求人票に書かれている「月給25万円」という数字を見て、「じゃあ手取りはどれくらいになるんだろう」と考えたことがある方は多いと思います。額面の月給と、実際に銀行口座に振り込まれる手取り額には、社会保険料や税金の分だけ差があります。この差を知らずに転職・就職の資金計画を立てると、「思ったより自由に使えるお金が少ない」と感じてしまうことがあります。
先に、要点をまとめます。
- 介護職員(月給・常勤)の平均給与額は338,200円(令和6年9月時点、厚生労働省調査)で、そこから社会保険料と税金を差し引いた手取りは、目安としておおむね75〜80%程度になります
- 控除の内訳は大きく分けて「社会保険料(健康保険・厚生年金・雇用保険)」と「税金(所得税・住民税)」の2種類で、社会保険料のほうが金額の比重が大きいのが一般的です
- 資格の有無・施設形態・扶養家族の人数などによって手取り率は変わるため、「額面のどこを見れば自分の手取りに近づけるか」を知っておくと、求人比較の精度が上がります
ただし、この「手取り」という言葉には、一つ見落としやすい注意点があります。求人票の「月給」欄に書かれている金額と、額面から手取りを試算するときに使うべき金額が、実は違うケースがあるという点です。この記事の後半で、その違いを具体的に確認していきます。
手取りとは何?額面(月給)との違いをまず整理する
手取りとは、額面の給与から社会保険料と税金を差し引いた後、実際に振り込まれる金額のことです。
求人票に書かれている「月給」「基本給」は、多くの場合「額面」の金額を指します。額面には、基本給に加えて各種手当(処遇改善手当・夜勤手当・資格手当など)が含まれることが一般的です。一方、手取りはそこから以下の項目が控除された後の金額です。
- 健康保険料
- 厚生年金保険料
- 雇用保険料
- 介護保険料(40歳以上の場合)
- 所得税
- 住民税(前年の所得に応じて翌年から控除が始まる)
これらは給与明細の「控除」欄にまとめて記載されています。給与明細の各項目の読み方や、処遇改善加算がどこに反映されるかまで詳しく知りたい方は、介護職の給与明細で見るポイントで仕組みを解説していますので、あわせてご覧ください。この記事では、仕組みの説明よりも「実際の金額でどれくらい引かれるのか」という試算に焦点を当てて整理します。
介護職員の平均給与額はいくら?厚労省データで確認する
厚生労働省の調査によると、介護職員(月給・常勤)の平均給与額は338,200円(令和6年9月時点)です。
この数字は、厚生労働省「令和6年度介護従事者処遇状況等調査結果」に基づくもので、介護職員等処遇改善加算を取得している施設・事業所に在籍する、月給・常勤の介護職員を対象に調査されています。内訳を見ると、以下のようになっています。
| 項目 | 令和5年9月 | 令和6年9月 | 差額 |
|---|---|---|---|
| 基本給等(月給・常勤の者) | 242,680円 | 253,810円 | +11,130円 |
| 平均給与額(基本給等+一時金) | 324,240円 | 338,200円 | +13,960円 |
※「基本給等」は基本給(月額)に、通勤手当・扶養手当・超過労働給与額等を除いた毎月決まって支払われる手当を加えた金額です。「平均給与額」はそこにさらに一時金(4〜9月支給額の1/6、賞与等含む)を加えた金額です。
ここで注意したいのは、求人票の「月給」欄に書かれている金額は、この「平均給与額」ではなく「基本給等」に近い、毎月の固定支給額を指していることが多いという点です。賞与を含む年収ベースの数字と、毎月の手取り計算に使う月次の額面は、混同しやすいので分けて考える必要があります。手取りを試算するときは、求人票の「月給」欄の金額(基本給+諸手当)を額面のベースとして使うのが実務的です。
資格別に見ると、介護福祉士の月収は他の職種と比べて高い傾向があります。資格による給与差の詳細は介護福祉士の年収はいくら?月給平均約35万円の内訳と経験年数別の目安で解説していますので、資格取得を検討している方はあわせて確認してみてください。
額面から手取りはどう計算する?控除の内訳を分解する
手取りの目安は、額面(月給)のおおむね75〜80%程度です。控除の中心は社会保険料で、税金の比重はそれより小さいのが一般的です。
具体的な内訳を、社会保険料と税金に分けて見ていきます。
社会保険料(健康保険・厚生年金・雇用保険)
社会保険料は、額面から真っ先に差し引かれる項目です。料率は加入する健康保険組合や都道府県、年度によって変わりますが、目安として次のような水準になっています(2026年度時点、労働者本人負担分・全国健康保険協会の目安)。
