実務者研修という名前を求人票や資格スクールの案内で見かけたとき、「これは受けないといけないものなのか、それとも任意なのか」がはっきりしないまま検討を先延ばしにしていないでしょうか。「義務化」という言葉だけが独り歩きしていて、何がいつから、誰に対して義務なのかが分かりにくいという声をよく聞きます。

先に、要点をまとめます。

  • 介護福祉士国家試験を「実務経験ルート」で受験する場合、実務者研修の修了は2016年度(第29回試験)から必須になっています
  • サービス提供責任者(サ責)になるための資格要件も見直され、初任者研修修了のみでは新規に任用できなくなっています
  • 「義務化」は資格取得・任用の条件の話であり、今すぐ全ての介護職員に受講が強制されるという意味ではありません

ただし、この「義務化」には見落としやすい注意点が一つあります。介護福祉士を目指すルートによって、実務者研修が必須になるかどうかが変わるという点です。この記事の後半で、ルートごとの違いを具体的に整理します。

実務者研修の「義務化」とは、何が義務なのか?

介護福祉士国家試験を実務経験ルートで受験する場合に限り、実務者研修の修了が受験資格として必須になっています。

「実務者研修が義務化された」という表現だけを聞くと、介護の仕事をしている人全員が受講しなければならない制度のように感じるかもしれませんが、正確には少し違います。義務化の対象になっているのは、あくまで「介護福祉士国家試験を、実務経験を積んで受験しようとする人」です。

この制度変更の経緯を整理すると、2007年(平成19年)の法改正で実務者研修修了の義務化そのものは決まっていましたが、実際の適用は2度延期されました。当初は2012年度からの適用予定でしたが、2011年に3年延期(2015年度から)、2015年に1年延期(2016年度から)という経緯をたどり、最終的に2016年度(第29回国家試験)から実務経験ルートでの受験に実務者研修修了が必須となりました。この延期が繰り返された背景には、介護現場の人材不足や研修体制の整備状況への配慮があったとされています。

つまり、「義務化」という言葉が指しているのは、①介護福祉士の資格を取りたい②実務経験を積んで受験するルートを選ぶ、という2つの条件がそろったときに発生する義務です。今すでに介護福祉士の資格を持っている人や、介護福祉士を目指していない人にとっては、直接の受講義務があるわけではありません。

実務者研修が必須になる受験ルートと、そうでないルートの違いは?

実務経験ルートは実務者研修が必須ですが、養成施設ルートや福祉系高校ルートでは実務者研修そのものを組み込んだカリキュラムになっているため、別途の受講義務という形にはなりません。

介護福祉士の受験資格には、大きく分けて「実務経験ルート」「養成施設ルート」「福祉系高校ルート」の3つがあります。この3ルートのうち、実務者研修の修了が受験資格の条件として明示的に求められるのは実務経験ルートだけです。

実務経験ルートで受験する場合、実務経験は「従業期間3年以上(1,095日以上)」かつ「従事日数540日以上」を満たす必要があります。この2つの条件は別々にカウントされるもので、たとえば非常勤やパート勤務で従事日数の伸びが遅い場合、在籍期間だけが3年を超えていても、従事日数が540日に届いていなければ受験資格を満たしません。実務者研修の修了時期についても、国家試験の実技試験免除の仕組みと連動しているため、受験する回の試験日までに研修を修了している必要があります。

一方、養成施設(専門学校・大学等)で2年以上学ぶ養成施設ルートの場合は、カリキュラムの中に実務者研修に相当する内容が組み込まれているため、卒業要件を満たせば実務者研修を別途受講する必要はありません。福祉系高校ルートも同様に、指定科目の履修によって実務者研修相当の学びを含んだ形になります。この違いを知らずに「介護福祉士を目指すなら誰でも実務者研修を受けないといけない」と思い込んでしまうと、養成施設や福祉系高校のルートを検討している人にとっては不要な情報になってしまうため、自分がどのルートで受験するのかを先に確認しておくことが大切です。

介護福祉士の3つの受験ルート(実務経験・養成施設・福祉系高校)のうち、実務者研修の修了が別途必須になるのは実務経験ルートのみであることを示す図

サービス提供責任者(サ責)の資格要件も変わったって本当?

