いいえ、賞与の支給は労働基準法などの法律で義務づけられたものではなく、各事業所が就業規則や労働契約で任意に定める制度です。そのため賞与の有無・支給回数・金額は法人ごとに異なります。求人票の「賞与」欄の記載や、面接時の確認を通じて、応募先ごとの制度を確認することが大切です。
介護職の賞与の仕組み
- 作成日
- 2026年7月7日
- 最終更新日
- 2026年7月8日
介護職の賞与(ボーナス)はなぜ支給される会社とされない会社があるのか。法律上の位置づけや処遇改善加算との関係、算定期間・支給日在籍要件の仕組みを整理し、求人票で確認すべきポイントまで具体的に解説します。
1そもそも賞与(ボーナス)は法律で決まっているものではない
介護職の求人票を見比べていると、「賞与年2回」と書かれているところもあれば、賞与欄に「なし」とだけ書かれているところもあります。まず押さえておきたいのは、賞与(ボーナス)の支給は法律上の義務ではないという点です。
賞与は労働基準法第11条が定める「賃金」(賃金、給料、手当、賞与その他名称のいかんを問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのもの)には含まれます。しかし、労働基準法そのものは「賞与を支給しなければならない」とは定めていません。賞与を支給するかどうか、年何回にするか、どういう基準で金額を決めるかは、各事業所(法人)が就業規則や労働契約で自主的に定める事項です(出典:厚生労働省 モデル就業規則「第46条 賞与」解説/2026年7月時点)。
つまり「介護職だから賞与が出る/出ない」という業界一律のルールがあるわけではなく、運営法人ごとの経営判断・給与制度の設計次第というのが実態です。同じ介護福祉士という資格・同じような仕事内容でも、法人によって賞与の有無や支給月数が大きく異なることがあるのはこのためです。
ただし、いったん就業規則や雇用契約書に「賞与を支給する」「支給対象時期・算定基準を◯◯とする」といった条件を明記すると、その事業所はその条件に沿って賞与を支払う契約上の義務を負います。つまり「制度として賞与があるかどうか」は法人の自由ですが、「制度がある以上はその条件を守る」のは会社の義務になる、という2段階の構造になっています。求人票で「賞与あり」と書かれている場合、その支給条件がどこまで明文化されているか(求人票の記載だけか、就業規則にも明記されているか)は、入職後の実態を左右する重要なポイントです。
2「賞与」と「一時金」「処遇改善手当」の違いに注意する
介護職の給与明細や求人票では、「賞与」のほかに「一時金」「処遇改善一時金」「手当」といった言葉が並ぶことがあり、混乱しやすいところです。
厚生労働省の「令和6年度介護従事者処遇状況等調査結果」では、介護職員(月給・常勤)の平均給与額を「基本給」「手当」「一時金(賞与等)」の3区分で集計しています。ここでいう「一時金(賞与等)」は、賞与その他臨時に支給される分を指し、4月から9月に支給された金額の6分の1を月額換算して算出したものです(出典:厚生労働省「令和6年度介護従事者処遇状況等調査結果」統計表第70表/2026年7月時点)。つまり公的な統計上も、「賞与」と「一時金」はほぼ同じ枠組みで扱われていると考えてよいものです。
一方で「処遇改善手当」「処遇改善一時金」という名称は、介護職員等処遇改善加算という介護報酬上の加算を財源に、毎月の手当として配るか、賞与のような一時金として配るかを法人が選んで運用しているものです。同調査では、令和6年度の賃金改善の実施方法として「賞与等(一時金を含む)の支給金額の引き上げ又は新設により対応」と回答した事業所が全体の33.1%にのぼることが分かっています(出典:同調査結果 統計表第36表/2026年7月時点)。つまり、処遇改善加算の原資を「毎月の手当」ではなく「賞与」という形で還元している法人が一定数存在するということです。
求人票を見るときは、「賞与」の欄だけでなく、「手当」や「処遇改善」の記載も含めて確認し、年間でどのタイミングにどんな名目のお金が支給されるのかを、通年で捉える視点を持つと実態をつかみやすくなります。名称が違っても実質的に賞与と同じタイミング・性質で支給されているケースもあれば、逆に「賞与」と明記されていても実際には業績連動で変動が大きいケースもあります。
