介護福祉士などの国家資格に基づく業務のルートでは、原則として資格に基づいて従事した期間がカウントされ、無資格や初任者研修のみの期間は算入されません。生活相談員などの相談援助業務は別ルートとして扱われます。自分の職歴のどこからどこまでが対象になるかは、受験する都道府県の実施要項の記載と、勤務先が発行する実務経験証明書で確認します。判断に迷うケースは、都道府県の試験担当窓口に直接問い合わせるのが最も確実です。
ケアマネジャーを目指す介護職の進み方|実務経験5年の設計と両立の戦略
- 作成日
- 2026年7月7日
- 最終更新日
- 2026年7月8日
介護職からケアマネジャー(介護支援専門員)を目指す道筋を設計の視点で解説。受験資格となる実務経験の考え方、介護福祉士取得後5年間の働き方の設計、試験勉強との両立、合格後の転身タイミングまでを整理します。
1結論:ケアマネへの道は「介護福祉士としての5年」をどう設計するかで決まる
ケアマネジャー(介護支援専門員)は、介護職のキャリアの中でも代表的なステップアップ先です。利用者の生活全体を見てケアプランを設計する仕事は、現場で培った観察力と関係づくりの力が直接活きる、介護職の経験の延長線上にある専門職と言えます。
ただし、ケアマネへの道は「思い立ってすぐ受験」できるものではありません。受験には、介護福祉士などの対象国家資格等に基づく業務、または相談援助業務に、通算5年以上かつ900日以上従事した経験が必要とされています(2026年7月時点。後述のとおり要件の見直しが進行中のため、最新は必ず公式情報で確認してください)。つまり、介護職にとってケアマネへの道は、介護福祉士を取得した後の約5年間をどう働くかという、数年がかりのキャリア設計の問題なのです。
この「時間がかかる」という事実は、悪い知らせではありません。5年の間に、現場での経験を意図的に積み、試験勉強の習慣を作り、ケアマネとして働く自分の姿を具体化していけるからです。逆に、設計なしに過ごすと「気づけば要件を満たしていたが、準備はゼロ」ということにもなります。
この記事では、試験制度の詳細(試験科目や合格基準など)ではなく、介護職からケアマネを目指す道筋の設計に焦点を当てます。受験資格の考え方、5年間の働き方の設計、シフト勤務と勉強の両立、合格後の転身タイミング、そして進行中の制度見直しの動向まで、順に整理します。資格取得の手続き面の詳細は、関連ガイドの取得方法の記事とあわせてお読みください。
2ケアマネの仕事と、介護職の経験が活きる場面
設計の話に入る前に、目的地であるケアマネの仕事を確認しておきます。ケアマネジャーは、要介護者や家族の相談に応じ、心身の状態に合ったケアプラン(介護サービス計画)を作成し、サービス事業者や市区町村との連絡調整を行う専門職です。働く場は大きく、在宅の利用者を支える居宅介護支援事業所と、施設入所者のプランを担う施設(施設ケアマネ)に分かれます。
介護職からケアマネになった人が「現場経験が活きた」と語る場面は明確です。第一に、アセスメントの解像度。食事・移動・排泄の介助を自分の手でしてきた人は、書類の情報から利用者の生活の実像を立体的に想像できます。「要介護3」という数字の向こうにある暮らしの手触りを知っていることは、机上では得られない強みです。第二に、サービス事業者との対話力。訪問介護やデイサービスの現場が何に困り、どんな情報を必要とするかを知っているため、絵に描いた餅ではないプランを作れます。第三に、家族への説明力。介護の大変さを現場で見てきた言葉には、家族の心に届く重みがあります。
一方で、仕事の質は大きく変わります。身体介助はなくなり、面談・書類作成・関係機関との調整・給付管理といったデスクワークと対人調整が中心になります。「現場を離れる寂しさ」を感じる人も少なくありません。ケアマネを目指す動機が「現場がつらいから」だけだと、転身後にギャップに悩むことがあります。利用者の生活を設計する仕事がしたいのかを、5年の設計を始める前に自分に問うておくことをおすすめします。
なお、居宅と施設のどちらのケアマネにも共通して、担当する利用者の人数には制度上・運用上の目安があり、働き方は事業所の受け持ち件数の設計に影響を受けます。転身先を選ぶ際の確認事項として頭に置いておきましょう。
3受験資格の基本:どの経験が「実務経験」にカウントされるか
受験資格の考え方は、キャリア設計の土台なので正確に押さえましょう。
ケアマネ試験(介護支援専門員実務研修受講試験)の受験資格は、①対象の国家資格等(介護福祉士・看護師・社会福祉士・理学療法士など)に基づく業務、または②生活相談員・支援相談員などの相談援助業務に、通算5年以上かつ900日以上従事していることです。
介護職にとって重要な注意点があります。①のルートでカウントされるのは、資格に基づく業務に従事した期間です。つまり、無資格や初任者研修のみで働いていた期間は、原則としてこのルートの実務経験には算入されません。「介護の仕事を通算10年やってきたが、介護福祉士を取ったのは2年前」という人は、カウントの起点がどこになるかを必ず確認する必要があります。この確認は、受験する都道府県の試験実施団体が公表する実施要項と、勤務先が発行する実務経験証明書によって行われます。