2018年度の介護報酬改定にともない、初任者研修修了のみでは新規にサービス提供責任者へ任用できなくなり、現在は介護福祉士・実務者研修修了者・看護職員等が中心の要件になっています。

「実務者研修 義務化」と検索する人の中には、介護福祉士の受験資格ではなく、訪問介護の現場で置かれるサービス提供責任者(サ責)の資格要件を調べている方も少なくないはずです。こちらも実務者研修に関わる制度変更が実際にありました。

以前は「介護職員初任者研修(旧ホームヘルパー2級)修了+3年以上の実務経験」という要件でもサ責になることができましたが、2018年度の介護報酬改定でこの要件が見直され、初任者研修修了のみでは新規にサ責へ任用できなくなりました。既に初任者研修修了でサ責を務めている人については、一定期間は経過措置として認められていましたが、新規の任用については介護福祉士、実務者研修修了者、看護師・准看護師・保健師、旧制度下の介護職員基礎研修またはヘルパー1級修了者のいずれかが必要という要件に切り替わっています。

つまり、サ責を目指す・続けるという観点でも、実務者研修は「持っていれば任用要件を満たせる資格」の一つとして位置づけられています。求人票で「サ責候補」「将来的にサ責へ」という記載を見かけたときは、自分が現在どの資格要件を満たしているか、実務者研修を含めて確認しておくと、キャリアの見通しが立てやすくなります。

先ほど触れた「介護福祉士の受験ルートによる違い」と同じように、この任用要件についても「初任者研修だけでは足りない」という共通点があります。介護の仕事を続けていく中で、実務者研修は受験資格・任用要件の両方で節目になる資格だと捉えておくと、今後の資格取得計画が立てやすくなるはずです。

経過措置はいつまで続く?今サ責をしている人はどうなる?

2018年度の改定時点で、初任者研修修了+3年以上の実務経験でサ責に就いていた人については、直ちに配置転換を求められるわけではなく、経過措置として一定期間は引き続きサ責としての勤務が認められました。ただし事業所が受け取る介護報酬の「サービス提供責任者体制加算」等の算定において、要件を満たさないサ責が含まれる場合は減算の対象になるなど、事業所側の運営に影響が出る仕組みになっています。この点は求職者本人が直接影響を受けるものではありませんが、「今のサ責がどの資格要件で任用されているか」は、転職先の事業所の体制を見極める材料の一つになり得ます。面接で「サ責の方はどんな資格をお持ちですか」と尋ねてみるのも、職場の体制を知る自然な質問です。

実務者研修と初任者研修、どちらを先に取ればいい?

すでに介護の仕事に就いている、またはこれから資格を取りたいと考えている場合、多くの人は先に初任者研修を取得し、その後に実務者研修へ進むという順番を選んでいます。

初任者研修と実務者研修は、どちらも介護の基礎的なスキルを学ぶ研修ですが、実務者研修のほうが学ぶ範囲が広く、時間数も多く設定されています。無資格から実務者研修をいきなり受講することも制度上は可能ですが、初任者研修修了者は実務者研修の受講時間数が一部免除される仕組みがあるため、段階を踏んで取得するほうが結果的に負担が少なく済むケースが多いといえます。

比較する項目介護職員初任者研修実務者研修
位置づけ介護の入門資格介護福祉士の受験資格に関わる資格
受講時間の目安130時間450時間(初任者研修修了者は一部免除)
実務者研修との関係修了していると実務者研修が一部免除される修了で介護福祉士の実務経験ルートの受験資格を満たす要件の一つになる
こんな人に向いているこれから介護の仕事を始めたい人介護福祉士を目指す人、サ責を目指す人

すでに介護の現場で働いていて、これから介護福祉士を目指したいと考えている方は、実務経験の年数・日数のカウントと並行して、実務者研修の受講時期も計画に入れておくと、試験の申込時期になって「研修が間に合わない」という事態を避けやすくなります。研修のスクール選びでは、通信講座と通学講座を組み合わせたカリキュラムを提供しているところが多く、働きながらでも受講しやすい形が一般的になっています。

働きながら受講する場合、どのくらいの期間を見ておけばいい?

実務者研修は通信講座を中心に、対面でのスクーリング(実技演習)を組み合わせて進める形が一般的です。時間数の目安は初任者研修修了者で320時間程度、無資格から始める場合は450時間程度とされ、その多くは通信(自宅学習)で進められますが、医療的ケアの演習など、通学でなければ習得できない項目も含まれます。

働きながら受講する場合、勤務のシフトと通学日を調整する必要があるため、フルタイム勤務であれば半年から1年程度を見込んでおくと無理のない計画になりやすいといえます。夜勤のあるシフトで通学日の確保が難しい場合は、夜勤の頻度を一時的に減らせないか、勤務先に相談してみるのも一つの方法です。求人票を見る段階から「資格取得支援制度あり」「研修中のシフト配慮あり」といった記載のある職場を選んでおくと、受講中の負担を減らしやすくなります。

介護福祉士国家試験の受験を見据えている場合は、実務経験の従業期間(3年以上)・従事日数(540日以上)のカウントと、実務者研修の修了時期の両方が、受験する回の申込までに揃っている必要があります。実務経験の年数がまだ浅い段階から、並行して研修のスクールを探し始めておくと、直前になって慌てずに済みます。