3賞与の算定期間・支給日在籍要件という仕組みを知っておく
賞与には、多くの会社で共通する「算定対象期間」と「支給日在籍要件」という2つの仕組みがあります。これを知らないと、「賞与ありの求人だと思って入職したのに、初回はもらえなかった」というミスマッチが起こりがちです。
算定対象期間とは、賞与の金額を計算するために対象となる勤務期間のことです。厚生労働省のモデル就業規則では、賞与について「原則として、下記の算定対象期間に在籍した労働者に対し、会社の業績等を勘案して下記の支給日に支給する」という条文例が示されています(出典:厚生労働省 モデル就業規則 第46条/2026年7月時点)。一般的には、夏の賞与なら前年10月〜当年3月、冬の賞与なら当年4月〜9月、といった半年単位の期間が設定されることが多く、その期間の勤務実績・評価にもとづいて金額が決まる仕組みです。年度の途中で入職した場合、算定対象期間の一部しか在籍していないため、初回の賞与は満額ではなく期間按分された金額になったり、支給自体がなかったりすることがあります。
もう1つが支給日在籍要件です。同モデル就業規則の解説では「賞与の支給対象者を一定の日(賞与支給日など)に在籍した者とする規定を設けることで、期間の途中で退職等し、その日に在職しない者には支給しないこととすることも可能」とされています(出典:同モデル就業規則 第46条 解説/2026年7月時点)。つまり、算定対象期間はしっかり働いていても、賞与の支給日より前に退職してしまうと、就業規則の定め方次第では賞与が支給されないケースがあり得るということです。
これらはあくまで一般的な制度設計の例であり、実際の算定期間・在籍要件は法人ごとに異なります。転職・入職のタイミングを考えるときは、「いつからいつまでの勤務が賞与の対象になるか」「支給日に在籍している必要があるか」を、入職前に確認しておくと安心です。
4介護職員の賞与・一時金の支給状況(公的統計から見える傾向)
実際に介護職員はどのくらいの賞与・一時金を受け取っているのでしょうか。ここでは断定的な相場観ではなく、公的統計から分かる範囲の傾向を紹介します。
厚生労働省「令和6年度介護従事者処遇状況等調査結果」によると、介護職員等処遇改善加算I〜Vを取得している事業所に勤務する介護職員(月給・常勤)の平均給与額の内訳は、令和6年9月時点で基本給192,660円、手当97,980円、一時金(賞与等)47,560円となっています。前年の令和5年9月時点(一時金46,170円)と比べると、一時金は1,390円の増加でした(出典:同調査結果 統計表第70表/2026年7月時点)。
ここでいう「一時金47,560円」は月額換算の数値である点に注意が必要です。前述のとおり、これは4〜9月に支給された賞与等の合計額を6で割った金額なので、実際の年間の賞与総額をイメージする場合は、単純計算でこの12か月分(約57万円程度)に近い水準感になりますが、これはあくまで加算取得事業所・月給常勤者に限定した平均であり、すべての介護職に当てはまる金額ではありません。賞与の有無・金額は、雇用形態(正社員か非常勤か)、事業所の種類、法人の規模・経営状況によって大きく異なります。
また同調査は、介護職員等処遇改善加算を取得している事業所を対象にした調査であり、加算を取得していない事業所や、介護職員以外の職種(生活相談員・介護支援専門員など)の賞与事情を代表する数値ではない点にも留意が必要です。「介護職は賞与が○○万円が相場」といった断定はできず、あくまで一つの目安として捉えるのが適切です。実際の金額感は、求人票の記載や面接での確認を通じて、応募先ごとに確認することをおすすめします。
5賞与ありの求人でも「金額」より先に確認したいこと
求人票に「賞与あり」「賞与年2回」と書かれていると、つい支給月数や金額の目安が気になりますが、金額そのものより先に確認しておきたい項目がいくつかあります。
