呼び方の違いは主に施設の種類(サービス類型)による慣習的な使い分けです。特別養護老人ホームなど入所施設では「施設長」、訪問介護・通所介護など居宅サービスでは「管理者」と呼ばれることが多く、いずれも運営基準上「職員・業務を一元的に管理し、必要な指揮命令を行う」立場と位置づけられています。資格要件は施設種別ごとに異なるため、求人を見る際は施設種別とセットで確認することが大切です。
介護施設の管理職の仕事内容
- 作成日
- 2026年7月7日
- 最終更新日
- 2026年7月8日
介護施設の施設長・管理者は何をする仕事か。特養と老健で異なる資格要件、配置基準、1日の業務の流れを運営基準の条文にもとづき解説し、求人を見るときに確認したいポイントまで具体的に紹介します。
1介護施設の「管理職」とは?施設長と管理者、2つの呼び方がある
介護施設の求人で「管理職」を探すと、「施設長」「管理者」という2つの呼び方に出会います。この2つは同じ意味で使われることも多いのですが、法令上はサービスの種類によって使い分けがあります。
特別養護老人ホーム(特養)などの入所施設では「施設長」という呼び方が使われます。根拠は老人福祉法にもとづく「特別養護老人ホームの設備及び運営に関する基準」(平成11年厚生省令第46号)です。同基準第23条は、施設長について「職員の管理、業務の実施状況の把握その他の管理を一元的に行わなければならない」とし、職員に対して必要な指揮命令を行う立場と定めています(出典:厚生労働省「特別養護老人ホームの設備及び運営に関する基準」/2026年7月時点)。
一方、訪問介護や通所介護(デイサービス)など居宅サービスでは「管理者」という呼び方が使われます。根拠は「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」(平成11年厚生省令第37号)です。たとえば通所介護の管理者について、同基準第99条は「当該指定通所介護事業所の従業者及び業務の管理を、一元的に行わなければならない」「従業者にこの章の規定を遵守させるため必要な指揮命令を行うものとする」と定めています(出典:同基準第93条・第99条/2026年7月時点)。
つまり呼び方は違っても、役割の核は共通しています。「事業所やフロアの職員・業務を一元的にまとめ、指揮命令を行う責任者」というのが、介護施設の管理職に共通する法令上の位置づけです。求人票で「施設長」「管理者」「ホーム長」などの表記に出会ったら、まずはこの共通の役割を思い浮かべると理解しやすくなります。この記事では、施設種別ごとの資格要件の違い・実際の業務内容・求人を見るときの確認ポイントまで順に見ていきます。
2施設長・管理者の資格要件は施設の種類でまったく違う
介護施設の管理職に「共通の国家資格」はありません。資格要件は施設の種類(サービス類型)ごとに、運営基準の省令で個別に定められています。ここが会社員の「管理職」と大きく違う点で、求人を見るときにまず押さえておきたいポイントです。
特別養護老人ホームの施設長は、「特別養護老人ホームの設備及び運営に関する基準」第5条第1項により、次の3つのいずれかを満たす必要があります(出典:同基準第5条第1項)。 (1) 社会福祉主事の要件を満たす者 (2) 社会福祉事業に2年以上従事した者 (3) 社会福祉施設長資格認定講習会(社会福祉法人全国社会福祉協議会 中央福祉学院が実施)を受講した者 介護福祉士や介護支援専門員の資格そのものは要件ではなく、社会福祉分野での実務経験や講習受講が軸になっている点が特徴です。なお同基準では、特養の「管理者」については特段の資格要件は定められていません(出典:厚生労働省の施設長資格要件に関する資料/2026年7月時点)。
介護老人保健施設(老健)の管理者は、大きく異なります。介護保険法第95条により、原則として都道府県知事の承認を受けた医師でなければならず、医師以外の者に管理させる場合も都道府県知事の承認が必要です(出典:介護保険法第95条/2026年7月時点)。老健は医療と介護の中間施設という位置づけのため、管理者要件が医療系施設に近い形になっています。
訪問介護・通所介護など居宅サービスの管理者には、特養の施設長のような資格要件は設けられていません(前掲の省令第37号)。ただし訪問看護ステーションの管理者は「保健師又は看護師」であることが要件とされるなど、サービス種類ごとに例外があります(出典:同基準第61条)。求人を見る際は「この施設種別の管理職に資格要件があるか」を、求人票の「応募資格」欄と施設種別の両方で確認することが大切です。
3管理職に共通する配置ルール:常勤専従が原則、兼務には条件がある