- 健康保険料:都道府県ごとに料率が異なりますが、本人負担はおおむね額面の5%前後
- 介護保険料(40歳以上):本人負担はおおむね額面の0.8%前後が上乗せ
- 厚生年金保険料:全国一律18.3%(労使折半のため本人負担は9.15%)
- 雇用保険料:業種により異なりますが、本人負担はおおむね額面の0.55〜0.65%程度
これらを合計すると、40歳未満の方でおおむね額面の14〜15%程度、40歳以上(介護保険料が加わる場合)でおおむね15〜16%程度が社会保険料として控除される計算になります。料率は毎年見直されるため、正確な金額は給与明細の控除欄で確認するのが確実です。
社会保険料の中で特に金額が大きいのが厚生年金保険料です。全国一律18.3%という料率のうち本人負担は半分の9.15%ですが、これだけで額面の1割近くを占めます。健康保険料や介護保険料は都道府県ごとの協会けんぽの料率、または勤務先が加入する健康保険組合の料率によって差があるため、同じ額面でも勤務地によって手取りが数千円変わることがあります。転職で勤務地が変わる場合は、この地域差も念頭に置いておくと、手取りの見積もりがより正確になります。
所得税・住民税
社会保険料を差し引いた後の金額(課税対象額)に対して、所得税と住民税が計算されます。
- 所得税:課税対象額に応じた累進税率(月々の源泉徴収は「源泉徴収税額表」に基づく概算額で、年末調整で精算されます)
- 住民税:前年の所得に応じて計算され、多くの場合、就職・転職の翌年6月から控除が始まります(新卒1年目や、前年の所得が少ない場合は住民税がかからないこともあります)
所得税・住民税をあわせた負担は、扶養家族の人数や控除の状況によって個人差が大きい項目です。独身・扶養なしの一般的なケースでは、額面のおおむね5〜8%程度が目安になることが多いですが、これはあくまで概算であり、正確な金額は源泉徴収票や給与明細で確認する必要があります。
試算例:平均給与額から手取りを計算すると
先ほどの厚労省データ「基本給等253,810円」を額面のベースとして、社会保険料・税金をあわせておおむね20〜25%程度が控除されると仮定すると、手取りの目安はおおむね19万円台後半〜21万円台前半になります。これはあくまで一般的なケース(40歳未満・独身・扶養なし・標準的な地域の保険料率)を前提とした概算であり、実際の手取り額は勤務先の所在地、加入する保険組合、扶養家族の有無、前年の所得(住民税に影響)などによって変わります。自分の手取りに近い金額を知りたい場合は、給与明細の控除欄の実額を確認するか、内定先に確認するのが最も確実です。
額面の水準別に見る手取りの目安
求人票の月給はサイトによって幅があるため、代表的な水準ごとに手取りの目安を並べておきます。いずれも「40歳未満・独身・扶養なし」を前提とした概算で、控除割合はおおむね20〜23%として計算しています(実際の割合は前述のとおり個人差があります)。
| 額面(月給) | 控除の目安(社会保険料+税金) | 手取りの目安 |
|---|---|---|
| 220,000円 | 約45,000〜50,000円 | 約17万円台前半〜後半 |
| 253,810円(厚労省・基本給等の平均) | 約51,000〜58,000円 | 約19万円台後半〜20万円台前半 |
| 280,000円 | 約56,000〜64,000円 | 約21万円台後半〜22万円台前半 |
| 320,000円(介護福祉士の月収目安に近い水準) | 約64,000〜74,000円 | 約24万円台後半〜25万円台後半 |
同じ額面でも、控除割合が20%か23%かで手取りは数千円単位で変わります。この振れ幅は、主に住んでいる都道府県の健康保険料率と、扶養家族の有無による所得税・住民税の差から生まれます。求人票の月給が近い2社を比べる場合、額面だけでなく「勤務地」と「扶養控除の対象になる家族がいるか」も、手取りの精度を上げるための確認材料になります。
扶養家族の有無で手取りはどう変わる?
扶養家族(配偶者や子どもなど)がいる場合、所得税・住民税の計算で扶養控除が適用されるため、同じ額面でも扶養なしの人より手取りが多くなる傾向があります。一方で、社会保険料(健康保険・厚生年金・雇用保険)は扶養家族の有無で本人負担分の料率が変わるわけではないため、控除額の差は主に税金部分から生まれます。目安としては、扶養家族が1人増えるごとに、月々の手取りが数千円程度変わることが一般的ですが、正確な金額は年末調整や源泉徴収票で確認するのが確実です。
資格・施設形態によって手取りはどう変わる?