1つ目は、支給実績があるかどうかです。求人票の「賞与」欄は、制度として賞与規定があることを示しているだけで、実際に毎年支給されているかどうかまでは分からないことがあります。「賞与制度あり(前年度実績◯ヶ月分)」のように実績が明記されている求人であれば、より具体的なイメージを持てます。実績が書かれていない場合は、面接や条件確認の場で「直近の支給実績」を尋ねてみるとよいでしょう。
2つ目は、業績連動の有無です。厚生労働省のモデル就業規則にもあるとおり、賞与額は「会社の業績及び労働者の勤務成績などを考慮して各人ごとに決定する」という設計が一般的です。つまり、法人の経営状況によって支給額や有無そのものが変動する可能性があります。「業績連動」「業績によって変動あり」といった注記がある場合は、固定額ではなく変動する前提の待遇であることを理解しておく必要があります。
3つ目は、算定対象期間と支給日在籍要件です。前述のとおり、入職時期によっては初回の賞与が按分される、あるいは支給されないことがあります。特に転職で年度途中の入職を考えている場合は、次の賞与支給日がいつで、自分がその対象期間・在籍要件を満たすのかを確認しておくと、入職後の収入計画が立てやすくなります。
4つ目は、賞与と処遇改善加算の関係です。求人票に「処遇改善加算対応」「処遇改善一時金あり」と書かれている場合、それが毎月の手当なのか、賞与のタイミングでまとめて支給される一時金なのかで、月々の手取りと年2回の受取額のバランスが変わります。生活設計を考えるうえでは、この配分の違いも確認しておきたいところです。
6賞与なしの求人・非常勤の場合はどう考えればよいか
介護職の求人には、「賞与なし」と明記されているものや、そもそも賞与欄自体が設けられていないものも珍しくありません。特に非常勤(パート・アルバイト)の求人では、月給者向けの賞与制度が適用されないケースが一般的です。
賞与がないこと自体は、前述のとおり法律上の問題ではありません。ただし、賞与がない代わりに、月々の基本給や諸手当が相対的に高めに設定されている、あるいは時給単価が高めに設定されているケースもあります。逆に、賞与はあるものの月々の基本給は控えめに抑えられている求人もあります。年収ベースで待遇を比較する場合は、「賞与の有無」だけで判断せず、月給・手当・賞与を合計した年間の見込み収入で考えることが大切です。
また、非常勤から正社員登用の制度がある事業所では、正社員登用後に賞与の対象になるケースもあります。求人票に「正社員登用あり」と書かれている場合、登用後の待遇(賞与の有無・支給時期)まで踏み込んで確認すると、キャリアの見通しを立てやすくなります。
いずれにしても、「賞与なし」は必ずしもその法人の待遇が劣っているという意味ではなく、給与制度の設計方針の違いによるものです。求人票の賞与欄だけで良し悪しを判断せず、基本給・手当・賞与を含めた年間の総支給額のイメージを、可能な範囲で確認することをおすすめします。
さらに、法人によっては賞与の代わりに「決算賞与」「寸志」といった名称で、業績が良かった年だけ臨時的に一時金を支給する運用をしているところもあります。これらは毎年の支給が保証された制度ではなく、あくまで臨時の支給である点で、求人票に明記された「賞与」とは性質が異なります。「寸志あり」「決算賞与の実績あり」といった記載を見かけた場合は、恒常的な制度なのか、その年限りの臨時支給なのかを、面接時に確認しておくと誤解を防げます。
7求人票で賞与の記載を見るときのチェックリスト
ここまでの内容を踏まえて、求人票の「賞与」欄を見るときに確認しておきたいポイントを整理します。
1つ目は、支給回数と時期です。「年2回(6月・12月)」のように具体的に書かれているか、それとも「賞与あり」とだけの抽象的な記載かを確認します。具体的な時期が書かれていない場合は、算定対象期間や支給時期を別途確認する必要があります。
2つ目は、支給実績の記載の有無です。「前年度実績◯ヶ月分」のように過去の実績が明記されているかを確認します。実績の記載がない求人では、面接時に確認するとよい項目です。
3つ目は、業績連動・変動要素の記載です。「業績により変動あり」「一律支給」など、賞与額が固定なのか変動するのかによって、生活設計の立てやすさが変わります。
4つ目は、処遇改善加算との関係です。処遇改善加算による賃上げ分が、月々の手当として配られているのか、賞与としてまとめて配られているのかを確認すると、月収と賞与の配分イメージがつかめます。