資格要件は施設ごとに違っても、「配置のしかた」には共通したルールがあります。運営基準の多くのサービス類型で、管理者・施設長は「専らその職務に従事する常勤の者」でなければならないと定められています(出典:「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」第93条ほか各条/2026年7月時点)。つまり原則は、他の業務と兼任しないフルタイムの専任者ということです。
ただし、まったく兼務ができないわけではありません。同基準では「管理上支障がない場合は、当該事業所の他の職務に従事し、又は他の事業所、施設等の職務に従事することができる」という例外規定が置かれています。実務上は、同一敷地内や隣接した場所にある複数の事業所(たとえば通所介護と訪問介護を併設している法人など)で、1人の管理者が兼務しているケースがあります。
特養についても、「特別養護老人ホームの設備及び運営に関する基準」第12条第4項で「施設長及び生活相談員は、常勤の者でなければならない」と定められており、常勤であることが前提です(出典:同基準第12条第4項)。
求人票で「管理者候補」「施設長候補」という表記を見かけたら、多くの場合は現職の管理者・施設長のもとで実務を学びながら、将来的に単独の常勤管理職として配置される見込みのポジションを指します。この場合、「候補期間がどのくらいか」「兼務の可能性があるか」は、選考の面談時や運営元への問い合わせで確認できる情報です。求人情報だけでは分からない配置の実態は、応募前に運営元へ直接確認することをおすすめします。
4管理職の主な仕事内容:現場マネジメントと対外対応の両輪
管理職の仕事は大きく分けて、「施設内のマネジメント」と「施設外との対応」の2つの軸で構成されます。
施設内のマネジメントの中心は、運営基準にある「職員及び業務の管理を一元的に行う」という職務です。具体的には、職員のシフト・勤怠の管理、ケアの質を保つための業務チェック、介護記録や各種書類の管理状況の確認などが含まれます。また、職員に運営基準の規定を遵守させるための「必要な指揮命令」も管理職の職務とされています(出典:「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」第99条ほか/2026年7月時点)。人材不足や離職への対応、新人の育成体制づくりといった、いわゆる労務管理・人事管理の色合いが強い業務も、この一元管理の一部として実務上求められます。
施設外との対応では、行政(自治体・都道府県)への各種届出や実地指導への対応、家族や利用者本人からの相談・苦情対応、地域の医療機関やケアマネジャーとの連携窓口としての役割があります。特養であれば、入退所の判定に関わる調整、事故発生時の行政への報告なども管理職の重要な業務です。
このほか、法人によっては採用活動への関与、研修計画の立案、収支・稼働率の管理など、経営に近い業務を任されることもあります。求人票の「業務内容」欄が「マネジメント業務全般」のように抽象的な表現にとどまっている場合は、実際にどこまでの範囲を担うのか(現場のシフト管理までか、収支管理まで及ぶか)を面談で具体的に確認すると、入職後のギャップを減らせます。
5施設長・管理者の1日の流れのイメージ
管理職の1日は、現場の介護職員と比べて「決まったスケジュール」よりも「その日ごとに変わる対応」が多いのが特徴です。あくまで一般的な業務の組み立てのイメージとして紹介します。
朝は、夜勤者からの申し送り確認、当日の職員配置の確認から始まることが多く、欠勤が出た場合はその日のうちにシフトの調整を行います。午前中には、行政への提出書類の確認、事故報告書やヒヤリハット報告の確認・対応方針の検討など、事務的な業務が集中しやすい時間帯です。
日中は、利用者家族からの相談対応、地域の医療機関・居宅介護支援事業所(ケアマネジャーの所属先)との連絡調整、職員との面談(相談対応・評価面談など)が入ります。特養など入所施設では、新規入所の判定に関わる会議への出席が発生することもあります。
夕方以降は、翌日以降の勤務調整、月次・年次の計画資料の作成、行政への報告書類の仕上げなど、まとまった事務作業に充てられることが多い時間帯です。突発的な対応(利用者の急変、職員の欠勤、家族からの緊急連絡など)が入ると、その都度スケジュールが変わる点も管理職特有の働き方といえます。
なお、事業所によっては管理職も夜勤や早番・遅番のシフトに一部入る運用をしているところもあれば、日勤のみで完結するところもあります。この違いは法令ではなく事業所ごとの運用によるため、「管理職も夜勤に入るか」は求人票や面談で個別に確認する必要がある項目です。
