夜勤をこなせなくなったわけではないのに、「このペースをあと何年続けられるだろう」とふと考えることはないでしょうか。体力の衰えというよりも、明け番の翌日にまとまった疲れが残るようになった、家族の予定と夜勤明けの休みが噛み合わなくなってきた——そんな小さな違和感の積み重ねが、「日勤に切り替えるべきか」という迷いにつながっていきます。

先に、要点をまとめます。

  • 労働基準法には「何歳まで夜勤ができるか」という年齢の上限規定はありません。夜勤を続けるかどうかは、年齢そのものより体力・生活・家庭の状況で判断することになります
  • 一方で、子の養育や家族の介護を理由に深夜業(22時〜5時)の免除を事業主に請求できる制度が育児・介護休業法にあります。家庭の事情がある場合は、これが日勤への切り替えを相談する際の具体的な足がかりになります
  • 日勤への切り替えは「今の職場で相談する」「夜勤なしの求人へ転職する」の2つの道があり、それぞれ収入・人間関係・手続きの負担が異なります
  • 切り替えを先延ばしにしやすいのは「まだ大丈夫」と思えるうちですが、判断材料は体力の限界を感じてからではなく、余裕があるうちに集めておいたほうが選択肢が広がります

この記事では、夜勤を続けている介護職の方に向けて、「いつまで続けるか」を考えるときに使える判断材料を整理します。年齢による一律の答えを示すものではなく、あくまで自分の状況に照らして考えるための材料の提供にとどめます。

夜勤には「何歳まで」という法律上の上限があるの?

労働基準法に、一般の労働者が夜勤(深夜業)をしてよい年齢の上限を定めた規定はありません。

介護職に限らず、日本の労働基準法には「何歳になったら深夜業をしてはいけない」という年齢上限の規定は存在しません。深夜業に関する法律上の制限は、年齢ではなく別の条件に基づいています。具体的には、18歳未満の年少者には深夜業をさせてはならないという年少者保護の規定(労働基準法61条)があり、また妊娠中・産後1年以内の女性(妊産婦)が請求した場合には深夜業をさせてはならないという規定(労働基準法66条3項)があります。どちらも「上限年齢」ではなく、特定の状態にある人を保護するための規定です。

つまり、50代・60代であることを理由に、法律上「夜勤をしてはいけない」あるいは「事業主が夜勤をさせてはいけない」ということにはなりません。逆に言えば、夜勤を続けるかどうかは、年齢を基準にした法律上の線引きではなく、自分自身の体力・健康状態・生活の状況に照らして判断することになる、ということです。この記事で「何歳が目安」という断定をしないのは、こうした法律上の前提があるためです。

体力面で「そろそろ」と感じるサインには何がある?

夜勤明けの回復にかかる時間が以前より延びている、持病の管理が不規則な生活リズムで崩れやすくなっている、といった変化は、切り替えを検討する目安になります。

介護職員間で語られる体力面の変化には、いくつか共通したパターンがあります。1つ目は、夜勤明けの疲労回復にかかる時間の変化です。若い頃は明け番の翌日に用事を済ませられたのが、今は丸1日休んでもだるさが残る、というような変化は、体力の使い方が以前と変わってきているサインといえます。2つ目は、健康診断で血圧や血糖値などの数値に変化が出てきた場合です。不規則な生活リズムが続く夜勤は、生活習慣病のリスクに影響しうることが指摘されており、持病がある場合や健診の数値が気になり始めた場合は、医師に夜勤の継続について相談してみる価値があります。3つ目は、立ち仕事や移乗介助(利用者をベッドから車椅子へ移すなどの動作)の際に、以前より疲労や負担を感じやすくなっているかどうかです。

ここで大切なのは、これらのサインが1つあったからといって、即座に夜勤を辞める必要はないという点です。夜勤の負担は、施設の人員体制や夜勤の回数によっても大きく変わります。「疲れやすくなった」と感じたときにまず見直せるのは、夜勤の回数を減らせないか、連続勤務を避けられないかといった働き方の調整です。体力面のサインは「今すぐ日勤へ」ではなく、「一度、働き方を見直すタイミングが来ている」という合図として捉えるのが現実的です。

体力面のサインを自分だけで判断しにくい場合は、次の3つの質問を自分に投げかけてみると整理しやすくなります。「夜勤明けの休みを、以前と同じように家事や用事に使えているか」「夜勤中、以前より仮眠を取らないと最後まで動けないと感じるか」「移乗介助や体位変換のあと、翌日まで筋肉痛や違和感が残ることが増えたか」。この3つのうち複数に「はい」と答える状態が数か月続いているようであれば、働き方を見直す時期が近づいているサインと捉えてよいでしょう。1回や2回の「きつかった」という感覚だけで判断せず、一定期間の傾向として見ることが大切です。