資格の有無や勤務先の施設形態によって額面(月給)が変わるため、手取り額もそれに応じて変わります。控除率そのものは資格・施設で大きく変わるものではありません。
前の章で見たとおり、控除される割合(社会保険料・税金の料率)は、勤務先の施設形態や保有資格によって大きく変わるものではありません。一方で、控除の「元になる額面」は、資格や施設形態によって差があります。
| 比較軸 | 額面への影響 | 参考記事 |
|---|---|---|
| 資格の有無 | 無資格より介護福祉士のほうが月収は高い傾向 | 介護福祉士の年収はいくら? |
| 施設形態 | 夜勤のある施設(特養など)は夜勤手当の分、額面が上がりやすい | 特養の給料相場と他施設との金額差 |
| 手当の種類 | 資格手当・住宅手当などが額面に上乗せされる | 介護の資格手当はいくら? |
| 処遇改善加算の配分 | 事業所の配分方法によって毎月の額面に反映される割合が変わる | 処遇改善加算が2026年6月に拡充 |
つまり、「手取りを増やしたい」と考えたときにまず見るべきは、控除率を下げる方法ではなく、額面そのものを底上げする方法です。資格を取得する、夜勤のある施設形態を選ぶ、処遇改善手当の配分が明確な求人を選ぶ、といったアプローチが現実的です。介護職で年収を上げる具体的な方法は、介護職で年収を上げる5つの方法でまとめていますので、あわせてご覧ください。
ありがちなつまずき方と、避け方
手取り額を考えるときによくあるつまずきが、「求人票の月給の額面をそのまま生活費の予算にしてしまう」ケースです。額面25万円の求人でも、手取りはそこから2〜3割ほど減るため、実際に使える金額は18万円台〜20万円程度になることが多くあります。この差を把握しないまま新生活の家賃や固定費を決めてしまうと、後で資金繰りに困ることがあります。
避け方はシンプルで、求人票の月給を見たら、まず「額面の75〜80%」を目安に手取りを概算してから、生活費の計画を立てることです。特に新卒や未経験からの転職で一人暮らしを始める場合は、この概算を先に済ませておくと安心です。もう一つのつまずきやすいポイントは、初任給が住民税の控除がまだ始まっていない状態であることに気づかず、2年目に手取りが減ったと感じてしまうケースです。住民税は前年の所得に基づいて計算されるため、就職1年目は住民税の控除がなく、2年目の6月から控除が始まるのが一般的です。この仕組みを知っておくだけでも、2年目の給与明細を見たときの戸惑いを減らせます。
もう一つ見落としやすいのが、「額面は高いのに、手取りの伸びが小さい」求人のパターンです。これは、額面のうち固定残業代(みなし残業手当)の比重が大きい求人で起きやすい傾向があります。固定残業代も社会保険料・税金の計算対象には含まれますが、実際の残業時間が少ない月でも一律で支給される分、基本給部分が低めに設定されているケースがあります。基本給は将来の退職金や賞与の算定基礎になることが多いため、額面の内訳(基本給・固定残業代・各種手当の割合)を求人票や面接で確認しておくと、目先の手取りだけでなく、長期的な待遇の見通しを立てやすくなります。求人票の給与欄に「固定残業代〇時間分を含む」といった注記がないか、あわせて確認するとよいでしょう。
この記事で持ち帰れること
ここまで読んでいただいたことで、次の3点が判断できるようになったはずです。
- 介護職員の平均給与額(338,200円、令和6年9月時点)を基準にした、手取りのおおまかな目安の計算の仕方
- 社会保険料・税金それぞれの控除項目と、目安となる負担割合
- 手取りを増やすために見るべきは控除率ではなく額面(資格・施設形態・処遇改善加算の配分)だということ
より正確な手取り額を知りたい場合は、給与明細の控除欄を実際に確認するのが一番の近道です。給与明細の各項目の読み方は、介護職の給与明細で見るポイントで詳しく解説しています。
また、額面そのものを底上げする方法として、資格取得によるキャリアアップも選択肢の一つです。実務者研修や介護福祉士の資格取得ルートについては、実務者研修は「義務化」された?介護福祉士の受験ルートとサ責の任用要件を正しく理解するでも取り上げていますので、あわせて参考にしてください。
最後にひとつ、今日からできる小さな一歩を挙げるとすれば、今気になっている求人票の月給欄の金額に0.77(77%)をかけて、おおよその手取り額を計算してみてください。それだけでも、この記事で紹介した考え方が実際にどう使えるか、感覚がつかめるはずです。
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よくある疑問
手取りは額面の何%くらいになりますか? 一般的な目安として、額面(月給)の75〜80%程度が手取りになるケースが多いです。ただし扶養家族の有無や年齢(40歳以上は介護保険料が加わる)、居住地域の保険料率によって変わるため、正確な金額は給与明細で確認することをおすすめします。
求人票の「月給」は額面と手取りのどちらを指していますか? 求人票の「月給」は、多くの場合、控除前の額面(基本給+諸手当)を指します。手取りではない点に注意が必要です。
手取りを増やすには何をすればいいですか? 控除率(社会保険料・税金の割合)を大きく変える方法は限られるため、現実的には額面そのものを底上げすることが近道です。資格取得、夜勤のある施設形態の選択、処遇改善加算の配分が明確な求人を選ぶ、といった方法があります。