キャリア設計上のポイントは3つです。第一に、介護福祉士の取得を早めること。取得が1年遅れれば、ケアマネへの到達も1年遅れる構造です。第二に、従事日数を意識すること。900日以上という日数要件があるため、勤務日数の少ない働き方の期間は通算に時間がかかります。第三に、職歴の記録を残すこと。転職を挟む場合、過去の勤務先にも実務経験証明書を発行してもらう必要があるため、円満な退職と連絡先の保持が数年後に効いてきます。
なお、受験資格の詳細な取り扱い(対象資格の範囲、業務内容の解釈など)は都道府県ごとの実施要項で必ず確認してください。自分のケースが対象になるか迷う場合は、都道府県の試験担当窓口に直接問い合わせるのが最も確実です。
45年間の設計:ケアマネにつながる働き方を意図的に選ぶ
受験資格を満たすまでの約5年は、単なる「待ち時間」ではなく、ケアマネとしての力を仕込む期間です。意図的に設計しましょう。
経験の幅を作る。ケアプランは、施設・在宅・多様なサービスへの理解の上に成り立ちます。可能な範囲で、担当フロアの異動や委員会活動、他職種(看護師・相談員・リハビリ職)との連携場面に積極的に関わり、自分の職場以外のサービスがどう動くかへの関心を持ち続けることが、後々の財産になります。
「記録と説明」の力を鍛える。ケアマネの仕事の核は、状況を正確に記録し、専門職と家族の双方に分かる言葉で説明することです。日々の介護記録を「読んだ人が状況を再現できる文章」で書く訓練、申し送りで要点から話す訓練は、現場でできる最高のケアマネ準備です。
サービス担当者会議を観察する。勤務先でケアマネが関わる場面(担当者会議、モニタリング訪問など)があれば、ケアマネが何を聞き、何を調整しているかを観察してください。将来の自分の仕事のリアルな予習になります。
職場に意思を伝える。「将来はケアマネを目指したい」と面談で伝えておくと、実務経験証明書の準備が円滑になるだけでなく、相談員業務の補助や会議への同席など、関連する経験を振ってもらえる可能性が生まれます。資格取得支援(受験対策講座の補助など)を持つ事業者もあります。
この5年の過ごし方の差は、試験勉強の理解度にも、合格後のケアマネとしての立ち上がりにも、はっきり表れます。
5試験勉強とシフト勤務の両立:現実的な戦略
ケアマネ試験は例年、各都道府県で年1回実施されます。年1回という頻度は、「今年だめなら来年」のサイクルが長いことを意味し、シフト勤務・夜勤と両立しながらの受験には現実的な戦略が要ります。
開始時期と計画。働きながらの受験者は、試験の半年〜1年前から準備を始める人が多いようです。大切なのは総勉強時間よりも、シフトに合わせた継続の仕組みです。夜勤明けの日は休息を優先し、日勤の日の出勤前30分を固定の勉強時間にする、休日のどちらか半日を確保する——自分のシフトパターンに合わせて「できる日・できない日」を最初から設計に織り込むと、計画倒れを防げます。
現場経験を武器にする。介護保険制度やサービスの種類など、試験範囲の多くは介護職の日常業務と地続きです。「暗記」ではなく「自分の職場ではこうだった」と経験に紐づけて学ぶと、定着が段違いに良くなります。日々の業務で出会う制度用語(区分変更、担当者会議、加算など)を、その都度調べる習慣も勉強の一部になります。
職場の先輩合格者に聞く。同じ職場や法人にケアマネ試験の合格者がいれば、シフトとの両立方法・使った教材・モチベーション維持のコツを聞いてみてください。同じ環境で合格した人の方法論は、一般論より役立ちます。
家族・職場との調整。試験直前期は、希望休を試験日に合わせて早めに確保することを忘れずに。年1回の試験日に夜勤明けをぶつけないことは、1年分の努力を守る大切なシフト戦略です。
不合格でも経験値はゼロになりません。翌年に向けて弱点が明確になったと捉え、長期戦の設計で臨みましょう。
学習の手段は、市販テキストでの独学、通信講座、職能団体や自治体関連の受験対策講座などがあります。どれが合うかは学習スタイル次第ですが、シフト勤務者には、隙間時間に進められる形式(一問一答形式やスマートフォンで使える教材)を軸に、休日にまとまった演習を組み合わせる型が続けやすいと言われます。費用面では、勤務先の資格取得支援制度の対象になるか確認する価値があります。
6合格後の流れと転身のタイミング:いつ、どこでケアマネになるか
試験合格はゴールではなく、ケアマネへの入口です。合格後は介護支援専門員実務研修を修了し、都道府県に登録して介護支援専門員証の交付を受けることで、ケアマネとして働けるようになります(資格には更新の仕組みがあります。更新制については見直しの議論もあるため、最新の取り扱いは公式情報で確認してください)。
ここで多くの人が悩むのが、転身のタイミングと場所です。主な選択肢を整理します。