また、複数の事業所を兼務する管理者の場合は、1日のうちに拠点間を移動しながら業務にあたることもあります。移動の有無・頻度も、応募前に確認しておくと働き方のイメージがつかみやすくなる点です。
6管理職になるまでのキャリアの流れ
介護施設の管理職は、多くの場合いきなり就くポジションではなく、現場経験を積んだうえで任される役割です。前述のとおり特養の施設長には「社会福祉事業に2年以上従事」などの実務要件があり、老健の管理者には医師資格が必要になるため、いずれも一定のキャリアを経てから就く仕事という位置づけになります。
典型的な流れとしては、介護職員として現場経験を積む→リーダーやユニットリーダーなど小規模なチームをまとめる立場を経験する→生活相談員やサービス提供責任者、ケアマネジャーなど、利用者・家族・行政との調整業務を担う職種を経験する→施設長・管理者として事業所全体のマネジメントを担う、という段階を踏むケースが多く見られます。介護職としてのキャリアパス全体の流れは、親記事『介護職のキャリアパスと役職の上り方』でも整理していますので、あわせて参考にしてください。
管理職を目指す場合、現場での実務経験に加えて、労務管理・法令知識・行政対応など、現場の介護業務とは異なる知識が必要になります。求人票で「管理職候補」「マネジメント経験者歓迎」といった表記がある場合、法人によっては経営層向けの研修制度や、資格取得支援(社会福祉施設長資格認定講習会の受講費用補助など)を用意していることもあります。こうした支援制度の有無は、キャリアアップを考えるうえで確認しておきたいポイントの一つです。
また、法人によっては生活相談員やケアマネジャーを経ずに、リーダー・主任クラスから直接マネジメント候補として登用するルートを設けているところもあります。どちらのルートが用意されているかは法人ごとの方針次第のため、「管理職を目指せる法人か」を確認したい場合は、求人票の昇格・キャリアパスの記載や、面談での質問を通じて確かめるとよいでしょう。異業種で管理職・マネジメント経験がある人が介護業界に転職し、現場経験を積んだうえで管理職に登用されるケースも見られます。
7管理職として働くうえで直面しやすい課題
管理職は、現場の介護業務と異なる種類の負荷がかかりやすいポジションです。代表的なものとして、次のような課題が挙げられます。
人材確保・定着の難しさです。公益財団法人介護労働安定センターの調査でも、介護事業所の従業員不足感は継続的な課題として指摘されており、人材の採用・育成・定着は管理職の重要な業務の一つになっています(出典:公益財団法人介護労働安定センター「介護労働実態調査」/各年度の事業所調査)。人手不足のなかでシフトを組み、職員のモチベーションを保ちながら育成する調整力が求められます。
行政対応・法令遵守の負荷もあります。運営基準の遵守状況は実地指導の対象になり、記録の不備や人員配置基準の違反があれば指導や改善命令につながる可能性があります。管理職は現場の状況を正確に把握し、必要な体制を維持する責任を負います。
利用者・家族対応の難しさも見過ごせません。サービス内容への要望や苦情、緊急時の連絡対応など、現場の職員では判断が難しい場面で管理職が矢面に立つことがあります。
こうした課題は事業所の規模・法人の方針・人員体制によって重さが大きく異なります。求人を見る際は、「管理職の下に相談員や主任クラスが何人いるか」「行政対応や採用活動をどこまで管理職一人で担うか」など、体制面を面談で確認すると、実際の負荷感をイメージしやすくなります。給与・待遇面の一般的な考え方は、親記事『介護職の給料を職種・施設で比較一覧』や『処遇改善加算で給料はいくら増える』もあわせてご確認ください。
一方で、管理職は現場の介護業務そのものからは離れる分、身体的な負担は軽減されやすいポジションでもあります。人と組織をまとめる仕事にやりがいを感じる人にとっては、現場とは異なる形で介護の質や職場環境づくりに関われる役割ともいえます。負荷とやりがいの両面を、求人検討時の判断材料にするとよいでしょう。
8求人を見るときに確認したいポイント
介護施設の管理職の求人を検討する際は、業務内容の抽象的な記載だけで判断せず、次のような点を具体的に確認すると入職後のミスマッチを減らせます。
1つ目は、施設種別と資格要件の対応関係です。特養の施設長候補であれば社会福祉主事要件などの充足状況、老健であれば医師資格の有無など、施設種別ごとに要件が異なるため、自分がその要件を満たしているか、あるいは「候補」として要件充足前の段階での応募が可能かを確認しましょう。
2つ目は、兼務の有無と範囲です。同一法人内の複数事業所を1人で管理する体制なのか、単独事業所の専任なのかによって業務量が大きく変わります。
