方をしている方が多いことがうかがえます。
どちらが向いているかは、体力・生活環境・希望する休日の取り方によって異なります。
夜勤専従の求人はどんな施設形態に多い?
夜勤専従の求人は、特養・老健・有料老人ホームなど「入所・居住系」の施設で多く見られます。デイサービスなど通所系の施設では、そもそも夜間の営業がないため夜勤専従の求人自体が存在しません。
介護労働安定センター『令和6年度 介護労働実態調査』によると、深夜勤務が「ある」介護職の割合は、居住系(グループホーム・有料老人ホーム等)で67.9%、施設系(入所型。特養・老健等)で64.5%と、いずれも6割を超えています。一方、通所系・訪問系では深夜勤務が少ない傾向にあります。夜勤専従という働き方を検討する場合、必然的に応募先の選択肢は入所・居住系の施設が中心になります。
施設形態によって、夜勤帯の人員体制や業務内容にも違いがあります。たとえば特養では夜間の見守り・排泄介助・体位変換などの業務が中心になりやすく、有料老人ホームでは施設の規模やサービス内容によって夜間業務の負荷が変わります。収入面の試算とあわせて、施設形態ごとの働き方の違いも確認しておくと、求人選びの精度が上がります。
また、夜勤専従の求人は、通常勤務の求人と比べて母数自体が少ない傾向があります。特定の施設形態・特定のエリアに絞って夜勤専従を探すと、選べる求人の幅が狭まることも想定しておくとよいでしょう。収入面の条件だけでなく、通勤時間や施設の雰囲気なども含めて比較検討することをおすすめします。
派遣・パートで夜勤専従に入る場合の違い
正社員として夜勤専従で働く場合と、派遣・パートとして夜勤専従のシフトに単発・複数回で入る場合とでは、収入の計算方法と待遇の安定性が異なります。
正社員の夜勤専従は、月給制(基本給+各種手当)で毎月の収入が比較的安定します。一方、派遣や登録型のパートとして夜勤専従のシフトに入る場合は、時給制で1回あたりの勤務時間×時給という計算になり、月によって収入が変動しやすくなります。
派遣・パートの場合、賞与や退職金が正社員より付きにくい傾向がある一方で、時給そのものが高めに設定されている求人や、複数の施設を掛け持ちして夜勤の回数を柔軟に調整できる働き方も見られます。雇用形態ごとの給与・待遇の違いは介護職の雇用形態を比較:正社員・契約社員・パートの給与・待遇・福利厚生で詳しく整理しています。
いずれの雇用形態であっても、「夜勤専従=必ず高収入」と単純化せず、雇用形態ごとの計算方法の違いを踏まえたうえで、自分の生活スタイルに合った働き方を選ぶことが大切です。
求人票で夜勤専従の条件を確認するときのチェックポイント
夜勤専従の求人票を確認するときは、①1回あたりの夜勤手当の額、②想定される月の夜勤回数、③基本給の内訳、④深夜勤務の人員体制、の4点を必ずチェックしてください。
これまで見てきた試算の考え方を踏まえると、求人票で確認すべきポイントは次のように整理できます。
- 1回あたりの夜勤手当の額:求人票に明記されているか。「手当込み」という表記の場合、内訳が分かるか
- 想定される月の夜勤回数:「月◯回程度」という記載があるか。回数が明記されていない場合は、面接や問い合わせで確認する
- 基本給の内訳:基本給と夜勤手当が分けて記載されているか。固定残業代(みなし残業手当)が基本給に含まれていないか
- 深夜勤務の人員体制:1人体制か複数人体制か。深夜勤務時の職員数は「1人」が52.7%で最多という実態があります(介護労働安定センター『令和6年度 介護労働実態調査』)
特に、夜勤専従求人では「月収◯万円可能」という表記だけが大きく強調され、内訳(基本給・手当の割合、想定回数)が小さくしか書かれていない求人票も見られます。額面の大きさだけで判断せず、内訳を確認する習慣をつけておくと、入職後の「思っていたのと違う」を防ぎやすくなります。
この記事で持ち帰れること
ここまで読んでいただいたことで、次の3点が判断できるようになったはずです。
- 夜勤専従の月収は「深夜割増賃金(法定)」と「施設独自の夜勤手当」の2階建てで構成されており、日勤のみより額面が上振れしやすい仕組み
- 夜勤専従の回数には実務上の目安(月8〜10回程度)があり、無限に収入を積み増せるわけではないこと
- 求人票を比較するときは、月収の額面だけでなく、基本給の内訳・想定回数・人員体制まで確認する必要があること
より正確な月収の試算には、実際に検討している求人票の数字を当てはめることが一番の近道です。夜勤専従の仕事内容や1回の勤務の流れを知りたい方は夜勤専従介護職の仕事内容をご覧ください。
また、収入だけでなく手取りベースでの生活費の見通しを立てたい方は、介護職の給料の手取りはいくら?額面との差と税金・社会保険のしくみもあわせて参考にしてください。
最後にひとつ、今日からできる小さな一歩を挙げるとすれば、今気になっている夜勤専従の求人票を1枚手元に置いて、「基本給」と「夜勤手当(1回あたり)」と「想定回数」の3つの数字を書き出してみてください。それだけで、この記事で紹介した試算の考え方を、実際の求人に当てはめて確認できるはずです。
条件を絞り込んで求人を比較したい方は、介護おしごとさーちの求人検索から都道府県・施設形態・給与条件などで探すことができます。介護おしごとさーちは求人の掲載・検索の場であり、特定の方に特定の求人をおすすめ・あっせんすることはありません。夜勤専従に向いているかどうかは、この記事で紹介した試算の考え方をもとに、ご自身の条件と照らし合わせてご判断ください。
よくある疑問
夜勤専従は月にどれくらい稼げますか? 求人票によって幅がありますが、基本給に加えて深夜割増賃金(法定・25%以上)と施設独自の夜勤手当が積み上がる分、日勤のみの働き方より額面が高くなる傾向があります。ただし相場として一律の金額を示すことはできないため、求人票の基本給・夜勤手当・想定回数を確認したうえで試算することをおすすめします。
夜勤専従は月に何回まで入れますか? 法律に直接の回数制限はありませんが、1か月単位の変形労働時間制のもとで、1回16時間換算の勤務では、実務上、月8〜10回程度が目安とされています。施設独自の夜勤協定で上限が定められている場合もあります。
夜勤専従と日勤のみ、収入面ではどちらが有利ですか? 月収の額面だけを見ると夜勤専従が上振れしやすい傾向がありますが、基本給の設定によっては賞与・退職金の算定基礎が変わらないケースもあります。収入だけでなく、生活リズムへの適応や求人票の内訳まで含めて比較することをおすすめします。