夜勤の回数を「減らす」という中間の選択肢もある

日勤のみへ完全に切り替える前に、夜勤の回数自体を減らす、または夜勤専従から通常勤務(夜勤あり)へ移るという段階的な調整も選択肢になります。

「日勤に切り替えるか、今のまま続けるか」の二択で考えると、判断のハードルが上がりがちです。実際には、多くの施設で夜勤の回数を調整する余地があります。たとえば月8回の夜勤を月4〜5回に減らす、連続夜勤を避けたシフトに組み替えてもらう、あるいは夜勤専従の働き方から日勤と夜勤を組み合わせる通常のシフトに戻す、といった中間的な調整です。収入への影響を抑えながら負担を軽くできるため、「まだ完全に日勤へ切り替えるほどではないが、今のペースはきつい」と感じている段階では、まずこの中間の調整を相談してみる価値があります。

段階的な調整を経て、それでも負担が大きいと感じる場合に、日勤のみへの切り替えを検討する、という順序で考えると、収入の変化も急激にならず、職場側にとっても対応しやすい相談になりやすいでしょう。

家庭の事情で夜勤が難しくなったときに使える制度はある?

子の養育や家族の介護を理由に、深夜業(22時〜5時)をさせないよう事業主に請求できる制度が、育児・介護休業法にあります。

体力面の変化とは別に、家庭の事情で夜勤の継続が難しくなるケースもあります。親の介護が必要になった、孫を預かることになった、配偶者の体調が優れないなど、状況はさまざまです。こうした場合に知っておきたいのが、育児・介護休業法に定められた深夜業の制限制度です。

この制度は2つの場面で使えます。1つは小学校就学前の子を養育している場合(同法19条)、もう1つは要介護状態にある家族を介護している場合(同法20条、19条を準用)です。労働者が事業主に請求すれば、原則として深夜(午後10時から午前5時まで)に働かせることができなくなります。ただし、雇用期間が1年未満の場合や、深夜にその子・家族を世話できる同居の家族などがいる場合は対象外となるほか、事業の正常な運営を妨げる場合は事業主が請求を拒めるとされています。請求できる期間は1回につき1か月以上6か月以内で、必要な間は繰り返し請求できます。

この制度は「介護職員だから使える」特別な制度ではなく、業種を問わず働くすべての労働者が対象です。家族の介護・育児を理由に夜勤を続けるのが難しくなった場合は、この制度の存在を職場に伝えたうえで、日勤への異動やシフトの調整を相談してみることができます。制度の詳細な要件は厚生労働省・都道府県労働局の情報で確認できるほか、勤務先の就業規則にも定めがあるはずなので、まずは人事担当者や上司に相談してみるとよいでしょう。

今の職場で相談する場合、どう切り出せばいい?

「体力面」または「家庭の事情」のどちらが理由かを整理したうえで、日勤のみのシフトへの変更が可能か、人事や施設長に早めに相談するのが基本です。

夜勤から日勤への切り替えを職場に相談する際は、感覚的な「疲れた」という訴えだけでなく、できるだけ具体的な状況を添えて伝えると、施設側も対応を検討しやすくなります。たとえば「持病の関係で、深夜の不規則な勤務を医師から控えるよう勧められている」「親の介護が始まり、夜間に家を空けられない事情ができた」のように、理由を明確にして伝えると、単なる希望ではなく必要な配慮として受け止めてもらいやすくなります。

相談のタイミングも重要です。夜勤表・シフト表は1〜2か月先まで組まれていることが多いため、直前に申し出ると調整が難しくなります。可能であれば、次のシフト作成のタイミングより前、余裕を持って相談するのが望ましいでしょう。

施設によっては、夜勤専従・夜勤ありの正社員から、日勤のみのパート・時短勤務へ雇用形態ごと切り替える選択肢が用意されている場合もあります。雇用形態が変わると給与体系や賞与の扱いが変わることが多いため、切り替え前に「基本給がどう変わるか」「賞与・退職金の算定にどう影響するか」を確認しておくと、切り替え後に「思っていたより収入が下がった」というギャップを避けやすくなります。

今の職場で日勤に切り替えられない場合、転職も選択肢になる?