5つ目は、雇用形態による適用の違いです。正社員のみが対象なのか、非常勤にも一時金という形で何らかの支給があるのかを確認します。
これらの項目は、求人票の限られた文字数だけではすべて読み取れないことも多いため、気になる点があれば選考の過程で遠慮なく質問することをおすすめします。賞与は入職後の年収を大きく左右する要素であるにもかかわらず、求人票の表記だけでは実態が見えにくい項目でもあります。焦って条件を決めず、複数の求人を横並びで比較しながら、自分の生活設計に合った制度かどうかを見極める材料にしてください。
本サービスは、こうした条件で求人を検索・比較できる場を提供するものであり、特定の方に特定の求人をあっせん・ご紹介するものではありません。気になる条件に一致する求人を探し、賞与の詳細な金額や支給実績については、求人票の記載を確認したうえで、応募先の運営元に直接お問い合わせいただくことをおすすめします。給料の仕組み全体については、親記事『介護職の給料の仕組みを知る』もあわせてご確認ください。
FAQ
このガイドのよくある質問
厚生労働省「令和6年度介護従事者処遇状況等調査結果」によれば、処遇改善加算を取得している事業所の介護職員(月給・常勤)の一時金(賞与等)は月額換算で47,560円(令和6年9月時点)という数値が公表されています。ただしこれは加算取得事業所・月給常勤者に限定した平均であり、すべての介護職に当てはまる相場ではありません。実際の金額は法人・雇用形態により差があるため、断定はできず目安としての参考にとどめてください。
就業規則の定め方によります。多くの事業所では賞与に「算定対象期間」と「支給日在籍要件」が設定されており、算定対象期間の一部しか在籍していない場合は按分支給になったり、支給日に在籍していない場合は支給対象外になったりすることがあります。入職時期によって初回賞与の扱いが変わるため、求人票や面接で算定期間・支給日を確認しておくと安心です。
一概にはそう言えません。賞与がない代わりに月々の基本給や手当が相対的に高めに設定されている法人もあります。賞与の有無だけで待遇の良し悪しを判断せず、基本給・手当・賞与を合計した年間の見込み収入で比較することをおすすめします。
処遇改善加算は介護報酬に含まれる加算の枠組みで、その原資をどう職員に配分するかは法人が決めます。毎月の手当として配る法人もあれば、賞与(一時金)としてまとめて配る法人もあります。厚生労働省の調査では、賃金改善を『賞与等(一時金を含む)の支給金額の引き上げ又は新設』で対応したと回答した事業所が全体の33.1%あり、加算分を賞与という形で還元する運用も一定数見られます。求人票では、処遇改善分が月給と賞与のどちらに反映されるかを確認するとよいでしょう。
Sources
参照・確認する一次情報
制度や費用は変更されることがあるため、公式情報と施設の資料を確認しながら更新します。
- 厚生労働省「令和6年度介護従事者処遇状況等調査結果」概要
介護職員(月給・常勤、処遇改善加算取得事業所)の平均給与額の内訳(基本給・手当・一時金〈賞与等〉)、令和6年9月時点で一時金47,560円(前年比+1,390円)、賃金改善の実施方法(賞与等の支給金額引き上げ又は新設で対応33.1%)を確認。統計表第70表・第36表。2026年7月時点でPDF(r06gaiyou.pdf)のテキスト抽出により内容確認済み。
- 厚生労働省 モデル就業規則(賃金に関する規定例・第46条 賞与)
賞与は労基法その他の法律によって設けることが義務づけられているものではないこと、算定対象期間・支給日・支給日在籍要件の規定例と解説を確認。2026年7月時点でPDFのテキスト抽出により内容確認済み。
- 厚生労働省「賃金の支払方法に関する法律上の定めについて」(よくある質問)
労働基準法第24条の賃金支払5原則(通貨・直接・全額・毎月1回以上・一定期日払い)の内容を確認。賞与が賃金に含まれる根拠(労基法第11条)とあわせて参照。2026年7月時点でWebFetchにより内容確認済み。
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