ありがちなつまずき方と、避け方

実務者研修に関する相談でよく見かけるつまずきが、「介護福祉士の受験資格の話」と「サ責の任用要件の話」を混同してしまうケースです。前者は国家試験の受験条件、後者は訪問介護事業所での役職に就くための要件であり、根拠となる制度も別のものです。「実務者研修があれば、とりあえず何にでも対応できる」という理解だけで進めてしまうと、実際に必要なタイミング(試験の申込期限、サ責への任用時期)を見誤ることがあります。

避け方はシンプルで、自分が今どちらの目的で実務者研修を必要としているのかを先に言語化することです。介護福祉士を目指しているなら実務経験の従業期間・従事日数のカウントとあわせて確認し、サ責を目指しているなら現在の事業所の任用要件と自分の保有資格を照らし合わせる。この整理をしておくと、資格スクールに相談するときも、何を確認すればよいかが明確になります。

もう一つ、よくあるつまずき方が「従事日数」の数え方です。従業期間(在籍していた期間)が3年を超えていても、パート勤務や休職期間があると、実際に介護業務に従事した日数(540日以上)が足りていないケースがあります。たとえば週3日勤務のパートで働いていた期間が長い場合、在籍3年を超えていても従事日数はまだ540日に届いていない、ということが起こり得ます。国家試験の受験申込は例年おおむね夏頃に締め切られるため、「あと少しで540日に届く」という状態で申込時期を迎えてしまうと、その回の受験を見送らざるを得なくなります。実務経験の証明は勤務先の事業所に「実務経験証明書」を発行してもらう必要があるため、受験を考え始めた時点で、現在の従事日数がどれくらいかを一度事業所に確認しておくと、直前の見込み違いを避けやすくなります。

実務者研修と初任者研修、費用面ではどれくらい違う?

受講時間の違いは費用にも表れます。初任者研修修了者が実務者研修を受講する場合は一部科目が免除されるため、無資格から実務者研修をいきなり受講する場合と比べて、受講料・受講期間の両方を抑えられる傾向があります。スクールによって金額の幅は大きく、教育訓練給付制度や自治体の助成制度、勤務先の資格取得支援制度が使える場合は、実質的な自己負担をさらに抑えられることもあります。費用の実額やスクール選びの具体的な比較は実務者研修の費用と取得期間で解説していますので、受講を具体的に検討する段階でご確認ください。

この記事で持ち帰れること

ここまで読んでいただいたことで、次の3点が判断できるようになったはずです。

  • 実務者研修の「義務化」は、介護福祉士の実務経験ルートで受験する人に限定された制度であること
  • サービス提供責任者の任用要件も見直され、実務者研修が要件の一つに位置づけられていること
  • 自分が実務者研修を必要とする目的(受験資格か、任用要件か)を先に整理すると、計画が立てやすいこと

実務者研修そのものの費用や取得にかかる期間をより詳しく知りたい方は、実務者研修の費用と取得期間で解説しています。あわせて、これから介護福祉士の資格取得を目指す方は、第39回介護福祉士国家試験の申込方法とパート合格制度の解説で、直近の試験の申込スケジュールも確認しておくと準備が進めやすくなります。

介護の資格取得は、給料アップにも直結するテーマです。資格を切り口に年収を上げる方法は介護職で年収を上げる5つの方法で整理していますので、実務者研修の取得計画とあわせて参考にしてみてください。また、これから無資格・未経験から介護の仕事を始めようと考えている方は、未経験から介護職に転職するときの求人の見分け方で、求人票の比較の視点をまとめています。

最後に、今日ひとりでできる小さな一歩を挙げるとすれば、自分が今どの受験ルート・任用要件に当てはまるのかを、頭の中だけで考えず、紙に書き出してみてください。「実務経験は何年目か」「実務者研修は修了しているか」の2点を書き出すだけでも、次に何を確認すればよいかが見えやすくなります。

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よくある疑問

すでに介護福祉士の資格を持っていますが、実務者研修は受ける必要がありますか? 介護福祉士の資格をすでに取得している場合、実務者研修の受講義務はありません。実務者研修が必須になるのは、これから実務経験ルートで介護福祉士国家試験を受験しようとする人です。

実務者研修を修了していれば、サービス提供責任者に必ずなれますか? 資格要件は満たしますが、実際の任用は事業所の配置状況や求人の有無によります。実務者研修の修了は「任用要件を満たす条件の一つ」であり、任用そのものを保証するものではありません。

養成施設ルートで介護福祉士を目指す場合も、実務者研修は必要ですか? 養成施設(専門学校・大学等)のカリキュラムには実務者研修に相当する内容が組み込まれているため、卒業要件を満たしていれば、別途実務者研修を受講する必要はありません。