今の職場に日勤のみの枠がない場合は、夜勤なし・日勤のみの求人を探して転職することも、現実的な選択肢の一つです。

すべての事業所が、夜勤ありの職員を日勤のみへ柔軟に切り替えられる体制を持っているわけではありません。小規模な事業所では、日勤のみのポジション自体が少ないこともあります。今の職場で希望が通らない場合は、はじめから夜勤なしの条件で求人を探すことも選択肢になります。

日勤のみの働き方には、デイサービスのように施設の営業時間自体が日中に限られる職場や、訪問介護のように日中の時間帯だけシフトを組みやすい職場などがあります。夜勤なしの求人の探し方や、施設形態ごとの違いは介護施設の種類と働き方の違い一覧でも整理しているので、施設形態から検討したい場合はあわせて参考にしてください。

転職を検討する場合、気をつけたいのは「夜勤なし」の表記だけで求人票を判断しないことです。「日勤のみ」と書かれていても、早番・遅番のシフトが組まれていて、実際の勤務時間帯には幅があることも少なくありません。求人票を比較するときの視点は介護求人の比較で失敗しない方法。求人票を見比べる5つの項目で詳しく解説していますので、勤務時間帯の書き方まで含めて比較する際の参考にしてください。

夜勤を続けるかどうかを考えるときの2つの入口(体力面のサイン/家庭の事情)と、それぞれに対応する相談先・使える制度・次の一歩を整理したフロー図

「まだ大丈夫」なうちに、何を準備しておくとよい?

体力の限界を感じてから動き出すのではなく、余裕があるうちに「自分の判断基準」と「使える制度・選択肢」を把握しておくと、いざというときに落ち着いて動けます。

夜勤から日勤への切り替えは、多くの場合「限界を感じてから」検討が始まります。ですが、疲労が蓄積した状態で急いで判断すると、収入面や職場との関係性を十分に検討しないまま結論を出してしまうこともあります。

余裕があるうちにできる準備は、大きく3つあります。1つ目は、健康診断の結果を毎年きちんと確認し、数値の変化を記録しておくことです。体力面の変化を「なんとなく」ではなく客観的な材料として持っておくと、職場への相談や医師への相談がしやすくなります。2つ目は、今の職場に日勤のみへの切り替え制度や前例があるかどうかを、早い段階で人事や先輩職員にさりげなく確認しておくことです。3つ目は、日勤のみに切り替えた場合の収入の目安を把握しておくことです。夜勤手当がなくなることでどの程度収入が変わるかは、介護の夜勤専従は月収いくら稼げる?日勤・通常の夜勤ありとの差を試算で比較で試算の考え方を扱っているので、日勤との収入差をあらかじめイメージしておくと、切り替え後の生活設計を立てやすくなります。

この記事で持ち帰れること

ここまで読んでいただいたことで、次の3点が判断できるようになったはずです。

  • 夜勤に法律上の年齢上限はなく、続けるかどうかは体力・生活・家庭の状況で判断すること
  • 家庭の事情がある場合は、育児・介護休業法の深夜業免除制度が相談の足がかりになること
  • 体力の限界を感じてからではなく、余裕があるうちに判断材料と選択肢を把握しておくと、いざというときに落ち着いて動けること

介護おしごとさーちでは、夜勤の有無や勤務形態などの条件で求人を検索し、条件に合う求人票をご自身の目で比較していただけます。特定の求人を「あなたに一番合っています」とおすすめしてお繋ぎすることはしておらず、条件に一致する求人の一覧を提示する検索サービスとして、比較・検討の材料を提供することを大切にしています。

今日ひとりでできる小さな一歩としては、直近の健康診断の結果をもう一度見返し、数値に変化がないかを確認してみることです。それだけでも、次に職場や医師に相談するときの材料が一つ増えます。

夜勤明けの体調管理や生活リズムの整え方については夜勤明けの生活リズムはどう整える?介護職が知っておきたい仮眠と睡眠の考え方、はじめて夜勤に入る前の確認ポイントは介護職ではじめて夜勤に入る前の確認ポイントでも扱っています。日勤のみの求人を条件から探したい方は、求人検索から絞り込んでみてください。

よくある疑問

50代・60代でも夜勤を続けている介護職員は多いのですか? 介護の現場は幅広い年齢層の職員で構成されており、50代以降も夜勤を続けている方は珍しくありません。ただし、年齢を重ねるにつれて夜勤の回数を減らす、日勤中心に切り替えるといった働き方の調整をしている方も多くいます。

日勤のみに切り替えると、給料はどのくらい下がりますか? 夜勤手当や深夜割増賃金がなくなる分、収入は下がる傾向にあります。下がり幅は夜勤の回数や施設の手当の水準によって異なるため、切り替え前に今の給与の内訳(基本給と夜勤手当の割合)を確認しておくことをおすすめします。

深夜業免除の制度を使うと、正社員の身分に影響しますか? 育児・介護休業法の深夜業免除は、雇用形態や正社員の身分そのものを変更する制度ではありません。あくまで深夜(22時〜5時)に働かせてはならないという勤務時間の制限であり、請求したことを理由に不利益な取り扱いをすることは法律上禁止されています。

体力に不安があるとき、まず誰に相談すればよいですか? 体調面であればまずかかりつけ医、職場での働き方の調整であれば直属の上司や人事担当者に相談するのが基本です。持病がある場合は、医師の意見書やアドバイスを踏まえて職場に相談すると、具体的な配慮を検討してもらいやすくなります。