①同じ法人内でケアマネに異動する。施設ケアマネのポジションや併設の居宅介護支援事業所がある法人なら、環境を知ったままケアマネデビューできる、最も滑らかな道です。異動の希望は早めに伝えておきましょう。
②転職してケアマネになる。法人内にポジションがない場合の道です。未経験ケアマネの受け入れ体制(先輩ケアマネの指導、担当件数を抑えたスタート)がある事業所を選ぶことが、立ち上がりを左右します。面接では「未経験からの育成の流れ」「主任ケアマネの在籍」を確認してください。
③しばらく介護職を続け、二枚看板で働く。資格を持ちながら現場を続け、タイミングを見て転身する人もいます。資格の維持要件(更新研修など)だけは把握しておきましょう。
施設ケアマネと居宅ケアマネでは仕事の性質も異なります。施設は入所者の生活全体を施設内の多職種と支える形、居宅は在宅の利用者ごとに地域のサービスを組み合わせる形で、訪問や外部調整の量が変わります。自分の経験(施設系か訪問系か)と地続きの側から入るのが、一般に立ち上がりやすい選択です。
どの道でも、現場の介護職経験はケアマネとしての土台になります。「現場が分かるケアマネ」は、利用者にも事業者にも歓迎される存在です。
7制度見直しの動向と、いま始める人へのまとめ
最後に、ケアマネを目指す人が知っておくべき制度の動向です。
ケアマネジャーの人材確保の観点から、受験に必要な実務経験を現行の5年から短縮する方向の見直しや、対象資格の拡大、更新制のあり方の議論が進められています。報道等では実務経験の短縮(5年から3年へ)や2026〜2027年度を目処とした制度改正の可能性が伝えられていますが、2026年7月時点で確定した内容として受験計画を立てるのは早計です。受験を考える人は、受験予定の都道府県の実施要項と厚生労働省の公式発表を必ず確認し、最新の要件で自分のスケジュールを組んでください。
もっとも、この見直しの動きが介護職に伝えるメッセージは明確です。ケアマネという専門職への道は、より開かれる方向に動いており、現場経験のある人材が求められているということです。要件が緩和されれば、あなたの到達時期は早まりこそすれ、遅くなることはありません。
まとめます。①ケアマネへの道は介護福祉士取得後の約5年の設計問題。取得を早め、従事日数と職歴の記録を意識する。②5年間は待ち時間ではなく、記録・説明・多職種連携の力を仕込む期間。③試験勉強はシフトに合わせた継続の仕組みで。④合格後の転身は、法人内異動・転職・二枚看板の3択を自分の状況で選ぶ。⑤制度は見直しが進行中。最新情報の確認を習慣に。
数年がかりの道のりですが、その一歩一歩は現在の介護の仕事の質も高めてくれます。介護おしごとさーちでは、資格取得支援のある職場やケアマネ求人も条件で探せます。5年後の自分から逆算した職場選びに、ぜひ活用してください。
FAQ
このガイドのよくある質問
実務経験の短縮(5年から3年へ)や対象資格の拡大といった見直しの方針が報じられており、制度改正の議論が進んでいるのは事実です。ただし2026年7月時点で、施行時期や詳細を確定情報として受験計画に組み込める段階ではありません。受験を考えている人は、厚生労働省の公式発表と受験予定の都道府県の実施要項を必ず確認し、最新の要件でスケジュールを立ててください。緩和が実現すれば到達時期は早まる方向なので、準備を先に進めておいて損はありません。
給与水準は地域・事業所・経験によって幅があり、一概に「上がる」とは断定できません。介護職で夜勤手当を多く得ている人の場合、夜勤のないケアマネへの転身で月収が変わらない、あるいは一時的に下がるケースもあります。一方、日勤中心で生活リズムが安定する、長期的なキャリアの選択肢が広がるといった金額以外の価値も大きい転身です。求人票で給与を比較し、面接で昇給や主任ケアマネへのステップも含めて確認したうえで判断してください。
自然な迷いです。ケアマネは身体介助のない、面談・書類・調整が中心の仕事なので、現場の手応えを大切にする人ほどギャップを感じることがあります。判断の軸は「利用者の生活を設計する仕事がしたいか」です。迷う場合は、職場のケアマネの仕事ぶり(担当者会議やモニタリング)を観察したり話を聞いたりして、仕事の実像を確かめてから決めても遅くありません。資格を取得してから現場を続け、タイミングを見て転身する道もあります。
Sources
参照・確認する一次情報
制度や費用は変更されることがあるため、公式情報と施設の資料を確認しながら更新します。
- 厚生労働省『介護・高齢者福祉』
介護支援専門員制度・人材施策の一次情報の入口。受験資格の見直しなど制度改正の公式発表の確認先。
- 公益財団法人 社会福祉振興・試験センター
受験資格の前提となる介護福祉士国家資格の試験・登録の一次情報。
都道府県の介護支援専門員実務研修受講試験 実施要項(各都道府県・指定試験実施機関)
受験資格の詳細(対象資格・実務経験の範囲・証明書類)は受験する都道府県の実施要項が正式な確認先。例年、試験実施年の春〜夏に公表される。
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