3つ目は、夜勤・シフト対応の有無です。管理職も現場シフトに入る運用か、日勤のみで完結するかは事業所ごとに異なります。
4つ目は、マネジメントの範囲です。現場の職員管理にとどまるのか、採用・収支・法人全体の方針決定にまで関わるのかで、求められるスキルセットが変わります。
5つ目は、サポート体制です。生活相談員・主任・事務職員など、管理職を支える人員がどの程度配置されているかによって、管理職個人にかかる負荷は変わります。
本サービスは、こうした条件をもとに求人を検索・比較できる場を提供するものです。気になる条件に一致する求人を探し、詳細は各運営元に直接問い合わせて確認する、という進め方をおすすめします。管理職としての経験がまだない場合は、まず生活相談員やサービス提供責任者などの調整業務を担う職種の求人から探し、実務経験を積む道筋を検討するのも一つの方法です。
FAQ
このガイドのよくある質問
施設種別によります。特別養護老人ホームの施設長は、社会福祉主事の要件を満たす者・社会福祉事業に2年以上従事した者・社会福祉施設長資格認定講習会の受講者のいずれかを満たす必要があり、介護福祉士資格そのものは直接の要件ではありません。一方、介護老人保健施設の管理者は原則として医師である必要があります。施設種別ごとの要件は求人票や運営基準で個別に確認してください。
法令上、管理職の夜勤対応が義務づけられているわけではありません。事業所によって、管理職が日勤のみで完結する運用のところもあれば、一部シフトに入る運用のところもあります。運営基準では管理者は「専らその職務に従事する常勤の者」が原則とされていますが、具体的な勤務形態は法人・事業所ごとの運用によるため、求人票の記載や面談で個別に確認する必要があります。
施設長・管理者に特化した公的な給与統計は現時点で確認できておらず、断定的な金額は示せません。関連する公的統計としては、厚生労働省「介護従事者処遇状況等調査」が介護職員・生活相談員・介護支援専門員などの職種別平均給与額を公表しています。管理職の待遇は法人規模や施設種別によって差が大きいため、求人票の記載内容や運営元への確認を優先することをおすすめします。
施設種別によって資格・実務要件があるため、未経験からいきなり就任するのは難しいのが一般的です。特養の施設長であれば社会福祉事業への従事経験などが要件になり、実務上も現場経験やリーダー職・相談員職などを経て管理職に進むケースが多く見られます。「管理職候補」の求人であれば、実務経験を積みながら段階的に要件を満たしていく前提のポジションであることが多く、応募時に育成体制を確認するとよいでしょう。
Sources
参照・確認する一次情報
制度や費用は変更されることがあるため、公式情報と施設の資料を確認しながら更新します。
- 厚生労働省「特別養護老人ホームの設備及び運営に関する基準」(平成11年厚生省令第46号)
第5条第1項(施設長の資格要件)、第12条第4項(施設長・生活相談員の常勤要件)、第23条(施設長の職務・一元管理)の根拠。2026年7月時点でWebFetchにより内容確認済み。
- 厚生労働省「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」(平成11年厚生省令第37号)
第93条(通所介護の管理者の配置・常勤専従・兼務の例外)、第99条(管理者の職務・一元管理・指揮命令)、第61条(訪問看護の管理者要件)の根拠。2026年7月時点でWebFetchにより内容確認済み。
- 厚生労働省「施設長の資格要件等」(社会保障審議会介護給付費分科会関連資料)
特養施設長の資格要件3類型(社会福祉主事要件・社会福祉事業2年以上従事・社会福祉施設長資格認定講習会)、特養の管理者には特段の資格要件がないこと、介護老人保健施設の管理者要件(介護保険法第95条、原則医師)の根拠。2026年7月時点でWebFetchにより内容確認済み(pdftotextでのテキスト抽出により内容確認)。
- 厚生労働省「令和6年度介護従事者処遇状況等調査結果」概要
職種別(介護職員・看護職員・生活相談員・介護支援専門員等)の平均給与額を公表。施設長・管理者という職種区分での集計は本調査に含まれないことを確認済み(2026年7月時点)。
- 公益財団法人介護労働安定センター「介護労働実態調査」
事業所の人材不足感など、管理職が直面する雇用管理課題の裏付けとして参照。具体的な数値は年度により変動するため、本文では傾向の説明にとどめ断定は避けた。
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